食料価格の高騰が原因で、スリランカ、インドネシア、ペルー、パキスタンなどでは、すでに暴動や抗議運動などの社会不安が拡大している。これは、これから先、前例のないスピードで先進国にも襲いかかる予兆なのかもしれない。このような状況なので、近い将来日本でも本格的な食糧危機が起こり、我々の生活基盤が根底から覆されるのではないかという恐怖さえ感じる。我々の周囲でもさまざまな生活物資が急速に上昇するのを感じる。そのような可能性はあるのだろうか?(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年6月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
食糧危機は世界中で起こっている
読者の方から、「やはり日本でも食糧危機が近い将来起こるかどうか心配になる。ぜひリサーチしてほしい」というリクエストをいただいた。もっともな心配である。このメルマガでは2021年6月に一度食糧危機が日本で起こる可能性について取り上げているが、ウクライナ戦争で状況が根本的に変化しているので、改めて取り上げることにした。
国際的な食料価格だが、すでにウクライナ戦争前から高騰していた。最大の小麦生産国である中国は、昨年の雨で作付けが遅れたため、今年の作柄は過去最悪になっている。さらに世界第2位の生産国であるインドの異常気温に加え、アメリカの小麦地帯からフランスのボース地方まで、他の穀倉地帯でも雨不足が収量を圧迫する恐れがある。東アフリカでは、過去40年間で最悪の干ばつに見舞われている。
このような状況で起こったのが、ロシア軍のウクライナ侵攻であった。
小麦の世界的な生産国であるロシアとウクライナは、4億人を養うに足る食糧を生産し、世界で取引されるカロリーの12パーセントも占めると推定されている。ロシアには金融制裁が課せられているので、食料輸出の国際決済ができない状態だ。またウクライナは、小麦の中心的な輸出港である黒海沿岸のオデッサ港が機雷で閉鎖されているため、輸出が物理的に不可能になっている。
その結果、ロイター通信によれば、穀物類は69.5%、油類は137.5%、食品価格指数全体では58.5%上昇している。ウクライナ戦争、気候変動、コロナウイルスの流行によって悪化した食糧危機の結果として、3億2,300万人が飢餓に向かっており、4,900万人が文字通り飢餓の入り口にいる。
食料価格の高騰が原因で、スリランカ、インドネシア、ペルー、パキスタンなどでは、すでに暴動や抗議運動などの社会不安が拡大している。これは、これから先、前例のないスピードで先進国にも襲いかかる予兆なのかもしれない。
しかし、2023年はさらに暗い展開になる可能性がある。価格だけでなく、ウクライナにおける来年の作付けの失敗や、農家の年間コストの3分の1以上にもなる肥料価格の高騰といった構造的な要因によって、多くの人々が食糧に手が届かなくなり、世界はかつて考えられなかったような真の食糧不足を経験するかもしれないという暗い予測まである。