Webアナリストの小川卓さんが、GA4でランディングページ(LP)分析用の「探索」レポートの作り方を解説します(GA4連載第14回)。

ITトレンド最終更新日: 20230728

小川卓さんのGA4連載 第14回 LP分析で必須の「探索」レポートの作り方

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Webアナリストの小川卓さんが執筆する、Google Analytics 4(以下GA4)連載の第14回。今回から複数回にわたり、GA4を活用してWebサイトの課題を発見するためのレポート作成方法や、出てきたデータをどのように解釈すればよいかについて解説していきます。最初に取り上げるのは「ランディングページ(LP)」についてです。

※Google Analytics 4は、随時、機能追加やレポート画面のレイアウト変更などが行われます。本内容は2023年7月末時点に基づきます。

ランディングページ(LP)とは?

ランディングページ(以下LP)とは、アクセス解析用語では「(ユーザーが)Webサイトに訪れた時、最初に見たページ」を指します。つまり、Webサイトにおけるすべてのページがランディングページ(LP)となりえるわけです。

LPはWebサイトの第一印象を決めますし、ユーザーが求めているものを最初に表示するページです。例えば、「Windows 10のハードディスクの増設手順」を知りたいユーザーは、「パソコン工房」のWebサイトのトップページから入ってくることは(ほぼ)ありません。「ハードディスク 増設手順 Windows 10」などの言葉で検索して、(例えば、検索最上位に表示されたNEXMAGの)「Windows 10のHDDを増設する手順を解説したページ」に(直接)流入する場合がほとんどでしょう。

その上で、流入したユーザーが増設方法を理解した結果、「パソコン工房」のECサイトへと移り、購入を検討してくれるかもしれません。このようにLPは、その後の行動を決める重要なページとなるため、GA4で分析できる状態を作っておくことが大切です。

GA4のLPの「レポート」

GA4には、最初からLPの「レポート」が用意されています。GA4の画面左のメニューより「レポート」を選び、「Life cycle」(または「ライフサイクル」)の「エンゲージメント」→「ランディングページ」をクリックします。

以下が、表示されたレポート例です。しかし、筆者はこの情報だけでは不十分だと考えています。自分で項目をカスタマイズできる「探索」レポートを使うべきでしょう。

ここからは、自分でLP分析用のレポートを作成し、「どういう項目を見て、どのように活用するべきか?」を解説します。

「探索」レポートを作成する

自前でLP分析用のレポートを作るには、「探索」レポートの「自由形式」を利用します。

※「探索」レポートを利用するのが初めてのユーザーは、詳細についてGA4連載の第3回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第3回 「探索」機能について | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2021.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/57185

そこで、以下の項目を追加しましょう。

ディメンション:ランディングページ+クエリ文字列
指標:アクティブユーザー数・新規ユーザー数・ユーザーあたりのセッション数・エンゲージメント率・セッションあたりの平均エンゲージメント時間・コンバージョン・セッションのコンバージョン率・ユーザーのコンバージョン率

下の画像は、変数の「ディメンション」と「指標」を選び終えた状態です。

「行」や「値」の設定を終えると、以下のようなアウトプットになります。

項目が多く、一見複雑そうに見えますが、大きく分けると「集客」(アクティブユーザー数・新規ユーザー数・ユーザーあたりのセッション数)、「回遊」(エンゲージメント率、セッションあたりの平均エンゲージメント時間)、「成果」(コンバージョン、セッションのコンバージョン率、ユーザーコンバージョン率)に分けることができます。

「集客」に関する指標

ここからは、先ほど分けた「集客」「回遊」「成果」のそれぞれについて、もう少し詳しく見ていきます。まずは「集客」に関する指標についてです。

集客に関する指標は3つ(アクティブユーザー数・新規ユーザー数・ユーザーあたりのセッション数)です。

1.アクティブユーザー数

まず、LPとして流入が多いページを把握するために「アクティブユーザー数」を確認します。この数値が大きければ大きいほど、改善インパクトも大きくなります。筆者は主に上位10ページの中から、改善案が出せそうなページをピックアップすることが多いです。

2.新規ユーザー数

次に、「新規ユーザー数」です。この数値もWebサイトにとっては重要で、Webサイトを初めて知ったきっかけのページとなります。アクティブユーザー数とほぼ同じ順位になることが多いですが、より新規の人が訪れやすい、あるいはリピーターが訪れやすいページとなっているかを把握できます。これは、ページの改善案を考える時には欠かせない要素です。

今回取り上げたWebサイトでは、ほぼ新規ユーザーとアクティブユーザー数が同じですが、3位のページは傾向が違います。ユーザー数353人に対して新規が229人しかいません。つまり、このページは他のページと比べて「リピーターが見やすいページ」であることがわかります。リピーターを意識して、コンテンツ作り(例えば:アップデート情報を記載するなど)を意識するとよいでしょう。

3.ユーザーあたりのセッション数

3つ目が、「ユーザーあたりのセッション数」です。これも新規ユーザーと似たような考え方ができ、LPごとに1ユーザーが何回訪れているかがわかります。1回しか見ていないユーザーのみなら「1」となりますし、複数回見ている場合は1より大きくなります。レポートを見る期間によっても変わりますので、常に同じ期間(例:30日や90日など)でチェックして、比較するとよいでしょう。

「回遊」に関する指標

次に、「回遊」に関する指標(エンゲージメント率、セッションあたりの平均エンゲージメント時間)を見ていきます。「ページやWebサイトをしっかり見てくれたか?」を判断するために、「エンゲージメント率」と「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」を追加しています。

1.エンゲージメント率

「エンゲージメント率」は、GA4から新しく生まれた指標です。エンゲージメント率が高ければ高いほど、該当LPを「理解してもらった」と考えることが可能です。

※エンゲージメント率の詳細は、GA4連載の第9回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第9回「直帰率」を正しく理解する より「GA4「エンゲージメント率」の定義について」 | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/71194#section02

例えば、このWebサイトでは5位のページ(/books/)がエンゲージメント率90.4%と非常に高い数値を出している一方、9位のページ(/business_article/)に関しては28.7%と低い数値になっています。「どうしたらエンゲージメント率を高めることができるのか?」について、それぞれのページを比較して、内容・文章量・リンク先の場所などを確認するといいでしょう。

2.セッションあたりの平均エンゲージメント時間

もう1つの指標が「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」です。該当LPに流入した際に、平均どれくらいの時間、Webサイトを訪問していたか(見ていたか)を確認できます。こちらはユーザーがWebサイト内で迷っていない限りは、時間が長い方が一般的には良いです。なぜなら、Webサイトの滞在時間が長ければ長いほど、自社の商品やサービスを伝える機会が増え、ユーザーの理解度が増すからです。

ここではユーザー数が多い上位のページの中で、エンゲージメント時間が高いページと低いページを確認して、違いを発見するといいでしょう。

「成果」に関する指標

最後は、「成果」に関する指標(コンバージョン、セッションのコンバージョン率、ユーザーコンバージョン率)についてです。

1.コンバージョン

1つ目の「コンバージョン」とは、該当LP経由でWebサイトの成果に設定している条件にたどりついた回数のことです。コンバージョンはGA4側で設定する内容で、Webサイトによって変わります。例えば、資料請求や購入、会員登録など、さまざまな項目がコンバージョンとして考えられます。

※コンバージョンの数値は設置しないと確認できません。未設定のユーザーは、設定方法についてGA4連載の第7回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第7回「コンバージョン」を設定しよう | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/66439

ユーザーの流入がいくら多くても、Webサイトのコンバージョンに貢献していない場合は、ユーザーにとっても企業にとっても課題が残るページとなるでしょう。ぜひコンバージョン順にページを並びかえて、Webサイトの成果に貢献するページを洗い出してみましょう。

2.セッションのコンバージョン率とユーザーコンバージョン率

さらに見るべきなのは、「量」だけではなく「質」にもなります。そのために必要なのが、「セッションのコンバージョン率」と「ユーザーコンバージョン率」の2つの数値です。似ていますが、それぞれ意味が違いますので確認していきましょう。

セッションのコンバージョン率は、以下の通り計算可能です。

コンバージョンしたセッション数 ÷ セッション数

つまり、該当LPに訪問した時の成果到達率を見ます。

一方、ユーザーコンバージョン率は、以下の通り計算可能です。

コンバージョンしたユーザー数 ÷ ユーザー数

つまり、該当LPを見た訪問者に対しての成果到達率を見ます。

似たような計算式になっていますが、以下のようなケースだと違いが出てきます。例えば、1人のユーザーがWebサイトを2回訪れたとしましょう。

1回目の訪問:ランディングページA→CVせず
2回目の訪問:ランディングページB→CVした

この場合、ランディングページAの「セッションのコンバージョン率」は0%となり(1回目の訪問でCVしていないため)、「ユーザーコンバージョン率」は100%となります(ランディングページAを見たユーザーがコンバージョンしているため)。

3.2つのコンバージョン率を参照する理由

2つの数値を見る理由は、LPの「直接効果」と「間接効果」を見るためです。例えば、旅行サイトのブログ記事「台湾のおすすめフード10選」を見た時、いきなり台湾旅行を予約するとは限りません。まだ情報収集の段階である可能性が高いためです。しかしその後、友人と検討して、この旅行サイトで予約をしてくれるかもしれません。

このようなケースの時、「台湾のおすすめフード10選」を成果としてみるのが「ユーザーコンバージョン率」で、成果としてみないのが「セッションのコンバージョン率」です。どちらが正しいということではなく、両方とも見る必要がありますし、LPのコンテンツによってどちらを重視するかも変わってきます。

ぜひ両項目を使い分けて、LPの成果を評価しましょう。

第15回の予告

今回は「探索」レポートを使って、LPを評価するためのレポート作成と活用方法を紹介してきました。

どのWebサイトも必ずLPは存在するため、ぜひ本レポートを作成し、自社サイトの課題発見に活かしましょう。

次回(第15回)は、「集客」を評価するために作成するべき探索レポートを紹介していきます。無料/有料にかかわらず、さまざまな集客方法があります。それらをどのように分類して、正しく評価するとよいでしょうか?

次回もお楽しみに!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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