著者はまず、「より多角的な視点で物事を考える思考のプロセス、結果に対するアプローチの仕方、知識の応用の仕方が本当の実力」であるという持論を提示します。そして、結果として「売上」などの結果を生み出すことになるその力こそが「知恵」であるとも。
『僕たちは知恵を身につけるべきだと思う』(森田正康著、クロスメディア・パブリッシング)は、そのような考え方を軸に、著者が「『これって知恵だよね』と思うことをあらゆる視点で書きつづってみた」書籍です。
本書では「才能を捨てる」「人気者になる」「うまく立ち回る」「人の上に立つ」など、さまざまな角度からの<知恵の活かし方>が紹介されています。それぞれが興味深い内容なのですが、特に実践的だなと感じたのは第4章の「アイデアを実現する」。ポイントを抜き出してみましょう。1.
「クリエイティブな仕事」には夢ではなく現実が詰まっている
『僕たちは知恵を身につけるべきだと思う』(107ページ)
クリエイティブという言葉を「人と違ったことをする」「自分のしたいことをする」という意味合いで使うこと自体が違うというのが著者の主張。それは手段であり、ましてや会社組織内で実現させるためには、売上と利益を出さなければならない。だからこそ、
- 本当にやりたいことがあるなら、目の前の仕事でも結果を出すこと
- 会社という組織の中で働くということを理解すること
- リスクを負わない人間にやりたいことはできないという前提を知ること
が大切だという考え方です。
2.
アイデア力とは、「他と違うこと」を思いつく能力ではない
(114ページ)
クリエイティブ力が目標を最短距離でクリアする能力なら、アイデア力とは「決定力」と「行動力」。そして「どれだけ斬新なことを言うか」ではなく、もっと大事なのは、
- どんな議論にするか
- どんな落としどころを作るか
だそうです。「どんなメンバーを集めてどんな議論をしたいか」を考えておき、ブレストを通じて何を生み出したいのかというあたりをつけておくべきだということ。
3.
今そこにあるニーズを追うというのは、小学生にもできる仕事
(122ページ)
「アイデアとは無から生まれるものではなく、あるものとあるものの掛け合わせで生まれる」。だからこそ、知識の読み込み方、検索力、いかに「見つけたいものを見つけられるか」が重要。その力を身につけるためには、
- ニーズを追わない
- 生きた知恵袋を見つける
- 世の中で起きていることをすべて自分のことだと思う
この3つがポイントになるそうです。
4.
必要なのは優れた結論ではなく人を納得させるプロセスである
(132ページ)
「いいアイデアを生むための秘訣は、メモしないこと」。なぜなら、寝ても覚めても強烈に覚えていて、情熱が残っていて、動きたくてたまらなくなるようなアイデアでないと実現は難しいから。そこで、
- 目的の設定の仕方を間違えないこと
- 失敗を恐れないこと
- 情熱的に人に伝えること
- 通らなかったら新しい案を考えること
- 実現したものが失敗したら、切り替えること
が大切で、さらに提案を伝える際には
- 数字的な根拠
- 感覚を言葉にすること
- 説明しすぎないこと
- 情熱
が欠かせないといいます。
「曖昧にしておこう」と考えがちなことに焦点を当て、そして見事に的を射ている内容だと思います。図星であるぶん耳が痛いと感じることもありますが、だからこそ役に立つ良書であるといえるのではないでしょうか。
本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。
(印南敦史)