お正月写真だったり、Facebookのプロフィール写真だったり、履歴書用の写真だったりと、自分の顔写真やポートレート写真を撮る機会は意外に多いものです。どんなカメラでも使える、上手にポートレート写真を撮るためのコツや、DIYトリックを今回は紹介してみたいと思います!
ポートレート写真は、実は写真のカテゴリーの中でも難しい方に分類されます。人の顔というのは、その瞬間その瞬間で変わり続けるので、難しいのです。ベストショットを撮るためにはある程度の忍耐と技術が必要となりますが、基本を押さえておけば、ポートレート写真のクオリティーはぐぐっと上がります。
今回採り上げる内容の概要は下記の通り:
- 撮影場所の奥行きを活用し、被写体に焦点を当てながらも背景をぼかす。デジタル一眼レフをお持ちの方で50mmや85mmのプライムレンズを使っている方であれば、特にこの方法は効果的です。
- 写真の構成を考え、目線の方向に注意します。また良いポートレート撮影の為には面白い設定が不可欠です。
- 写真の最終型がカラーであろうと白黒であろうと、色合いをちゃんと考慮すること。自然光での撮影、照明器具を使っての撮影問わず、照明がちゃんとしていることを確認する。
- 被写体を楽しい気分にさせ、集中しながらも笑顔で居られる状態を保つこと(撮影したいのが笑顔の写真ではない場合を除く)。
■カメラとレンズ
性能の良いカメラであれば、それだけオプションの数も多くなり、ポートレートの質を上げるためにできることも多くなりますが、いたってベーシックなコンパクトカメラでも、十分に良い写真を撮影できます。いずれにしても、デジタル一眼があればその分オプションが増える、というのは事実です。今回は、コンパクトカメラとデジタル一眼とではできることが違うので、別々に説明してみたいと思います。
デジタルカメラの場合、センサーは大きいほど便利です。センサーが大きいものの方が空間の奥行きをより再現出来ます。コンパクトカメラに搭載されているセンサーは大抵小型なので、このセンサーで空間の奥行きをとらえたい場合、ズームを目一杯使うことが最も効果的です。
被写体に向かってズームインしていくと、空間が平面化されてきます。空間の奥行きが浅くなり、フォーカスされている部分が少なくなってきます。この特性を生かせば、被写体のみにフォーカスを当てることが可能です(この理由に関してはこの記事の範疇を超えているので説明は割愛)。大型なセンサーの搭載されたカメラを買わずにこの効果を得るには、これが唯一の方法です。拡大ズームを目一杯使うと、写真がブレやすくなります(特に手ブレ防止機能が付いていないカメラの場合)。手ブレ防止機能の付いていないカメラの場合、ブレない写真を撮るのはなかなか困難なので、三脚の使用をオススメします。
デジタル一眼レフを持っている方であれば、まず、どんなレンズを使用するかが重要となってきます。ポートレート写真用には、50mmよりもワイドなもの(50mmよりも数値が低いもの)は避けた方が良いでしょう。通常は50mmを使用します(時によっては35mmの場合も)。これは、50mmが人間の目に映るものと大体同じだからです。これらのレンズは絞りが広く、光を多く取り込みます。よって、比較的光が少ないところでも撮影可能で、さらに、空間の奥行きを浅く撮ることが可能です。ここでの問題は、デジタル一眼レフの50mmレンズは50mmレンズとは限らない、ということ。これはカメラのセンサータイプによります。
デジタル一眼レフのセンターは大きく分けて二種類あり、APS-Cとフルフレームに分けられます。フルフレームセンサーは35mmフィルムのものとほぼ同等なので、フルフレームセンサーのカメラに取り付けられた50mmレンズは、正確な意味での50mmレンズとなっています。最近のデジタル一眼レフで、価格帯が20万円以下くらいのものであれば、APS-Cが主流となっています。これはフルフレームよりも少し小型で、レンズイメージを1.6倍に拡大します。つまり、APS-Cセンサー付きのカメラで50mmレンズを使用した場合、80mmレンズを使っているのと基本的に同じ、と言えます。
APS-Cセンサーカメラで50mmレンズ風の写真を撮る場合、28mmレンズ(44.8mmに拡大)、または38mmレンズ(56mmに拡大)が必要となります。50mm前後で絞りが少なくとも、f/2.8(理想を言えばf/1.8以下)のものであれば大丈夫です。ポートレート用には50mmレンズが一般的ですが、85mm以上のレンズを使うカメラマンも多くいます。結局のところ、どれが自分にとって一番良いか、状況に最適かというのは、やってみないと分かりません。ポートレートであれば、なんでもかんでも50mmが最適というわけでは決してありません。いずれか一つを選ぶのであれば、特に予算が限定されている場合は、50mmがオススメです。50mmプライムレンズ、つまり50mmで固定されズームイン、ズームアウトが行えないタイプのものが最安のレンズなのですが、奇妙なことに一万円近くも通常安いこのレンズが、一番綺麗な写真を撮影してくれたりします。
予算が厳しいから、できれば一番安いものを...というのであれば、古いレンズを試してみてください。フォーカスや色などの不完全さが、時に上の画像のような興味深い写真を写してくれたりします。
●空間の奥行きを浅くする際の注意点
空間の奥行きを浅くするテクニックは、被写体を際立たせるにはとても効果的ですが、浅く取りすぎてしまった場合、被写体の一部がボケてしまう危険性もあります。オートフォーカスの場合、カメラから一番近い顔の部分にフォーカスする傾向があり、鼻の部分がフォーカスされることが多いです。ビューファインダーやLCD画面で見る限り、フォーカスされているように見えるかもしれませんが、パソコンの画面で確認すると目の部分がうまくフォーカスされていない、ということになりがちです。マニュアルフォーカスすると、顔のどの部分にフォーカスを当てるかが調整できるので、それがベストですが、難しい場合は絞りを若干遅めに設定して下さい。絞りをf2.8にセットしておくと、被写体の顔全体がフォーカスされつつ、背景を上手くぼかせます。
■構図とテクニック ●構図標準的なポートレートの構図は人物の顔の写真なので、分かりやすいかとは思いますが、その中でもいくつかルールやコツがあり、望んでいる写真をうまく撮影するために活用できます。
初心者向けの写真教室などに通うと、通常最初に習うのが三分の一の法則です。これは、フレームを縦横それぞれを三分割して考える、とてもシンプルな法則です。上の写真の例を見てもらうと分かるように、これにより9つのボックスができ、これらの線は4カ所で交わります。これらのボックスをガイドラインとし、被写体の目をどこに置くかを選んでいきます。上の線が交差するあたりに鼻根部(星印の辺り)を配置するのがベストと言われています。これにより、写真を見る人の目線は顔の中心へ向かいます。可能であれば、鼻根部と交差しているポイントの下と、被写体の唇が交差するようにし、目線を顔の主要パーツへと保つようにします。良いポートレートを撮影するために三分の一の法則は必須、というわけではないですが、見せたい部分を見せるには効果的な方法です。
最近ではカラーが主流ですが、あえて白黒にするというのも効果的です。最終的にカラーにする場合も白黒にする場合も、それぞれの色が持つ効果については注意を払う必要があります。上の画像の例を見てみて下さい。例えば、被写体の肌が白く、髪が金髪などの場合、暗めの背景がコントラストを生み出すので、効果的です。カラーで撮影する場合、被写体とケンカしない色を選ぶことが重要になります。色白の金髪の被写体の場合、黄色と赤が立つので、青や緑などの背景が良いです。あえて目の色と背景を同じ色にし、目をより際立たせるのもありです。いずれにしても複数のオプションを試し、でき上がりを見ながら最終決断を下していきましょう。これらの色合わせについてもっと知りたい方は、撮影用のベストカラーの選び方(英文記事)を読んでみて下さい。
カラーの場合だと問題になりにくいのですが、白黒に変換した際、背景にある暗い部分を考慮する必要があります。被写体に若干バックライトを当てると、背景から被写体を分離可能です。ちゃんとした照明機材がない場合、ケンカしそうな色合いのアイテムは避けましょう。影によって被写体の顔の一部が見えなくなったり、その他の要素と混ざってしまったり、というのをわざと行う場合以外は、なるべく顔をはっきり写すのがポートレート写真の鉄則です。背景に気を配るだけでも、写真の仕上がりはずいぶん変わってきます。
カメラを被写体に向け、顔だけを正面から撮影するのは言ってしまえば簡単です。それほどバリエーションもないので、これだけでもエレガントな標準的なポートレート撮影は可能なのですが、もう少しクリエイティブなモノを撮影したい場合、例えば、被写体に上目遣いでカメラを覗いてもらうなど、色々なオプションがあります。
ポートレートによっては、被写体がカメラを直視しないのも良い手法です。
さらには小道具を使って、遊び心いっぱいの構図を作り上げるなんて手も。
はたまたシチュエーションを変えてみるというアイデアも。
良い写真を撮るにはやはり試行錯誤が不可欠です。想像力を働かせてクリエイティブな写真撮影を試してみて下さい!
●基本照明
ポートレート撮影用の照明は、比較的シンプルです。顔に芸術的な影を落としたいなど、変則的なことをしないのであれば、大体同量の光を顔に当てることで不自然な、または邪魔な影を排除すれば良いでしょう。特定の状況では、照明によってできる被写体の影が、写真の構図に影響を与えてしまう場合もありますが、背景から離れた状態で背景をボカすという撮影方法の場合、これについてあまり心配する必要はありません。かといって、顔に直接照明を当てていればいい、というわけではもちろんありません。これだと、鼻などの影が出てしまいがちで、被写体も光で何も見えない状態なので、なかなか自然かつ素敵な笑顔を作りづらくなります。ポートレート撮影定番の照明方法は下記です。
この設定の場合、左手のメイン照明が被写体を照らし、残りを図の右上にあるフィルが照らすようになります。後方にある照明はそのままですが、「バックライト」と呼ばれます。バックライトは強い光である必要はなく、被写体の輪郭を背景から切り分ける働きをします。
この照明は、被写体に当たる光のほとんどを司るので、一番明るい照明である必要があります。プロ用の機材で1Kくらい必要、というわけでは決してありませんが、プロ用の機材がない方も、できる限り明るくして下さい。直接光を当てると当然のことながらかなり眩しいので、必要に応じて白い傘やパーチメント紙を使うなどして、光を和らげましょう。パーチメント紙はオーブンの温度でも平気な紙なので、照明くらいの熱ではびくともしません。また、ワックスがついていないので、何かが溶ける心配もありません。
使い方も簡単で、パーチメント紙をクリップで留めてやるだけです。電球を直にさわることは避けたいところですが、光を通し易いようにできるだけ近づけましょう。紙を通すことで光が加減され、柔らかくなります。全ての影をなくすのではなく、被写体の顔がはっきりと分かるのに十分で、不要な影が出現しない程度が目安です。
※注 照明器具はとても熱くなるので注意して下さい。必要な場合は手袋を使用するなどして、やけどには十分気を付けて作業して下さい。バックライトはとてもシンプルなコンセプトです。必要なものは照明を反射させる白板パネルのみ。それを直立させ、被写体の横に配置することにより、被写体の顔の反対側にも光が当てられ、顔全体への光が均等化されます。メイン照明よりも弱めの照明を使用しても良いですが、大抵は白板パネルで十分です。
バックライトは、被写体と背景を切り分ける場合に必要なものなので、他の2つの照明よりも光を弱くします。極端に言うと、被写体に後ろから光が当たっていれば良いので、光はちょっとで十分です。背中全体である必要はなく、顔を撮影する場合であれば、後頭部の部分にちょっと当てれば良いです。特に和らげる必要はありませんが、強すぎる場合は、パーチメント紙を使いましょう。
ポートレート撮影について説明しようとするとキリがないので、今回はここら辺までにしておきます。とりあえず始めるには十分な情報量だと思うので、ぜひ試してみて下さい! プロの方や写真が趣味の方で補足等があれば、ぜひコメントでお聞かせ下さい!
それではハヴァナイスシュート!
Adam Dachis (原文/訳:まいるす・ゑびす)