10月7日、JALは欧州の航空機大手エアバスの最新鋭機「A350」を31機購入し、さらに25機を追加購入する可能性があると発表した。日本の航空機市場は、米国の独壇場となっており世界でも極めて特殊だ。「これまで日本では日米安保を背景として、国策として米国ボーイング社の航空機ばかりを購入してきた」(航空業界関係者)といわれ、JALは機体の100%、ANAも88%をボーイングから購入している。しかし、安倍政権は現在、EUとの関係強化を図っている。官邸関係者が語る。
「政権は4月にEUとの経済連携協定(EPA)の交渉をスタートさせ、経済面での関係緊密化に積極的だ。エアバス社のファブリス・ブレジエCEOは日・EUビジネス・ラウンドテーブルの会長(EU側)に就任し、交渉における最重要人物となった。しかし、同氏は以前から、日本がエアバス機を購入しないという“伝統”に対して不満を持っており、それがEPAの交渉のネックになっていた」
つまり交渉を円滑に進めるためには、“欧州経団連”のトップであるブレジエCEOを喜ばせる必要があり、「政府内では政府専用機を増やす計画があるが、それをエアバス機にしたらどうかというプランも持ち上がっていたほど」(同前)だったという。
そんな中でのJALのエアバス購入発表は、実に政府にとって都合のいいタイミングに映る。
「ANAはB787のローンチカスタマー(※)として66機を契約しているため、エアバス購入の余裕がない。身動きが取れないANAを横目に、JALがエアバス購入で安倍政権に結果的に恩を売る形になった」(同前)
【※注】航空機メーカーに対し、新たな飛行機の製造開発に踏み切らせるだけの十分な規模の注文を行なって、その新型製造計画を立ち上げる後ろ盾となる顧客のこと。
航空評論家はこう語る。
「航空機購入は交通の安全確保や安全保障上の問題も絡む。だからこそ、これまで日本の航空会社はボーイング一辺倒という“国策”にしたがってきた。エアバス購入に際しても日米政府間の根回しが行なわれ、JALの購入には政府のゴーサインが出ていたと見るべきでしょう」
JAL広報部は、「安全性、機材品質、サポート・経済性、機材更新時期を総合的に勘案し弊社独自の判断を行なった」とそうした見方を否定するが、安倍官邸がその「民間企業の商取引」を歓迎していたのは間違いないだろう。
※週刊ポスト2013年11月22日号