私はかつて、お人好しでした。

友だちや家族から、「ニコル、そんなに他人の言いなりになるのはやめなさい」と言われるほどに。

でも、自覚はありませんでした。

お人好し(おひとよし)

何事も善意にとらえる傾向があり、他人に利用されたりだまされたりしやすいこと。また、そのさまや、そういう人物。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

私に言わせれば、自分がしてほしいことをしてもらうには、先に相手がしてほしいことをしてあげるのが当然だと考えていたからです。

相手を操作する意図があったわけではなく、「自分がYesといえば相手もYesを返してくれるだろう」という感覚です。

でも、30代前半で、人間関係ってそうではないと気がつきました。

人間関係は、お人好しでなくても良い

プライベートでは、当時のボーイフレンドが見たいというアクション映画を全部見たけれど、彼がタイタニックの再公開版(しかも3D!)に興味を持つことはありませんでした。

仕事では、上司や同僚にYesと言い続けることでだいぶ遠くまで来たものの、そこが自分の望む場所かというと、そうではありませんでした。

お人好しでは、自分に見合ったものを手に入れることができません。それを手にするには、Noという方法を学ばなければならないのです。

大好きな人に、Noと言える練習をしよう

ほかのあらゆることと同じように、この手の学習には練習が必要です。

Noの達人になると決めた私は、まずは極めて危険の少ないシチュエーションから始めることにしました。

たとえば、飲み会に参加できないことを知人に告げるときなど。

その結果、その知人から一生嫌われるようなことはなく、別の集まりで会っても問題ありませんでした

このように、Noを言っても不幸な結末の連鎖反応にはならないとわかってから、今度は親友にNoを言う練習に移りました。

それも問題ありませんでした。2016年に「今晩はタコスって気分じゃない」事件を乗り越えたことで、「毎年恒例のトモ旅に今回は参加できない」といった大きな決断もできるようになりました。

その後、両親にNoと言ってみました。親友よりも困難でしたが、やはり問題はありませんでした。

両親は、私のことを変わらずに愛してくれたのです。

そういえば私も、物心つく前から「No」を言われ続けながらも、両親を愛してきたのでした。

なぜ、こんな記事を書いているかって?

それは、先日Quartzで読んだ記事に、給料交渉などのリスクを伴う交渉に移る前に、自分を愛してくれている人との間で交渉スキルを練習すべきと書いてあったからなんです。

ロンドンビジネススクールのリーダーシッププログラムでトップを務めるJane Charltonさんは、学生の就職相談において、たとえNoという答えが予期されても、常に交渉すべきだといいます。

そのためには練習が必要です。場合によっては、意外なシチュエーションも利用しましょう。

たとえば、子どもと食事時間でもめたときや、パートナーと旅行先で議論になったときなどです。そこで得たスキルは、のちの上司とのミーティングにも必ず流用できます。

Noでドアが閉ざされることは少ない。むしろ、新しい機会が生まれる

私は今年、たくさんの人にNoと言わざるを得ませんでした。

また仕事では、リスクを伴う交渉がいくつかありました。それらすべてにおいて、この5年間の練習が大いに役立ったのは言うまでもありません。

そうやって自分のしたいこと、大切にしていること、見合うことのために立ち上がることで、2つの教訓が得られました。

  • 1つのシチュエーションにNoと言っただけで、ドアが永遠に閉ざされることはまずない。友達は友達のまま、家族は家族のまま。仕事の関係者も、一緒に仕事を続けてくれる。
  • 特にキャリア関係で顕著だが、やりたくないことにはNoと言うことで、チャンスが減るのではなく、むしろよりよいチャンスを見つけるための余地が生まれる

もちろん、与えられた仕事に全力を尽くさなければならないシチュエーションも存在します。

たとえば私は、大学を卒業したあと、お金のためだけにテレマーケターとして数カ月働きました。

ときには、何を言われてもYesと答えるスキルも必要です。でも、ある段階から、Noと言うスキルのほうが重要になってきます。

Noと言うスキルを「win-win」スキルに

最後にもう1つ、見識を紹介させてください。

私は今年ようやく、Stephen Covey氏の「7つの習慣」を読みました。

そこで初めて、Noと言うスキルを「両者を満足させるwin-winなシチュエーションを見つける」スキルに進化させる必要性を感じました(「win-winを考える」は第4の習慣です)。

多くの人が、「どちらか一方」で考えがちです。

自分はいい人なのか、それともタフなのか。

win-winのためには、両方であることが必要です。それは、勇気と配慮をバランスさせる行為なのです。

面白いことに、win-winのシチュエーションは、私がかつてお人好しになることで達成できると考えていたものとよく似ています。

ただし、独りよがりに見返りを求めるのではなく、誠実さと協力から生じる点だけが異なります。

このスキルについては、まだ習得中の段階です。

でも、かつてNoと言える方法を学んだときと同様、プライベートでも仕事でも、必ず自分の役に立つと考えています。

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Source: Quartz

Image: Unsplash

Nicole Dieker - Lifehacker US[原文:What I Learned From Learning How to Say No