中国は、3月5~11日の日程で全人代(国会)を開幕した。首相は、この全人代終了後に内外記者団と会見することが、ここ30年間の慣例になっていた。だが、中国は今年から27年の共産党大会まで、首相記者会見を行わないと発表。記者会見中止理由が、明らかにされていないだけに憶測を呼んでいる。中国は、なぜ24~27年まで首相記者会見を中止するのか。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
異例の全人代「会見なし」…中国で何が起きている?
中国は、3月5~11日の日程で全人代(国会)を開幕した。
首相は、この全人代終了後に内外記者団と会見することが、ここ30年間の慣例になっていた。だが、中国は今年から27年の共産党大会まで、首相記者会見を行わないと発表した。記者会見中止理由が、明らかにされていないだけに憶測を呼んでいる。
共産党指導部は現在、政策決定権を完全に掌握している。国務院(政府)は、単なる執行機関に成り下がったので、首相が記者会見する必要もなくなった、とされている。ならば、習近平氏が共産党総書記として記者会見する方法もあろう。だが、神格化されている習氏の記者会見などあり得ないことである。
結局、中国の実情を説明するには、首相記者会見が最も相応しい形であることに落ち着くのだ。その記者会見が、取り止めになった。
中国は、なぜ24~27年まで首相記者会見を中止するのか。
記者会見を開けないほど経済は「ドン底」
これは、中国経済が最も厳しい局面へ遭遇する時期であるからだ。それだけに、記者会見でボロを出したくないという警戒観が先立っているに違いない。中国当局の自己防衛本能が、前面に出ている感じである。
中国指導部が警戒しているように、これから4年間の中国経済は「ドン底」状態へ落ちこむ。だが、その後に順調な回復期が訪れるという「自立回復」期待も持てないのだ。
不動産バブル崩壊という重圧が、中国の中間層を直撃しており個人消費を抑制するからだ。その意味でも、住宅不況を放置するのでなく、住宅購入しながら未竣工である3,000万戸の救済が不可欠になる。中国政府は、こうした個別救済が「バラマキ」に映るようである。まったく、見当違いなことを言っているのだ。
膨大な未竣工住宅問題が解決に向かえば、住宅不況に歯止めが掛かるだろう。さらなる価格下落を止められれば、家計資産の7割が不動産である中間層の消費マインドを好転させられるはずである。習氏は、こういう抜本策が財政赤字を増やすので拒否しているのだ。
目先の財政赤字拒否が、将来の中国経済の展望を奪っている形である。