川口大雅(カワタイ)さん
高校1年生(東京都板橋区)光る技術で刃物をキラリ
中学1年生の時に起業して、包丁やはさみ、工具などをみがく「研ぎ師」になりました。
まず刃物のさびを落とし、刃こぼれなど傷ついた部分をなめらかにします。そして仕上げで切れ味をよくするそうです。ぬれた砥石に刃物を当てて、前後に動かすのが基本動作です。
起業のきっかけは、不登校になったことでした。料理にハマり、初めて包丁研ぎをすると、一気に引きつけられました。本や動画などで技術を習得。パソコンがほしかったこともあり、起業を思い立ちました。
「不登校になった僕を親は受け入れてくれました。そして、起業も全面的に後押ししてくれたんです」
祖父母の「初期投資」でプロ用の砥石を購入。サイトも独学でつくりました。仕事場は自宅のガレージ。準備を終えて「起業します」とSNSに投稿すると、またたく間に拡散され、全国から仕事の依頼が舞い込むようになりました。
現在、通信制の高校に進み、休日に仕事をしている川口さん。「研ぎ師の数はへっています。でも技術は途絶えさせたくない。だから、日本刀も含め、研げる刃物の種類を増やしたい。将来的にはオンラインなどで技術を伝えたいです」と目標を語りました。
- 2008年
- 東京都板橋区生まれ。幼いころから夢中になりやすい性格で、たとえば工事現場が気になるとベビーカーにすわって何十分も見ていたそうです
- 保育園時代
- 3歳で工作が大好きに。牛乳パックや空き箱でいろいろ作りました
- 小学校時代
- スキーやキャンプ、海外旅行などに連れて行ってもらい、いろいろな経験をしました。親の教育方針は「自分のことは自分でさせる」でした
- 中学校時代
- 1年生の時に不登校になりました。食べることが好きだったため料理にハマり、食事を自分で作るように。そこから包丁研ぎに関心が移り、現在のビジネスに結びつきました。また、興味がわいたものを動画などで追求することが好きで、フルートを修理したり、ピアノでショパンの曲をひいたりすることもできるようになりました
- 高校時代
- 今年、通信制の学校「S高等学校」に進学。勉学にいそしみながら仕事を続けています
うでに見合う価格で提供
取材した日、「今日も朝1時間働いて、2千円かせいできたところです」と話した川口さん。起業した時は1本150円でしたが、その後技術が上がるごとに200円、250円と価格を上げました。自作のウェブサイトでは、お客さんが安心して依頼できるように刃物を郵送する時の注意点を解説しています。
最初はおこづかいかせぎのつもりでしたが、今ではやりがいも感じています。「さびた刃物がピカピカになったり、とても切れるようになったりすると、お客さんがすごく喜んでくれます。その顔を見ると、やってよかったなと実感します」
必要な道具は?
下の写真の右上2つが、欠けた刃を修正する荒砥石。左上3つが、日常の手入れに使う中砥石。下3つが、切れ味をよくする仕上砥石です。おもに天然の石を使います。
もっと知るには
研ぎ方の技術や段取りがわかりやすく解説されています。砥石の産地や、産地ごとの特徴、使い方などが記されていて、読むだけでもおもしろいです。〈写真は、『包丁入門』(加島健一/著、柴田書店)〉
おしごとあるある
刃物をあつかうので、止血などの応急処置のやり方を頭に入れておくことをおすすめします。医師にアドバイスを受けた方がいいのはもちろんですが、簡易的なものであればネット上の動画でも十分学ぶことができます。
あとは……冬は手がかじかんでつらいですね(笑い)。ぼくはガレージや屋外で研ぐことが多く、砥石を水にひたす作業から研ぎ終えるまで、ずっと水を使う仕事なので手が凍ります(笑い)。
2024.8.5付 朝日小学生新聞
構成・正木伸城(ライター)
毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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