首都圏情報ネタドリ!

  • 2024年5月17日

「家が買えない」なぜ高騰?いつまで続く?マンション・戸建て 首都圏の最新住宅事情

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「家が高くて買えない」という切実な声が数多くあがっています。

東京23区の新築マンションの平均価格は1億円を突破(2023年)。この10年でおよそ2倍にまで跳ね上がりました。

子育て世帯の中には、共働きでも予算に収まる家が見つからないという人も。

なぜ、住宅がこれほどまでに高騰しているのか。今後、価格はどうなるのか。賢い購入戦略は?

「首都圏情報ネタドリ!」の放送内容は、NHKプラスで配信しています。↓

(配信期間5月17日(金)19:30~5月24日(金)19:57) 

ファミリーが直面する厳しい現実

都内の社宅がまもなく満期を迎えることから、家の購入を考えていた吉田さん夫婦(仮名)です。

東京で1年以上探してきましたが、手が届く物件が見つかりませんでした。

引っ越したのは、妻の実家に近い千葉県習志野市の賃貸マンションです。

夫婦共働きで小学1年生と3才の子どもを育てている吉田さん。

7000万円の予算で探していたのは、70平米ほどで、都内の職場まで45分以内で通える家。

しかし、条件の合うところは軒並み、予算オーバーでした。

ファミリー物件となると1億を超えていたから。結局、様子見で賃貸にしました。

2人で、フルフルで頑張って全部つぎ込まないと、条件に合うものが見つからないという感覚がありますね。

子どもの保育園への送り迎えは、夫婦で分担してやりくりしている吉田さん。

仕事柄、在宅勤務ができず、仕事を終えると職場から走って電車に乗っています。

それでも、お迎えはいつも退園時間ギリギリ。

今も購入できる家を探し続けています。

 

もう1年くらい、いろんなマンションの間取りを見て、電卓をたたいて、ちょっと疲れていますけど。まだ一応買うつもりではいるので、続けたいと思います。

住宅高騰の背景は…

なぜ、首都圏の住宅は高騰しているのか。

首都圏を中心にマンションを供給する大手不動産会社が、取材に応じました。

この不動産会社がことし2月に販売を開始した世田谷区の新築マンションです。

最寄駅からは徒歩8分。53平米の部屋の価格は、約8800万円。68平米の部屋は約1億2000万円にのぼります。

マンションの販売価格に占めるデベロッパーの利益は、一般的に5%~10%と言われています。

しかし今、資材の値上がりなどの影響で、建設費は3年前と比べて2割以上増加。

土地代なども含めたコストが上昇しているため、利益をこれまでと同じに据え置いたとしても、高価格帯の物件になってしまいます。

そこで各社が競っているのが、高い価格でも選んでもらえる、マンションの高機能化です。

世田谷区のマンションのフローリングに使われているのは、豪華客船でも使われる、水分に強いチーク材。

さらに、最上階には、屋上のルーフテラスを使える部屋も。

こうして1億円を超えた物件でも、販売を開始するとすぐに売れてしまうといいます。

いまこの会社が企画しようとしているのは、最も高い部屋が2億円ほどの高級マンションです。

都内では広い土地が減り、供給できる戸数も減少。高価格帯で勝負する物件が増えているのが現状だといいます。

三菱地所レジデンス 浦手健司執行役員  
「ここ1、2年ぐらいは本当に工事費が今まで考えられなかったぐらいの工事費に今なっています。  
本当は安くていいものを供給したいところなのですが、周辺の物件よりも高いけれど、それでもその物件にしようと思ってくれるようなお客様が、ターゲットになっているかと思います」

戸建ては?東京周辺3県の事情は?

さらに、高騰の波は、これまで値上がりがおさえられてきた戸建てにも。

「東京に家を持とう」というキャッチフレーズのもと、急成長を遂げてきた新興の不動産会社。

入手した土地に、なるべく多くの住宅を建てることで、販売価格をおさえる戦略をとってきましたが、いま異変が。

オープンハウスグループ 吉田真太郎 常務執行役員  
「10年前ぐらいですと、世田谷区辺りでも5000万円台の新築戸建てを供給することができていましたが、いまは何とか販売価格で1億円を切れるように企業努力をしているという状況です」

背景にあるのは、23区を中心とした東京の地価の上昇。

従来の手ごろな価格での供給を目指して、いま周辺3県の開発にも力を入れています。

しかし、そこでも土地の獲得を巡る熾烈(しれつ)な競争が起きています。

大宮駅の周辺で土地の仕入れを担当している勝田尭将(かつた・たかまさ)さん。毎日、7~8km歩いて地元の不動産会社を訪ね、家を建てられそうな土地を探していますが…。

勝田さん

土地のお話をしに来たのですが、どうですか、ストレートに。

不動産会社  
代表

いま、預かっている土地はないんですよね。

 

そうですか…

 

土地の価格も上がっていますので、我々地元の業者でも苦労しているところは正直ありますね。

いま東京の周辺部には、戸建てメーカーや集合住宅を開発する業者が続々と参入し、土地の価格が急騰しています。

埼玉営業部 勝田尭将さん  
「3年前だったら、だいたい2000万円だった土地が、4000万とかがザラですね」

この日、やっと土地の情報を得られたのは、16軒目の営業先でした。駅の近くにあり、求めていた条件にぴったりの土地だといいます。

土地の所有者に一刻も早く買い取り価格を提示するため、本社の設計部門に情報を共有。

本社ではすぐに土地の活用方法を検討し、具体的な価格の計算に入りました。

この日、勝田さんが埼玉の営業所に戻るころには価格の計算は終わり、3500万円での購入を提示することになりました。

情報の入手から購入を決めるまで、わずか1時間半。東京の周辺部でも土地を巡る争いは日々激しさを増しています。

勝田さん  
「不動産はナマモノ。競合さんたちも、とにかく早くと動いてきますので、僕たちもそれに負けじと、どの業者さんよりも早く、きちんと丁寧に金額を伝えられるようにやっています」

高額物件は誰が買う?値上がりはいつまで?

高騰した住宅を、いったい誰が買っているのでしょうか。

68平米が約1億2000万円で販売された新築マンション  
(※写真はモデルルーム)

不動産の販売や流通に詳しい牧野知弘さんによれば、▼株価の上昇などを背景に近年増加している日本の富裕層や、▼円安の影響で香港や中国などの外国人が買っているケースが多いといいます。

非常に難しい首都圏の家選び。「オススメの購入戦略」について3人の専門家に聞きました。

オラガ総研 代表取締役 牧野知弘さん  
「迷って疲れるくらいなら購入は待った方がいいと思います。高騰は長くてもあと4~5年と見ています。2030年には戦中生まれから団塊世代の方々の持つ家が、その子ども世代に相続される時代がきます。そこで持て余した土地や家が大量に市場に出てきます。その影響で住宅供給過多になり市場全体も落ち着いてくると予想しています」

不動産経済研究所 上席主任研究員 松田忠司さん  
「資材価格や人件費はますます高騰しています。今後下がっていくとは考えづらいと思います。ことしから来年にかけて、市川、船橋、川口、蕨など比較的都心にアクセスのよい場所で新築マンションの供給が増えてきますので、23区以外も視野に入れてほしいと思います」

住宅情報誌「SUUMO」編集長 池本洋一さん  
「急激な金利上昇が起こる可能性は低いですが、住宅価格が下がる見込みも薄いです。 都内でも急行停車駅から1駅外した場所などは比較的安い物件もあり、おすすめです」

この記事の感想や体験談、疑問などをお寄せください。 

住まいの高騰は、どこまで広がり、いつまで続くのか?さらに詳しく読み解きます。

クローズアップ現代「家が高すぎて買えない バブル超え“住まい高騰”の舞台裏」 
▼NHKプラスで配信(5/27(月) 午後7:30~6/3(月) 午後7:57まで)▼

 

さらに、住宅価格が高騰する中で注目が集まっているのが、建築から年数が経過した“築古(ちくふる)”のマンションです。そのメリットとデメリットは?購入の際、注意すべきことは?後編の記事でお伝えします。

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