ライフハッカー編集部様
突然ですが、自宅にレコーディングスタジオを作りたいと思っています。まだ機材もソフトも持っていません。しかも、お金もあまりないという状況なのですが、銀行強盗をしなくてもレコーディングスタジオを作る方法があれば、教えてください。
PN:貧乏ミュージシャン(Broke Musician)
貧乏ミュージシャンさんへ
質問ありがとうございます。レコーディングスタジオをつくるというのは、多くのミュージシャンにとって1つの目標となっているかと思います。ですが、録音用の機材やソフトはかなり高額なものが多いのが現状です。
ただ、それは最高の品質を求めて高額なものを選ぶ場合であって、さほど高くないものも多く存在します。自宅での録音環境を一通りそろえるだけであれば、数万円から始めることも可能です。もちろんいくつか制限はできますが、ライフハック能力を上手に駆使すれば切り抜けられます。
詳細に入る前に、まずは何を買う必要があるのか、見ていきたいと思います。以下は「買う必要のあるものリスト」ですが、不要なものやなんとかすれば無料で入手できるものがあるはずです。
- マイク
- オーディオインターフェース
- デジタルオーディオワークステーション(DAW)ソフト
- デジタルキーボード
- スタジオモニター
- ヘッドフォン
- ケーブル
このリストは、あなたが既にパソコンを所有していることを前提としています。録音やミックスをするのに最速のパソコンは必要ないですが、ある程度以上のスペックは必須です。Core iやCore 2シリーズのプロセッサーが搭載されているものであれば問題ありませんが、ネットブックではスペック不足です。
上記のリストにあるものすべてを買いそろえる場合、5万~6万円くらいの予算が必要になるかと思いますが、どんな音楽を録音するのかによって、不要となるものも出てきます。無料でどこからか調達できたり、中古で購入することなどによって安く済ませることも可能です。それでは、それぞれのオプションを見ていきましょう。
1. マイクスタジオで最も重要なことは音を録音することなので、マイクは最も重要なアイテムです。最近では1万円くらいから、それなりに良いマイクを購入できます。とりあえず何の変哲もないマイクで良いという方であれば、「Blue Snowball」のUSBマイクなら比較的安価でも、それなりのクオリティで録音が可能です。
とはいえ、この手のマイクは音楽用というよりはポッドキャスト用につくられているので、このマイクだけで全ての録音をするのには限界があります。しかし、「とりあえず1万円前後で」というのであれば、このあたりがリーズナブルです。
標準仕様のマイク用(+パソコンに接続するためのオーディオインターフェース用)にもう少しなら投資できるという方であれば、単一指向性のコンデンサーマイクがオススメです(通常ボーカルの録音用に使われるマイクで、他の用途にもある程度は臨機応変に使える種類のマイク)。「Studio Projects B1やAKG C2000B」、「MXL990」(値段的にはこれが一番お買い得!)あたりのマイクが最初の一本としては良いでしょう。メジャーどころのブランドで1万円弱~2万円の範囲で買えるものであれば、たいていは間違いないです。
2. オーディオインターフェース オーディオインターフェースはパソコンとマイク、その他の楽器をつなげるために必要なものです。スタジオモニターもここに接続します(スタジオモニターについては後述)。悪質なインターフェースは入力音の質を低下させてしまうので、あまり安すぎるインターフェースはオススメできません。安く済ませるのであれば。「Apogee Duet」などのインターフェースを中古で購入するのがオススメです(新品で買うと、これだけでも予算オーバーしてしまうくらい高価)。それよりも安い価格帯のものであれば、「Focusrite Saffire 6」あたりがグッドチョイスでしょう(amazonで15,790円)。低価格帯のものはオススメできないオプションがあまりにも多く、粗悪なオーディオインターフェースは他の機材の良さを台無しにする可能性があるので、他のインターフェースを購入する際には、レビューをよく読んでから決めた方が賢明です。
3. DAWソフトこれらの機材を使うにはソフトが必要となります。オーディオインターフェースを購入すると無料のものが付属していたりします。多くのインターフェースには 『Cubase LE』や『ProTools LE』、その他の人気ソフトのフリー版がついてきます。無料版でも録音、デジタル楽器の演奏、エフェクトの追加、ミックス作成などの一通りの作業は十分に可能です。他にもかなり安く入手できるツールから無料のものまで、たくさん市場に出回っています。Macであれば15ドル(1200円弱)の『Garageband』がミックス作成などには最適なオプションです。できることに限度があるように見えますが、実際使ってみると結構いろんなことができます。また、ミックスを初めてやる方には最適なエントリーツールです。また、クロスプラットフォームの『Sequel』もオススメのツールです。これは、 Garagebandより高価で80ドル(6400円弱)くらいとなっています。Windows用であれば『Reaper』が60ドル(4800円弱)で入手可能です。MacやLinux用のフリーツールでは『Ardour』、Windows用なら『LMMS』がオススメです(もちろんLinuxも)。
4. デジタルキーボードライブ演奏の録音以外は必要ないというのであれば、デジタルキーボードはおそらく不要です。デジタルキーボードの主な目的はシンセサイザーとして演奏する、または楽器をサンプル録音したものを再生すること。MIDIの打ち込みを行う場合や、ソフト上で生成できる音を追加したい場合の必須アイテムとなります。標準の大きさのピアノには鍵盤は88あるのですが、デジタルキーボードはピアノの代わりとして使うにはたいてい難しいので、大きさはさほど重要ではありません。ピアノのかわりとして使える楽器をお探しであれば、「YAMAHA P95B」などの高価な楽器がオススメです。これは鍵盤に重さがあり、感触もかなりリアルにできています。
鍵盤(けんばん)は大体49くらいあれば十分です。これであれば、1万円前後から購入できます。M-Audioの「Keystation 49」は値段を考えると良い選択肢かと思います。必要であれば61鍵、88鍵バージョンもあり、より小さいものがほしいのであれば、32鍵という選択肢も用意されています。このキーボードには華美な機能はついていませんが、ベーシックな入力を行うには十分です。
安い価格帯のものを買うのであれば、新品での購入がオススメです。キーボードの低価格帯のものはかなり安いので、中古になったところでたいした節約にはならず、この価格帯のものはあまり頑丈につくられていません。壊れかけの中古を買ってしまうというリスクを考えると、新品で買った方が安心です。4~5万円以上の価格帯になると、ある程度は丈夫にできているので、コンディションの良いものも中古で見つかりやすくなっています。 5. スタジオモニタースタジオモニターというとなんだか専門用語チックですが、ようするに音を聞くためのスピーカー一式です。しかし、普通のスピーカーとはちょっと違います。通常であればコンピュータ用のスピーカー一式を1本のケーブルでつなぎます。左右のスピーカーはケーブルでつながっていて、それをコンピュータに接続するステレオケーブルがあります。これらのスピーカーは低音がより強調されるようになっていたり、高音がシャープに出るようになっていたり、中音が抑えられ気味だったりと、再生される音に何かしらのフィルターを通すような工夫がされています。
つまり、コンピュータスピーカーで音を再生する場合は実際の音とは異なる音が出力されていることになります。映画を見たり、音楽を楽しんだりする場合にはそれでいいのですが、録音した音のミックスをする場合、スピーカーが録音されたそのままの音を素直に再生してくれた方が都合がいいです。よって、「スタジオモニター」そのままの音を出力してくれるスピーカーが必要となります。
スタジオモニターといえども、それぞれのスピーカーの出力傾向というのはある程度はあり、決してモニタースピーカーだからといって、すべてから同じ音が出るわけではありません。しかし、それなりのペアを購入すると、つくる音にもずいぶん差が出てくるようになるので、ミックスの重要さを考えると、あまり安いペアの購入はオススメできません。中古の場合、ダメージ具合がわかりづらいので、新品の購入をオススメします。低価格帯のものでのオススメは「Samson Resolv A6」です(日本で購入すると5~6万円程度してしまうようですが...)。他のモニターを探したい方は、アメリカのサイトで300ドル(約2万3000円)くらいで販売されているモニターが良いのではないでしょうか?
6. ヘッドフォン高級なヘッドフォンは何万円もしますが、もっと安いものでも十分です。スタジオモニターを購入する場合、ヘッドフォンはレファレンス(ミックスをモニターではなく、通常のリスナーが使う機器を使ってチェックすること)的な感じで使うだけになるので、さほど高いものは必要ありません。ヘッドフォンからの音を頼りにステレオミックスを仕上げるのは至難のワザなので、スタジオモニターを使ってミックスする方が格段に良いのですが、ヘッドフォンでやらなくてはいけない理由がある方であれば、価格帯が高めのものをオススメします。「HD555s」など、ゼンハイザー社のHDシリーズはかなりスグレモノで、価格帯もびっくりするほどは高くありません(1万円ちょっとより)。リファレンス用として使え、どうしても必要な場合にはミックスにも活用できます。もう少し高めを狙えるのであれば「HD25 IIs」がオススメです。
何度も言いますが、ヘッドフォンでのミックスはオススメしません。しかし、リファレンス用に良いヘッドフォンを一つ持っておくのは重要です。
7. ケーブル機材が増えると、それだけ配線の種類も手間も増えます。USBマイクのみですべてをまかなうというのであれば、マイクを買ったときに付属されているはずのUSBケーブル以外のケーブルは不要です。
しかし、オーディオインターフェースにする場合、マイク用には「XLRケーブル」、スタジオモニターやギターなどの楽器用には「1/4TSケーブル」が必要です。ケーブルの1本1本はさほど高くないですが、長くなるほど値段は上がります。断線したりする場合もあるので、資金の余裕があるのであれば、ケーブルの予備があるのが理想です。
■それから機材が手に入り、配線が終わり、ソフトウェアドライバをインストールしたら、DAWソフトをインストールし、新しいオーディオインターフェースとキーボードをソフトに認識させます。言われなくてもわかっているかもしれませんが、あなたはこれからミキシングのソフトの使い方を学んでいくことになります。図書館に行ってみると、オーディオミックスについての本が見つかるかもしれません。図書館にある本は情報が少し古い可能性も高いですが、基本的な知識は変わらないです。
また、「Lynda」のサイトなどでソフトの動画レッスンを受けてみるのも良いかと思います。若干お金はかかりますが、基本的な操作を覚えるにはかなり効率的です。
オーディオ機器の嗜好は人によりかなりの幅があります。それぞれの人にお気に入りのものがあり、かなりの数の優れた製品が市場に出回っています。なので、今回採り上げなかったものでオススメなどがあれば、ぜひコメントで教えてください。
お役に立てれば幸いです。
ライフハッカーより、愛を込めて。
Adam Dachis(原文/訳:まいるす・ゑびす)