あらゆる音楽のジャンルの中でも、「激しさ」という部分で他の追随を許さないのがヘビーメタル。天まで突き抜けるようなハイトーンや“デス声”のボーカル、歪んだ音色で速弾きするギター、手数と足数がとにかく多いドラム……。まさに「轟音」という表現が相応しい音楽でコアなファンを獲得してきたが、その裏でファンの“新陳代謝”は進んでいない現状があるようだ。
Mさん(50代/男性)は高校生の時にメタルにハマり、足繁くコンサートに足を運んだが、社会人になるとすっかりご無沙汰に。旧友から誘われたことで、メタル界の頂点に君臨するイギリスのバンド「IRON MAIDEN」が9月下旬に行なった来日公演に出かけた。
メタル系アーティストのライブは約30年ぶりだったMさん。まず驚いたのは「チケット代の高さ」だったという。
「大学時代は確か7000円ぐらいだったと思いますが、今回は1万8000円。バンドTシャツも3000円前後だったものが8000円で、ジャパニーズマネーの弱さを感じましたが、それよりも驚いたのは客層です。
IRON MAIDENはデビューから40年以上経っているので、ある程度年齢層が高いのは想像できましたが、会場に入ると客席は見事におじさんとおばさんばかり。昔は客電が消えると、みんな一斉に立ち上がり、いわゆる“ヘドバン”をしたものでしたが、今回のライブでは客電が消えても私の周りの観客は座ったままで、アンコール最後の曲まで1度も立ち上がることなくライブを見終えました」(Mさん)