私はドイツに暮らして約6年になる。長く暮らしていて気づいたことの1つに、ドイツ人は「あまりものを捨てない」ということがある。
それは捨てずに溜め込むということを意味してはいない。リサイクルに出す、ということでもない。ではどうやって「捨てることを減らして」いるのだろうか。
衣類や靴から本、食器から家電まで
ドイツでは毎週日曜に大小さまざまなFlohmarkt(蚤の市)が開かれており、私の住む小さな街でもそれは例外ではない。
日本で見かけるフリーマーケットよりも、頻度も高く、規模も大きい印象だ。
アンティーク店だけではなく、家のものを整理する目的での出店も少なくない。
そこには衣類や本、子どもが使わなくなったおもちゃ、食器や家電のケーブルに至るまで実にさまざまなものが売られている。
こちらは蚤の市で購入して実際に使っている、JENA社製のフラスコ。調べてみると、東西ドイツ統一前の西ドイツでつくられたもののようだ。
時には戦前や戦中に作られたような古いものも売られているので、日本のビンテージショップなども買い付けに来ることがある。
手間をかけなくても「捨てない」ができる
また、蚤の市で出店するほどの量もなく、それほど手間をかけたくない場合でも「捨てる」という選択肢は取らないことが多い。
そんなときによくとられている方法が、「ご自由にどうぞ箱」だ。
特に住宅街を歩いていると、段ボール箱に本数冊や靴、食器などが入れられて家の塀のそばなどに置かれていることがよくある。
Zu Verschenken(ご自由にお持ち帰りください)と書かれていたり、何も書かれていなかったりもする。
家庭で不要になったものを欲しい人に渡す、手軽でミクロなリサイクルの形だ。
古いものを使い続ける文化
このような環境の中で「中古」を手にすることが増えて分かったのは、古いものでも意外と快適に使い続けることができるということだ。
食器類などは古くてもまったく問題なく使えているし、機械類や家具なども、適切にメンテナンスすれば使えることが多い。
実際、ドイツでは多くの人がメンテナンスや維持管理というものを進んでしているように思う。
現行の規格ではない古そうな自転車や昔の家具などが、手直ししながらきれいな状態で使い続けられているのをよく見かけるからだ。
私は近所にあった「ご自由にどうぞ箱」から裁縫箱を拾ったことがあるが、未だに全く問題なく日常の道具として使うことができている。
私のパートナーは第二次大戦中に作られたメガネを購入しレンズを入れ替えたところ、問題なく使用できたらしい。
お財布にも環境にも優しい選択肢
日本でもメルカリやジモティーなどのフリマアプリが普及して久しく、無印良品やユニクロなど、自社の商品を回収して新しくつくる製品の素材としてリサイクルするような取り組みも増えてきているように思う。
しかしながら、どうしても手間や送料がかかるのでなかなか生活に取り入れられなかったり、安価で耐用年数の短い衣類などは、売る前にダメになってしまうという声も友人たちから耳にする。
ドイツでの暮らしのなかで、使い古したら捨てたりリサイクルに出すという選択肢だけでなく、古いものをメンテナンスしながら使い続け、不要になったら手近な手段で次の所有者に引き継いでいくのも、環境へのポジティブな行為として取り入れていきたいものだと思った。
執筆・撮影:幸田詩織
Business Insider Japanより転載(2024.11.06)