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経済学部

BSc in Economics

経済学部:国と地方自治体の関係性を研究《大谷教授》

経済学部:国と地方自治体の関係性を研究《大谷教授》

本学経済学部の教員、大谷先生の論文「自治官僚の昇進と地方出向―出世コースと出向先との関係―」をご紹介します。大谷先生は都道府県の公務員として勤務の傍ら、地方自治論を研究され、論文、実務解説記事等を多数執筆されています。本稿では、出世コースにあると思われる自治キャリアの出向先が特定の都道府県に偏っているのではないかという仮説を検証されています。

世界で類を見ない人口減少に陥っている日本において、地方活性化は大きな打開策の1つです。2014年には安倍首相が地方創生プロジェクトとして地方創生担当相と、内閣府に地方政策を担う「まち・ひと・しごと創生本部」を創設。大都市圏に集中する人口を地方へと分散させるべく、「プレミアム商品券」などの施策も打ってきました。大谷先生はこの地方創生のキーパーソンである地方への出向官僚「自治官僚」に着目し、特定の地域だけが優遇され、その出世にも影響しているのではないかという疑問を持たれています。今後の日本を占う上でも大変重要なテーマとなっています。

  

自治官僚の昇進と地方出向―出世コースと出向先との関係―
大谷 基道

はじめに

都道府県が中央官僚の出向を受け入れる目的の一つに、「国とのパイプの確保」がある。都道府県は、自らの望む政策・施策を実現するため、出向官僚が出向元省庁内に培った人的ネットワークを活用し、情報を入手したり働きかけを行ったりすることを期待する。通常、出向官僚は、任期を終えると出向元省庁に帰任していくが、当該官僚と出向先道府県との関係がそれで切れてしまうことは少ない。出向元省庁に帰任したかつての出向官僚(以下、「出向経験者」という)は、当然ながら出向先都道府県の実情を詳しく理解している。そのため、都道府県は、出向官僚が帰任後も引き続き良き理解者として当該都道府県のために尽力してくれることを期待し、彼らとの関係を何らかの形で保とうとする。

〜中略〜

ところで、組織において影響力の強い人物とはどのような人物か。影響力の源泉には様々な事物が考えられるが、最も代表的なのは組織内の序列の高さであろう。つまり、省内で高いポストに就くことが、その省庁内で高い影響力を持つことにつながる。したがって、本稿においては、所属省庁で高いポストに就いた中央官僚の地方出向履歴を分析し、その出向先の偏りの状況を明らかにする。なお、分析に際しては、中央省庁の中でも地方制度官庁であるため特に都道府県との関係が深く、出向者も多い旧自治省及び現総務省自治系統のキャリア官僚(以下、「自治キャリア」という)を対象とする。
言い換えれば、「出世コースにあると思しき自治キャリアの地方出向先は、特定の都道府県に偏っている」というのが本稿の仮説である。自治関係業界においては経験的に知られていることであるが、それを実証的に明らかにしようとするのが本稿の目的である。

本稿においては、まず、分析の前提として、自治キャリアの人事パターンを概観する。次に、名簿データを用いて、そもそも「出世コース」が存在するのかを確認する。さらに、出世コースにある者の出向先に偏りがあるかどうかを検証する。最後に、その原因について若干の考察を加える。

続きは、NUCB Journal of Economics and Information Science Vol.60 No.1 をご覧ください。