首都圏情報ネタドリ!

  • 2024年5月17日

築30年以上の中古マンション人気 思わぬリスクがある物件も?購入の注意点 リノベーションの事例は

キーワード:

東京23区の新築マンションの平均価格は1億円を突破(2023年)。この10年でおよそ2倍にまで跳ね上がっています。

こうした中で注目が集まっているのが、建築から年数が経過した“築古(ちくふる)”の中古マンションです。

築42年の中古マンションを購入したファミリー層の事例や、購入の際の注意点をお伝えします。

(全2回の後編/前編を読む

「首都圏情報ネタドリ!」の放送内容は、NHKプラスで配信しています↓

(配信期間5月17日(金)19:30~5月24日(金)19:57)

売れ筋は築30年以上の築古物件

前編の記事では、夫婦共働きでも希望する家が買えないファミリー層の厳しい現実や、住宅高騰の理由、専門家おすすめの購入戦略についてお伝えしました。

首都圏の住宅価格が高騰する中で注目が集まっているのが“築古”の中古マンションです。

東京・江東区で2歳の子どもを育てる夫婦は、2年ほど前に、築42年、73平米の中古マンションを購入してリノベーションしました。

マンションによくある2LDKの間取りを1LDKに一新。

リノベーション前

リノベーション後

こだわりを詰め込んだのが、玄関まわりです。

もともとあった2つの部屋をなくし、広い土間に。趣味の自転車やキャンプ用品を置くスペースにしました。

手をすぐ洗えるように、洗面台もつくりました。

気になる費用は、全部で5000万円でした。

新しいマンションを探したり、一軒家を見たりしたのですが、自分たちが考える値段感覚と、住みたい家とがなかなかマッチングしませんでした。

僕らにはすごく合っているのかなと思い、こういうリノベーションをしました。

 

この夫婦の中古マンションのリノベーションを担った会社で、いま特に売れているのが、築30年以上のマンション。去年の売り上げの65%を占めています。

購入する人はさまざま。

葛飾区の築36年をリノベーションしたのは、なにかとお金がかかる子育て中の夫婦。

(左)リノベーション前 (右)リノベーション後

川崎市の築37年のマンションは老後を見据え、賃貸からの住み替えを検討していた単身の女性が購入しました。

(左)リノベーション前 (右)リノベーション後

「リノベる。」コンセプトデザイン本部 齋藤高央部長
「築30年、40年になって価格が抑えられている物件を購入して、その分、内装にお金をかけて、自分らしい暮らしを実現したいという方が増えているのかなと思います」

築古が人気を集める要因として、広さに注目する専門家もいます。

日本の新築マンションの平均住宅面積は、20年前には78平米あったのが、いま64平米になり、15%以上縮小しました。

オラガ総研 代表取締役 牧野知弘さん
「新築マンションの価格が高騰する中、各社は面積を狭くして帳尻を合わせている状況です。単身世帯が増えていることもありますが、30年前には80平米とかの物件もザラにありました。つまり築古は広い。広いマンションは希少なので人気があるという側面もあると思います」

“築古”マンションの見えないリスクは…

注目が集まっている築古マンションですが、思わぬリスクがある物件もあるといいます。

気づかぬうちに進むおそれがあるというのが、“漏水”です。

首都園でマンションの配管工事を専門に行う会社には、いま修理の相談が相次いでいます。
原因の多くが、銅でできた古いタイプの給湯管だといいます。

ニッポン・リニューアル 工藤秀明社長
「水道水の中に含まれている塩素と銅管が、非常に相性が悪い。経年とともに、ピンホールといいまして、小さな穴が開くんです」

この給湯管が壁や床下などコンクリートの中を通っていると、取り替えが難しいため注意が必要だというのです。

リノベーションしたばかりの部屋で起きた漏水の事例では、内装は一新されていたものの、給湯管は古いままだったことが原因でした。

「ある日突然、下の階の住人から『水漏れているんだけど、何やってるの?』という苦情が来て、パニックになって『助けてください』という電話が私たちのところにきます。リノベーションしているから漏水は起きない、安心なんだと思い込むのはちょっと待ってほしいと思います」

さらに、リノベーションの内容を十分に確認すべきだというのは、住宅診断士の田村啓さんです。

数多くの中古マンションを見てきましたが、近年、壁紙の裏にカビが生えていたなど、トラブルの相談が増えているというのです。

さくら事務所 田村啓 ホームインスペクター
「まずは見た目だけきれいにする。そこの優先順位が高くなる業者さんが一定数います。リノベーションでどこまで直しているのか、中古マンションを購入する際によく確認しないと、こういった落とし穴があるかもしれない」

“築古”の物件を購入する際の注意点について、再び牧野知弘さんに聞きました。

オラガ総研 代表取締役 牧野知弘さん
「“築古”のリノベーションは、大手も進出してきて選択肢が増えていますが、新しい市場ということもあり業者は玉石混交です。特別な資格やライセンスがなくても参入できるので、事前にきちんと調べることが大事です」

さらに、1981年より前の旧耐震基準で建てられた物件も、注意が必要だといいます。

「旧耐震物件でも地盤のいい場所に建っているものは比較的安全性が高いですが、1階が駐車場になっていたり、ピロティになっているマンションは阪神・淡路大震災でかなり倒壊したので、注意が必要です。そうしたリスクもわかった上で、買うかどうか判断してほしいと思います」

住宅高騰で少子化のおそれも…

高騰する住宅については、国も去年、報告書をまとめ課題を指摘しています。

郊外化が進んで女性の就業率が押し下がったり、家が狭い世帯で2人目、3人目の子どもを諦めたりする可能性があるとし、政策対応として子育て世代が安く借りられる公的住宅の供給拡大が必要だとしています。

家が高くて買えないと悩むファミリー

今後、日本の住宅政策はどうあるべきなのでしょうか。

牧野知弘さん
「日本の住宅ストック自体は十分に満たされているので、それを活用するべきです。都内には89万戸、首都圏には200万戸の空き家があります。実はその半数は、耐久性があったり、駅から近かったりする好物件ですが、活用されず眠っています。

採算性の問題もあり民間の力ではなかなか動かないので、国主導でこうした隠れた好物件をいかに流通促進させるかが課題だと感じます」

 

<前編を読む>
「家が買えない」なぜ高騰?いつまで続く?マンション・戸建て 首都圏の最新住宅事情

あわせて読みたい

ページトップに戻る