タレント、歌手、俳優、そしてアーティスト。多彩な才能をみせる木梨憲武さん(62)のアートを体験型で楽しめる「木梨アート大サーカス展」が横浜市西区のYOKOHAMA COASTで2025年1月13日まで開催中だ。来年は「木梨憲武展」の全国巡回も控え、還暦を超えてなお羽ばたき続ける木梨さんの〝自由〟とは。
アートを「動かす」2年越しの企画
大きな目を輝かせ、前のめりで熱っぽく語る。そのエネルギッシュさが多くの人をひきつけてやまない。「おじさんはもう体力勝負。寝てる時以外はずっと動いてるから」。特に今年は例年に輪をかけて忙しい年だった。主演ドラマ「春になったら」の放送からスタートし、10月には新アルバム「木梨ソウル」をリリース、さらに11月には「とんねるず」として29年ぶりとなる日本武道館でのライブでファンを熱狂させた。
今回の展覧会は2年越しの企画。「カンバスに絵を描くという平面から始まった僕のアートを動かしたいというお話をいただいて。どうしたらたくさんの人たちに喜んでもらえるかを探りながら、日本のトップレベルの技術者、クリエーターと一緒に楽しく創らせていただいた」
巨大オブジェに最先端技術を投入
デジタル画面に表示された作品に合わせて瞬時に香りを作り出したり、その場で撮影した来場者の写真を人工知能(AI)で木梨さん風のさまざまな顔に変換し映像に組み込んだり。たたくとしゃべったり、くしゃみをしたりビビッドなリアクションをみせる顔をかたどった巨大オブジェなど、最先端技術が惜しみなく投入されている。
「こんな大きいもの、一人じゃ作れない。こうした出会いによって、どんどん自分のアートが大きくなっていっているという感覚」とオブジェを見上げる。
枠にとどまらない生き方
その原点となるのが、今回の会場にも再現されたアトリエ。「アトリエにあるものを半分くらいトラックに積んできた。横浜にもアトリエができた感じ」と目を細める。好きなものに囲まれて、絵を描き、音楽を作る。その時々に応じて自身のあり方を行き来している。「サーカスみたいにいろんな競技をやらせてもらってきた」との言葉通り、枠にとどまらない生き方を楽しんでいるという印象だ。
だが、「自由にやっているように見えて、規則正しくやってきた。ルールの中で、最初からあきらめるのではなく、自由の範囲をどこまでも広げてきたつもり。自分で枠を作ってしまったらもったいないよね。やってみたら意外といいじゃん!ってことがあるから」。今回のAI技術に刺激され映画製作への興味が高まったといい、すでに構想も頭の中にあるという。「イメージは言い続ければ必ず実現する」
来年には3度目の全国巡回展
来年7月からは、大阪を皮切りに3度目となる全国巡回展「『木梨憲武展―TOUCH』SERENDIPITY―意味ある偶然」がスタートする。「今回の展覧会でたくさんヒントをもらった。新作を4部屋分くらい作りたい。できる限り多くの町を回り、行ったことのない場所に行ってみたい」。羽ばたきは止まらない。(塩塚夢)