2011年早々にも正式オープンか? とウワサされていた「Mac App Store」が、いよいよ開店しました。1000以上ものアプリケーションが配信されており、ワンストップで欲しいソフトウェアをゲットできる便利なプラットフォームです。

とはいえ、この「Mac App Store」にも課題がないわけではありません。開発ベンダーとユーザとの間に、「Mac App Store」が入ることによって、これまでの利便性が損なわれる可能性も...。特に気になる点として、以下の3点が挙げられます。

 1: アプリケーションの「買い直し」が必要になる

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購入済みのアプリケーションについて、「Mac App Store」での優遇はあるのでしょうか? 現時点での答えは「No」。

「Mac App Store」では、購入済みのアプリケーションについての更新はできず、「Mac App Store」のサポートを得るには、改めてアプリケーションを買い直さなければなりません。画像編集ソフト『Pixelmator(ピクセルメーター)』のように優遇制度を導入しようとしているものもありますが、まだほんの一部です。いまのところ、長年のMacユーザで、商用ソフトウェアをすでに購入してきた人にとっては、余分なお金を使わずに「Mac App Store」を活用するのは難しいでしょう。

2: 無料トライアルやベータ試用ができない

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多くの商用ソフトウェアでは、購入前に一定期間(30日間など)、無料トライアルできるようになっており、これによってユーザは「そのソフトウェアを買うべきかどうか?」を判断できます。また、ベータ版のリリースは開発ベンダーにとっては、バグの発見や改修ができるメリットがある一方、ユーザにとっても正式版リリースより一足早く、新しい機能を試せるメリットがあります。

しかし、「Mac App Store」からソフトウェアをダウンロードする場合、無料トライアルもベータ試用もできません。現時点では「Mac App Store」の制限のひとつとして、「トライアル」や「デモ」、「ベータ」といった分類が認められていません。iOS向けの「App Store」にも同様の制限がありますが、モバイルアプリは比較的安価なので、「ちょっと試しに使ってみたい」という程度でも、気軽に購入できますね。しかし、デスクトップソフトウェアは、これらに比べて高価ゆえ、無料トライアルができるほうが望ましいでしょう。もちろん、「Mac App Store」でも、機能制限した「Lite版」のリリースはありえます。

3: サポートサービスを得にくくなる

これまでは、開発ベンダーから直接アプリケーションをダウンロードし、彼らから直接サポートを受けられましたが、「Mac App Store」でApple社が「仲介人」として介在するとなると、ソフトウェアで発生している問題を、いつでも開発ベンダーが修正してくれるわけにはいかないかもしれません。たとえば、ソフトウェアのすべての更新には、Apple社の承認が必要なので、開発ベンダーは素早く更新版をリリースできなくなります。開発ベンダーとユーザの間にAppleが入ることで、トラブルシューティングなどがスムーズに行えなくなる可能性も...。

このほか「Mac App Store」で配信されるソフトウェアには、以下のような制限があります。

「アップグレード版」はNG

既存ユーザに割引価格でアップグレード版を提供するのは、有効なユーザの囲い込み策ですが、「Mac App Store」はこれを認めていません。有償アップグレード版としてリリースする場合は、完全に別のアプリとして提出せねばならず、すべての人に同じ価格で購入させるルールになっています。


バックグラウンドプロセスやログインアイテムはNG

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「Mac App Store」で配信されるアプリケーションは、終了後にバックグラウンドで走らせるコードを持つことが認められていません。たとえば、Appleの『FaceTime』以外のビデオチャットアプリを使いたい場合、これを手動で立ち上げ、開き、最小化しておかなければならないのです。


類似のユーザインタフェースはNG

プレ同梱されているAppleのプログラムと類似するアプリケーションは、認められていません。もちろん、ユーザにとって紛らわしいものは避けるべきですが、「似ている」、「似ていない」の基準は極めて曖昧です。開発ベンダーにとっても、ユーザにとっても、かえって混乱の元となるかも...。


ルート許可はNG

ユーザの同意があっても、ルート許可を求めることはできません。つまり、バックアップ用のソフトウェアなど、システムファイルへのアクセスが必要なことはできないのです。


他プログラムのダウンロードを要するプログラムはNG

他のプログラムのダウンロードを必要とするプログラムはNGとされていますが、この意味合いについても曖昧です。


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このほか、「Mac App Store」に関する疑問として、「無償ソフトやオープンソースソフトウェアはどうなるのか?」も気になるところです。実際、VideoLanは、Apple社のクローズドなモデルがGPLに違反する可能性があると主張しています。この問題について、両者は合意に至っていないとみられ、『VLC』もまだiOS向け「App Store」で配信されています。とはいえ、VideoLan同様、「ソフトウェアは無料たるもの」と考えている開発ベンダーは「Mac App Store」を避けるかもしれません

もちろん、今後も「Mac App Store」を使わずとも、ソフトウェアを入手する手段はあるわけですが、せっかく開店した画期的なお店なのですから、一般ユーザにとっても開発ベンダーにとっても、より便利でフェアなプラットフォームとして育っていってほしいですね。

みなさんは「Mac App Store」について、どのような感想をお持ちですか? 「すでに使ってみた!」という方の体験談など、ぜひコメント欄で聞かせてくださいね。

Whitson Gordon (原文/訳:松岡由希子)