「ダメだあ!

 りさ子の持ってきちゃった」。年末年始のラッシュも過ぎた成田空港に、カズの声が響いた。横浜FCのFW三浦知良(42)が11日朝、グアム自主トレに出発、の予定だったが、手にしたパスポートはりさ子夫人の物。さすがのキングも妻のパスポートでは出国できない。結局12時間後の夜の便で出発したが、プロ25年目は波乱のスタートとなった。

 「カウンターの人が、パスポートの写真とおれの顔をじろじろ見比べるんだ。そりゃそうだよ。別人なんだから」と苦笑いで説明した。昨年末、家族でのグアム旅行の時に取り違えたまま。「赤い表紙は一緒だしね。まあ、中を確認すれば良かったんだけど」。

 10日は名波引退試合に出場して2得点。「グアム出発に備えて早く寝たい」と急いで東京に戻ったが「こんなことなら、ゆっくり出来たのに」。最も印象に残った選手に与えられるMIPの副賞がグアム往復航空券というのも皮肉。「ちょうどいい。昼にりさ子の親族の新年会があるから、それに出るよ」。カズらしい切り替えの速さだが、会では「すごく笑われたよ」と苦笑いだ。

 驚いたのは、午前8時に空港に集合した「チームカズ」だ。トレーナー、フィジカルコーチ、栄養士ら総勢5人。「先に行ってて。夜中に着くから」というカズに従って、あるじ抜きで「チーム」だけが出発した。自主トレプランとともに、夫婦不仲のうわさも吹き飛ばす豪快なミス。「本当はあり得ないけど、まあ、あるよね」と、自分を納得させるように言ったカズ。今年も、キングから目が離せない。