あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』(濱田秀彦著、実務教育出版)の著者は、年間150以上の講演を行っているマネジメント、コミュニケーション研修講師。その豊富な経験から断言できるのは、「97%以上の部下は上司の期待を把握できていない」ということだといいます。さらに、上司が部下に期待することは大きく4つに分けられるのだとか。

  1. 職場のコミュニケーションについて、中心になるものは「報連相」
  2. ひとりのビジネス人としての言動(大人のビジネスパーソンでいてほしい)
  3. 仕事に進め方について(主体的にやってほしい)
  4. 意識の向上や能力開発について(自分で自分を高めて成長してほしい)

そして、「報連相」「大人力」「仕事力」「成長力」という言葉に集約して開設しているのが本書だというわけです。最も基本的な部分である第1章「信頼されて仕事を任されるようになるための『報連相』」(ホウレンソウ、報告・連絡・相談)から、いくつかを引き出してみたいと思います。

1.「義務」→「アピールチャンス」へのシフトチェンジ(16ページより)

上司への「報連相」には、どうしても積極的になれないもの。しかし「報連相は上司に対する義務である」という考え方を改め、「報連相は上司に影響を与えるツール」ととらえればいいのだと著者は言います。報告は上司に対するプレゼンと考え、簡潔にさりげなく自分の仕事の成果をアピールするというわけです。ちなみに会議の3日前の報告を心がければ、タイミングのよい部下と認められるのだとか。

2.すぐできる効果的な話し方(24ページより)

若い人だけでなくベテランのビジネスパーソンも含め、ストレートに意思表明しない傾向が強まっているそうです。しかしそれは、自社の意見を主張し合うような海外企業との交渉などではデメリットになるはず。そこで「私は」から話すように変えると、「話が明確になった」「メッセージが力強くなった」というポジティブな評価を得られるというのが著者の考え方。

3.先延ばしするほど深刻になる悪い報告(33ページより)

ミスは報告しづらいものですが、「言えない」状態が続けば続くほど状況は悪化していきます。問題をひとりで抱えているのが一番辛いからこそ、いま報告しにくい問題を抱えているならば、明日言うべき。それは、誰よりも自分のためになるからです。

4.短い中間報告が生む大きな効果(36ページより)

部下は目の前の仕事を完了させるのに精一杯で、報告は終わってからまとめてしようと思いがち。しかし上司は、部下が思っている以上に中間報告を求めているものだそうです。なぜなら上司にとっては、少々遅れていることよりも、どうなっているのかわからないことの方が困るから。そこで重要なのが、20文字程度の中間報告を心がけること。

5.上司はCCにない情報に価値を感じる(62ページより)

上司に逐一報告するかわりに、CCメールを送ることが一般的になっています。しかし上司は、今後に関する自分なりの構想など、CCで流しているメールに書かれていない情報を待っているものなのだそうです。逆にいえば、CCだけで上司と部下がマインドを共有することは困難。マインドが共有できていなければ土壇場で大きな問題が生じることにもなりかねないので、ときにはCCを補足する一言を加えることが大切だといいます。

このように本書では、具体的な対処法が50種紹介されています。実行しやすいものばかりなので、上司からの求めとそれについての対応に悩む人にはぜひ手にとってみてください。

(印南敦史)