ダイバーシティダイバーシティ

トランスジェンダーの8割がカミングアウトしていない事実。LGBT当事者が職場で直面する困難をまとめました。

「LGBT当事者は職場でカミングアウトすべき?」

「職場にLGBTだとカミングアウトする際に気をつけることは?」

上記のような疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。

 

厚生労働省の「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」では、職場の1人でも自身が性的マイノリティであることを伝えている割合が発表されました。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルでは7.9%、トランスジェンダーでは15.8%という結果に。残り8割のLGBT当事者は職場にカミングアウトしていないとわかります。

 

今後の働き方を考えると、カミングアウトするかどうかは大きな悩みでしょう。この記事ではLGBTについて解説するとともに、当事者が職場でカミングアウトするメリットやデメリットについて紹介。職場にカミングアウトする前にやるべき準備や心構えも解説します。

 

悩みを抱えたLGBT当事者が相談できる窓口も紹介しますので、LGBT当事者が職場で抱える問題について知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。

 

目次

LGBTとは性的少数者の総称

LGBTとは、性的少数者の総称で、アルファベットの頭文字をとったものです。性別の感じ方を表す性自認や、恋愛感情を示す性別を表す性的指向などの要素で構成されています。LGBTの意味は以下のとおりです。

  • L(レズビアン)
  • G(ゲイ)
  • B(バイセクシュアル)
  • T(トランスジェンダー)

レズビアンとは女性同性愛者で、自分の性を女性と認識し、女性を好きになる人のことを指します。ゲイは男性同性愛者を指し、自分の性を男性と認識し、男性を好きになる人のことです。バイセクシュアルは両性愛者とも呼ばれ、女性男性問わず恋愛対象ととらえます。

 

トランスジェンダーは少し複雑で、生まれたときの性別と、自分の感じている性別が異なる人を指します。例えば、男性の体で生まれてきたけれど、心は女性である場合です。トランスジェンダーには、性自認を男女いずれかに限定しないXジェンダーの人も含まれる場合もあります。

 

最近ではLGBTQと表現されることも多くなった

最近では、LGBTにQを加え「LGBTQ」と表現されるようになりました。Qには「クィア」「クエスチョニング」の2つの意味が含まれています。

 

「不思議な・風変わりな」などの意味を持つ「クィア」は、もともと同性愛者を侮辱した言葉でした。そのうち性的マイノリティの人たちが自分たちを表す言葉としてあえて使用し、広く使われるようになりました。

 

「クエスチョニング」は、性自認や性的指向を決めていない人や、性自認や性的指向が決まっていない人などを指します。さまざまな意味を持つQを付け足し、幅広い意味での性的マイノリティを表すようになったのです。

 

LGBT当事者のカミングアウトについて

カミングアウトは、性自認・性的指向を打ち明けること

LGBT当事者が使うカミングアウトは、自分の性自認や性的指向を、周りの人に打ち明ける行為を指します。「カミング・アウト・オブ・ザ・クローゼット」を省略したもので、欧米の同性愛者の間で使われていた言葉といわれています。

 

LGBTの人がカミングアウトを行う相手は、親しい友人や家族、学校や職場など対象がさまざまです。伝える目的や相手により、どこまで話すかも変わります。例えば、家族に話す場合は気持ちの深いところまで話せるかもしれません。性自認に基づき制服やトイレの利用で配慮を求める場合は、上司にだけカミングアウトするケースもあるでしょう。

 

LGBTが抱える問題

LGBTが抱える問題の一つに、当事者以外には、表面化しづらいという点が挙げられます。

LGBTの方は、周囲に受け入れてもらえなかった場合などを想定して、家族や友人など、周囲にカミングアウトしていない方が多くいます。カミングアウトをしていないと、悩みを周囲に相談することができず、一人で抱え込んでしまう場合があります。

LGBT当事者が、悩みを相談できる人がいない、ということが問題です。

ではカミングアウトをすることで、このような問題は解決されるのでしょうか。
下記で、カミングアウトすることによるメリットについて、お伝えします。

 

暮らしやすい社会に!LGBT当事者が職場でカミングアウトするメリット

LGBTを職場でカミングアウトしている人は2割弱です。少数ですがカミングアウトする人がいるのは得られるメリットがあると推測されます。ここでは「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」を参考に、LGBTが職場でカミングアウトするメリットについて3つ紹介します。

 

 LGBTをカミングアウトするメリット1  隠す必要がないことでストレスが軽減する

LGBTについてカミングアウトする大きなメリットは、周りに隠す必要がなくなりストレスが軽減することです。生まれたときの性別を無理に演じず、自分らしく働けるためです。

厚生労働省の調査では性的マイノリティであることを伝えた理由の第1位は「自分らしく働きたかったから」でした。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルでは45.2%、トランスジェンダーでは62.5%という結果に。

自分の性自認や性的指向を隠すと、本来の自分を出せずにストレスが溜まる場合もあるでしょう。セクシャリティを偽って働きたくない気持ちから、LGBTだとカミングアウトする人が多いと考えられます。

 

参照:厚生労働省委託事業 「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」

 

ある調査によれば職場で働く方の8%は性的マイノリティーの当事者とされているらしいんだコメ!何気ない社員同士の言動によって力を発揮できなかったり、精神的に負担があるのは悲しいことだヨネ。

それはあってはならないことだから、公明党は参院予算委員会などの場でパワハラ防止や性的指向などを理由に職場で不利益を被ることがないよう是正を求め続けているんだよ。

 

LGBTをカミングアウトするメリット2   周囲とより親密な人間関係を築くことができる可能性がある

周囲とより親密な人間関係を築く可能性があるのも、LGBTをカミングアウトするメリットのひとつです。より自分を理解してもらえる可能性を狙い、性自認や性的指向を打ち明ける場合もあるでしょう。

 

厚生労働省の調査では、職場でLGBTであると伝える相手は、上司や同僚、部下の割合が高い結果でした。人事部などへのカミングアウトが低いことから、より身近な人に伝え理解してもらおうと考える人が多いのでしょう。

 

LGBTをカミングアウトするメリット3    制度の活用・制度の変更について交渉しやすくなる

LGBTのカミングアウトで、福利厚生などの制度活用や変更について交渉しやすくなるのもメリットです。福利厚生制度や休暇など同性カップルにも適用される可能性があります。

 

企業には、結婚休暇や家族手当など配偶者に適用される福利厚生制度があります。しかし、内容が女性の配偶者を対象とした制度であるなど、LGBT当事者が利用しにくい場合も多い傾向です。

 

自治体でもパートナーシップ制度で、LGBTのカップルが公的支援やサービスを受けられるよう配慮しています。経団連や連合などで、福利厚生を同性パートナーにも適用する方針が取られており、企業側も柔軟な対応が求められています。

 

LGBTなど、多様な人材が働く時代です。カミングアウトをきっかけに、福利厚生について交渉してみると受け入れられるかもしれません。

 

 

だから言いにくい?LGBT当事者が職場でカミングアウトするデメリット

LGBTのカミングアウトで得られるメリットがある一方、働きにくくなる可能性もあります。ここでは、カミングアウトにより考えられるデメリットを3つ紹介します。

 

LGBTをカミングアウトするデメリット1  ハラスメントを受けてしまう可能性がある

LGBTのカミングアウトで、ハラスメントを受けてしまう可能性があります。周囲の理解が得られず、受け入れ態勢も整っていない状況が原因でしょう。

 

例えば、性同一性障害の人に行ったアンケートには、性自認をカミングアウトしても認められず、セクハラやパワハラを受けたケースがあります。同僚の理解は得られたとしても、経営側が受け入れてくれずいやがらせを受けたケースも。

 

ハラスメントによるストレスで、心身の状態が悪くなり退職したLGBT当事者もいます。待遇改善を願いカミングアウトを行っても、周囲の理解がなければリスクの高い行為になるのです。

 

LGBTをカミングアウトするデメリット2   アウンティングを受けるリスクが高まる

性自認や性的指向のカミングアウトにより、アウンティングを受けるリスクが高まります。

 

アウンティングとは、自分が望んでいないのに他人が勝手にカミングアウトしてしまう行為です。性同一性障害の人に行ったアンケートでは、仕事をする上で直属の上司にだけカミングアウトしていたのに、アウンティングが行われたLGBT当事者もいました。

 

アウンティングにより、LGBT当事者が精神的苦痛を受け、裁判に発展したケースもいくつかあります。自分の性的マイノリティについて話すのはとても勇気がいります。他人が勝手に当事者であると触れまわったのでは、周囲へ失望し働く意欲を奪ってしまうでしょう。

 

LGBTをカミングアウトするデメリット3    人間関係がギクシャクしてしまうかもしれない

LGBTのカミングアウトにより、人間関係がギクシャクしてしまうかもしれません。性的マイノリティを持つ人と触れ合う機会が少ないため、周囲もどう接していいのかわからないためです。

 

調査では、社内に性的マイノリティがいることの認知について調べた結果「いないと思う」が41.4%「わからない」が29.9%でした。7割の会社員がLGBT当事者がいないと考えているのがわかります。

 

共に働く仲間が突然LGBT当事者だとカミングアウトしたら、どのように接したらよいか悩む人もいるでしょう。特に小規模な会社でのカミングアウトは、理解してもらうのが難しいかもしれません。

 

職場にカミングアウトする前に必要な3つのこと

LGBT当事者だと職場にカミングアウトするには、事前の準備が大切です。ここでは、職場にカミングアウトする前に準備することを3つに分け、詳しく紹介します。

 

会社の姿勢を理解しておこう

カミングアウトする前に、LGBTに対する会社の姿勢を理解しておきましょう。カミングアウトで周囲の理解が得られる環境かチェックするためです。

 

ポイントはLGBTにフレンドリーな取り組みをしているかです。LGBTに配慮し、就業規則などで性自認や性的指向に対する差別禁止を明文化している企業もあります。制服や福利厚生、休暇などの制度が、性的マイノリティにも配慮しているか確認しましょう。

また、LGBT当事者が相談できる窓口を設置している企業もあります。ダイバーシティを意識した取り組みをする企業なら、カミングアウト後の理解を得やすいでしょう。

 

みんなが理解し、受け入れてくれるとは限らないと心づもりをしよう

カミングアウトをみんなが理解し、受け入れてくれるとは限らないと考えましょう。人の価値観は、すぐには変わらないからです。

 

カミングアウトに理解を示し、LGBT当事者が働きやすいよう配慮できる人もいれば、理解できず距離を置く人もいるでしょう。研修で性自認や性的指向の基礎知識を啓発する企業もありますが、性に対する考え方はすぐに変わらないかもしれません。

 

理解してもらえなくても、ハラスメントなど直接的な影響がなければ距離を置くのがお互いのためです。身近な信頼できる人がわかってくれたらOKと考え割り切りましょう。

 

全員に知ってもらう必要はない!知っていて欲しい相手の範囲を決めておこう

自分の性自認や性的指向について、知っていて欲しい人に的を絞りカミングアウトする相手を選びましょう。プライベートな問題なので、仕事上必要な人だけに伝えるのがよいでしょう。

 

カミングアウトは集団に対してではなく、1人ひとりに行う場合もあります。例えば、性同一障害のホルモン治療で通院が増えると直属の上司にのみ伝えたり、親しい同僚に伝えたりするケースも。

 

仕事上必要な場合や親密度により、カミングアウトする人を絞ると理解してもらいやすいでしょう。

 

悩んだ時は一人で悩まないで。専門家に相談できる窓口をご紹介

相談窓口のひとつに東京都総務局人権部の「Tokyo LGBT相談 専門LINE相談」があります。性自認や性的指向についての悩みや不安を、経験豊富な相談員に打ち明けられます。以下のホームページから登録できるので、上手に活用しましょう。

 

Tokyo LGBT相談 専門LINE相談https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/page/lgbt_soudan2.html

 

カミングアウトは無理にしなくてもいい。相談できる窓口や身近な人を見つけていこう。

LGBTのカミングアウトで、自分らしく働けたり福利厚生などの制度が利用しやすくなるのがメリットです。しかし、ハラスメントやアウンティングにより環境が悪化する可能性もあります。

 

カミングアウトする前には、LGBTに対する企業の姿勢や対応をチェックし、受け入れる土台があるか確認しましょう。業務上伝えた方がよい上司や親しい同僚など、カミングアウトの相手を絞るのもよいでしょう。

 

会社の理解が得られにくい場合は、性自認・性的指向に関する相談窓口もあります。専門家に相談し、解決策を見つけていきましょう。

 

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