東日本大震災のとき,地震学の常識を覆す場所で断層が動き,津波が大きくなったことがわかった。震源域は海底下10kmより深い場所だと考えられていたが,海底直下まで震源域となっていた。東海地震と東南海地震,南海地震が連動する巨大地震の際も,こうした海底下の浅い震源域が動き,想定外の大津波になる恐れがある。実際,過去にそうした場所が震源域となった地震があったこともわかった。
そうした巨大地震の際,どんな津波が沿岸各地を襲うのか,東大地震研の古村教授らはコンピューターシミュレーションで再現した。その結果,津波の高さは宝永地震,つまり政府が想定している南海トラフにおける最大の地震の場合の1.5〜2倍になることがわかった。
過去の例に照らすと,そうした巨大地震が起きると,富士山が大噴火する可能性がある。約300年前の江戸時代にそうしたことが起こり,関東でも別の巨大地震が発生した。もし現代に同じことが起きれば,日本は東日本大震災をはるかに上回るダメージを受けることになる。
再録:別冊日経サイエンス217 「大地震と大噴火 日本列島の地下を探る」
著者
中島林彦 / 協力:古村孝志 / 小山真人
中島は日経サイエンス編集部。古村は東京大学地震研究所教授(災害科学系研究部門)。東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター教授を兼務。津波のシミュレーション研究で知られる。小山は静岡大学防災総合センター副センター長。教育学部教授を兼務。専門は地質学,火山学,歴史地震学,地震・火山防災など。富士山噴火に関する一般向け著作もある。
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