サロン・デュ・ショコラとは?
サロン・デュ・ショコラは、年に一度、毎年10月末ごろに5日間、フランス・パリで行われるチョコレートの祭典です。2024年で29回目の開催となりました。どのようなイベントなのか、その概要や誕生について紹介します。
イベントの概要
フランスで誕生したチョコレートの祭典、サロン・デュ・ショコラ。もともとは1995年に、2人の実業家がスタートさせたイベントですが、今や世界最大規模に拡大しました。
このイベントは、パリ15区、ポルト・ド・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)駅近くの見本市会場で開催され、2万㎡程度の会場には世界各国からショコラティエやパティシエ、ブーランジェリー、カカオ生産者など200前後の出展者が集います。
(※年により出展者数は変わります。)
サロン・デュ・ショコラは有料のイベントですが、チケットを購入すれば 誰でも入場できます。2024年のチケット料金は、大人が16ユーロ(約2600円)、6~12歳の子どもが8ユーロ(約1300円)、ファミリーパッケージ(大人と子ども各2名)が42ユーロ(約6700円)です。(※1ユーロ160円として)その他に学生用のチケットや、障害がある方のチケットなども設定されています。
会場内でさまざまな商品を試食したり購入したりするほか、ステージでのプログラムやセミナーなどを観覧することができます。また前日の夜には前夜祭が開催され、一足早くブースやステージプログラムを楽しむこともできます。(前夜祭も有料チケットが必要。)
毎年、5日間の会期中は多くのチョコレートやお菓子好きの人々が来場します。2024年のサロン・デュ・ショコラには約96,000人が訪れたとのことです。
イベントの発祥
1995年、ショコラに情熱を傾ける2人の実業家フランソワ・ジャンテ氏とシルヴィ・ドゥ―ス氏が、フランスでサロン・デュ・ショコラをスタートさせました。
チョコレートはフランス人にとって日常的な食べ物ですが、それを深く知り、大切にしていく心を育むイベントはそれまでになかったとのこと。ただ、最初はこのイベントに誰も理解を示さず、賛同するショコラティエも少なかったそうです。
結果的には第1回目の開催から大盛況だったとのことで、その後、フランス国内のパリ以外の地域や、他国に広がっていきました。
世界への広がり、日本での展開
フランス・パリでの開催後、サロン・デュ・ショコラはヨーロッパに広がり、その後は北京、モスクワ、日本、ニューヨークなど世界各国で開催されるようになりました。2024年~2025年にかけてはフランス以外に、ペルー、中国、日本、アメリカ、サウジアラビア、カナダ、インド、マレーシアなど世界各地で開催、もしくは開催が予定されています。
日本では、毎年1月下旬~2月初旬にかけてサロン・デュ・ショコラという同じ名前のイベントが行われており、通称で「サロショ」「SDC」と呼ばれています。東京以外に札幌、仙台、京都、広島、福岡で展開され、会場となる各百貨店催事場には多くのチョコレートファンが来場します。
サロン・デュ・ショコラ パリの内容
日本でも行われているサロン・デュ・ショコラですが、発祥の地・パリで行われているイベントの特徴や内容について解説します。
時期や規模の違い
日本では1月の中旬~2月にかけて開催されています。一方、パリでは毎年10月末にサロン・デュ・ショコラが行われます。
日本でチョコレートが盛り上がるのはバレンタインを中心としたシーズンですが、フランスでは10月~4月がチョコレートのシーズンの ため、クリスマス前の時期に実施しているそうです。実際に会場ではノエル(クリスマス)向けの商品を多く見かけます。
また、規模も大きな違いがあります。日本では前述のとおり百貨店の催事場で開催されていますが、パリは約2万㎡という大きなスペース。2フロアで構成されています。過去には1フロアで実施された年もありますが、現在はポルト・ド・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)駅近くの見本市会場、ホール5の1階、2階が使われています。
多彩なブース出展者やコンクール
サロン・デュ・ショコラには、ショコラティエやパティシエをはじめ、ブーランジェリー、BEAN to BARのブランド、カカオ生産国のブースが並びます。
フランス国内のブランドを中心に、ベルギー、スイスなど近隣のヨーロッパ諸国や、サウジアラビア、ガーナ、マダガスカルなどのアフリカ、ペルー、ブラジルなどの南米、インドネシア、台湾、そして日本・・と世界各国からチョコレートやカカオ、菓子関係者が集う一大イベントです。
国際色豊かで、各国の民族衣装やその地域ならではの食材に出会うこともあります。
また、1階にはB to Bというビジネスコーナーもあり、製菓・チョコレート用の機械を紹介する企業が出展、商談をしている人々も見かけます。
コンクールが会場内で開催されているのも、フランスのサロン・デュ・ショコラのひとつの特徴。「ワールドチョコレートマスターズ」というチョコレートに特化した世界規模の大会が、4年に一度開催されるほか、フランス菓子職人組合(Confédération Nationale des Artisans Pâtissiers Chocolatiers)が主催する「Trophée International de la Pâtisserie Chocolaterie Française」(フランスの菓子賞)なども行われます。
お菓子作りをしている参加者の様子を、真剣に見つめる一般のチョコレートファンも多くいます。
チョコレートのオブジェ
毎年サロン・デュ・ショコラの会場を華やかに彩るのは、大きなチョコレートのオブジェ。
高さ数メートル、数百キロのチョコレートを使用したオブジェが来場者を出迎えます。
今年はどんなオブジェが飾られているのだろう?というワクワク感も、パリのサロン・デュ・ショコラならではの楽しみです。
チョコレートの芸術ともいえる作品を間近に見て、職人の技術を感じることができます。
チョコレートドレスのファッションショー
毎年、個性豊かなチョコレートのドレスが、メインステージでお披露目されます。
デザイナーとショコラティエがタッグを組んで作り上げるドレスをモデルが着用し、音楽に合わせてランウェイを歩きます。
このファッションショーは、サロン・デュ・ショコラのステージのなかでも人気プログラムのひとつといえるでしょう。
ショーの合間、ドレスは会場内に展示されますので、来場者はその美しい装飾を見たり、写真に撮ったりすることができます。
CCCの授賞式
「CCC」はショコラ愛好家のクラブ。「チョコレートをかじる人たちのクラブ」という意味のフランス語「Club des Croqueurs de Chocolat(クラブ デ クロクール ド ショコラ)の頭文字を取って「セーセーセー(英語ではシーシーシー)」と呼ばれています。これはショコラティエやチョコレートメーカーが応募するショコラの品評会で、毎年、金・銀・銅のほかAward(アワード:特別賞のようなもの)など各賞を受賞したブランドをガイドブックに掲載しています。
サロン・デュ・ショコラの会期中、この「CCC」でアワードを受賞したブランドをメインステージで紹介します。1ブランドずつ名前が呼ばれて壇上に上がり、司会者とのトークやアワードの表彰状の授与、写真撮影が行われ、観覧者からは大きな拍手が送られます。
<まとめ>
一般のチョコレート愛好家からプロフェッショナルまで、多くの人で賑わうチョコレートの一大イベント、サロン・デュ・ショコラ。元はフランス発祥ですが、その人気は世界各国に広がっています。多くのチョコレート、菓子ファンが来場し、お気に入りの商品との出会いや新しい味覚の発見、生産者との交流などを楽しんでいます。
2024年で29回目となるこのイベント。毎年テーマが変わり、この数年の傾向としてはチョコレートだけではなく、幅広く菓子を楽しむ場として変化しています。高級なショコラティエのブースは減少しつつありますが、一方でカジュアルなチョコレートブランド、ケーキやパンなどを扱うブランドが増え、出展者の顔ぶれも変わってきています。
次の記事では、2024年のサロン・デュ・ショコラ パリの様子をレポートします。
管理栄養士、スイーツプランナー、ショコラコンシェルジュ®
大学卒業後、洋菓子関連の会社に入社し販売や商品開発に携わる。その後2007年に独立、様々な商品企画開発や店舗改善、経営のアドバイスなど、スイーツやチョコレートのコンサルタントとして幅広く活動。2008年以降、毎年サロン・デュ・ショコラ・パリの視察や、世界各国のスイーツ、チョコレート市場の調査を行う。
ウイスキーとチョコレートが好きで、カルチャースクール等でショコラとウイスキーのマリアージュセミナーを多数実施。ウイスキー専門誌「ウイスキーガロア」のテイスターを務めるほか、日本で初となるスピリッツのコンペティションTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)の審査員も務める。