『Sparrow』はMacとiPhone向けのGmail用アプリとして人気を誇っています。Sparrowの開発チーム(昨年、Googleに買収されました)は使い心地の良い、操作の楽しいアプリを実現しました。
Sparrowが開発されるまでのストーリー、直面した問題などを、創業者/CTOであるホア・V・ディン(Hoa V. Dinh)氏にインタビューしました。
Sparrowのアイデアはどのようにして思いついたのですか?
ホア・V・ディン:2004年以前、僕は自宅のサーバーをメールホストに使っていました。2004年頃はちょうどMacを使い始めた頃で、当時はAppleが作ったメールソフトに満足していました。自分のサーバーを管理するのに疲れてきて、ソフトウェアの開発に集中したいと思ったとき、すべてのメールをGmailに統合することにしました。その当時、結構なメールの量を保管できるのはGmailしかなかったので。ですが、MacのメールソフトはGmailにうまく対応していませんでした。メールの保管はできないし、ラベルの分類の仕方もおかしくて、動作がすごく遅かった。メール検索すると、コピーが見つかってしまうこともありました。そんなわけで、僕はMacのメールソフトを使うのをやめて、ウェブ上でGmailを使い始めました。デスクトップとの統合はできませんでしたが。
その後、2007年になって、iPhoneが登場しました。iPhoneにはメールアプリが搭載されていて、PC用のどのメールソフトよりもシンプルな作りでした。一方で、PC上で、メールを読むのにメールソフト以外に別のサービスを使う人もいました。メール通知サービスです。
この時点で、2つの解決すべき問題を見つけました。PC用に良いGmai用ソフトが必要であること、またそれをスマホのメールアプリと同じくらいシンプルに操作できるようにすべきということです。アイデアを思いついたあと、どのような行動をとりましたか?
ホア・V・ディン:プロトタイプといくつかの動作パターンを作って、すばらしいユーザーエクスペリエンスを実現する方法を模索しました。最初の目標は、僕自身が他のメールソフトの代わりに使えて、Gmailのサイトを開く必要もないと思えるほどのレベルを実現することでした。次にやったことは、何人かの親しい友人に、つくったメールソフトを使ってもらうことでした。実は、友人も僕もGmailのラベル機能を使っていなかったので、最初につくったベータ版にはラベル機能がないのです。幸いにも、ラベル機能をUIデザインの邪魔になることなく実装する方法を見つけることができましたが。
パリにあるSparrowのオフィスからの風景
ユーザーのターゲットをどのようにして決めましたか?
ホア・V・ディン:そもそも、僕は自分が使うことを目的に開発を始めました。ですので、ターゲットはMacです。Windowsは長いこと使っていなかったので、Windowsユーザーの期待するものがわからなかったのです。ですので、Windows向けの開発はしないことに決めました。開発中に直面した最も大きな問題は何でしたか? それをどのようにして乗り越えましたか?
ホア・V・ディン:一番の問題は、ほとんどのメールソフトが無料で、最初から全てのPCに搭載されていることでした。僕たちは、デフォルトのメールソフトの代わりにお金を出して買ってもらえるほど、本当にすばらしいものをつくる必要がありました。公開当初のことを教えてください
ホア・V・ディン:一般向けにベータ版を公開したときは、ダウンロード数やウェブへの訪問数が激増することは期待していませんでした。しかし実際には、アクセス数が多すぎて、サイトは使用できなくなり、即座に修正しなければなりませんでした。TwitterではSparrowの話題が数分おきに投稿されて、とても興奮しました。ユーザーから非常に良い反応があったのです。有名なテック系ウェブメディアでも僕たちの話題が上がっていました。パリでベータ版を公開したときのことです。最高の気分でした。ユーザーの要求や批判にはどのように対応していますか?
ホア・V・ディン:僕たちはTwitter上で来たフィードバックにはできるだけ早く対応するように心がけました。また、サポート用のメールを通じてユーザーの問題に対応しました。そうした対応は、ユーザーエクスペリエンスの一部であると考えます。ユーザーは自分の問題がすぐに解決されると満足します。ユーザーの問題に共通項を発見したら、時間をとって、その問題を解決する方法を考えるようにしました。Hoa氏の夜の仕事風景
現在は「新機能」と「既存機能」の開発に割く時間の比率はどれくらいですか?
ホア・V・ディン:公開までに与えられた時間に基づいて、2つのステップをとります。最初に、計画に沿って新機能を実装します。次に、数週間かけて既存機能のバグを修正したり、改良を加えたりします。そして、公開します。割く時間の比率は、新機能に75パーセント、既存の機能に25パーセントでしょうか。同じような挑戦をしたいと考えている人に対して、どのようにアドバイスしますか?
ホア・V・ディン:ユーザーエクスペリエンスは、見た目の美しいものを開発することではありません。ユーザーが満足して使えるものを開発することです。Tessa Miller(原文/訳:佐藤 ゆき)