2024年の新潟県政はさまざまな動きがあった。その時、県のトップは何を口にしたのか。喜び、戸惑い、焦り。いろいろな感情が込められた花角英世知事の言葉から、この1年の県政の出来事を振り返る。
◆佐渡島の金山「未来への継承に全力尽くす」
7月27日、インド・ニューデリーで開かれた世界遺産委員会で、「佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」の世界文化遺産1975年に発効した世界遺産条約に基づき、歴史的建造物や遺跡を対象にユネスコが人類共通の財産として登録する。国内では姫路城などが登録されている。世界遺産にはほかに、貴重な生態系などの自然遺産と、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産がある。登録の可否は世界遺産委員会が決める。登録が決まった。決定直後、花角知事は世界各国に向けたスピーチで約束した。
「大切な文化遺産を守り、未来への継承に全力を尽くす」。英語でゆっくりと語りかけると、会場からは拍手が起こった。審議終了後、祝福しようと集まってきた各国代表と固く握手し、喜びをかみしめた。
未来への継承は簡単なことではない。人口約4万8千人の佐渡市は少子高齢化に直面。過疎化が進む中でどう地域の活力を維持していくかは大きな課題だ。
「金山だけでなく、佐渡が持つ素晴らしい文化や食の魅力に気付いてほしい」。登録決定後、花角知事はさまざまな場で呼びかけてきた。世界遺産登録を一過性のものにせず、佐渡や県全体の魅力アップにつなげられるかが問われている。
◆原発再稼働「県民の受け止め見極めたい」
県議会2月定例会の閉会迫る3月21日。経済産業省資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が県庁に花角知事を訪ね、東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。の再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。に同意するよう政府を代表して正式に要請。花角知事は「再稼働の議論を深め、その上で県民がどう受け止めるか丁寧に見極めたい」と返した。
原子力規制委員会原発推進を担う経済産業省から安全規制の役割を分離させ、原子力規制に関する業務を一元化した組織。東京電力福島第1原発事故を受けて発足した。国家行政組織法3条に基づき、人事や予算を独自に執行できて独立性が高い「三条委員会」として環境省の外局に位置付けられる。衆参両院の同意を得て首相が任命する委員長と委員4人で構成する。が柏崎刈羽原発に出していた事実上の運転禁止命令原子力規制委員会が、東京電力に対して出した「是正措置命令」。柏崎刈羽原発でテロ対策の重大な不備が相次いだことを受け、原子炉へ燃料を入れることや、核燃料を移動させることを禁じた。原子炉に核燃料が入れられなければ原発を動かすことができないため、実質的には運転を禁止したことになる。命令は2023年12月に解除された。を解除したのが2023年の暮れ。東日本の脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー供給体制に危機感を抱く岸田文雄首相(当時)は、満を持して花角知事の下に使者を送った。
にもかかわらず、...