ダイバーシティ
バリアフリーの必要性。高齢者・障がい者が安心して暮らせる社会へ
駅構内で見るスロープや段差がないバス、点字ブロックを見かけたことはありませんか?
これは、すべてバリアフリーに当てはまります。
バリアフリーは、高齢者や障がいのある方を含むすべての人々が社会生活を送る上でのバリア(障壁)を取り除くという重要な概念です。
日本社会の急速な高齢化と共に、その重要性はますます高まっています。
年齢や障がいの有無にかかわらず、すべての人が平等に社会生活を送れるようにすることが目的であり、私たち一人ひとりが理解を深めることが大切です。
本記事ではバリアフリーとは何か、また企業が取り組む事例について幅広く解説していきます。
バリアフリー社会の重要性
バリアフリー社会とは、理想のビジョン達成の過程にある障壁が取り除かれた社会のことです。
障がい者や高齢者など限定的な話題ではなく、豊かさを実感するために目指すべき理想の社会ビジョンを指します。このバリアフリー社会の実現は、すべての人が平等に社会参加できる環境を整えるために不可欠であり、行政・企業・市民が一体となって取り組むことが求められます。
法整備や補助金制度の充実・企業の社会的責任(CSR)活動の推進、市民の理解と協力など多方面からのアプローチが必要です。また教育現場でのバリアフリー教育も重要で、幼少期から多様性を尊重する心を育むことが、将来的なバリアフリー社会の基盤となります。
このようにバリアフリー社会の実現は、すべての人々にとって暮らしやすい社会を創造するための重要な取り組みです。
バリアフリーとは?その概念と目的
バリアフリーとは、多様な人々が生活の中で不便を感じたり障壁になったりするバリアを無くすことです。
参照:政府広報オンライン
この考え方は障がいのある人もない人も、誰もが不便さを感じることなく生活できる環境づくりを目的としています。
バリア(障壁)は以下の4つが挙げられます。
バリア | 説明 | 具体例 |
物理的バリア | 利用者に移動面で困難をもたらすこと | エレベーターのボタン位置が高い
など |
制度的バリア | 社会ルールや制度で障がい者の能力以前の段階で機会の均等を奪われていること | 盲導犬の入店拒否
など |
文化・情報面でのバリア | 情報の伝え方が不十分で必要な情報が平等に得られないこと | 点字・手話通訳のない講演会
など |
意識上のバリア | 周囲からの心ない言葉、偏見や差別を受け障がいのある人を受け入れられないこと | 点字ブロックの上に立っている
など |
参照:政府広報オンライン
これらのバリアがどのような場面で発生しているかを具体的に理解し、解決策を講じることが大切です。
またバリアフリーの考え方は特定の人々のためだけではなく、社会全体の利便性向上にもつながります。例えばエレベーターの設置は、車いす利用者だけでなく、ベビーカーを押す方や重い荷物を運ぶ人にとっても有益です。
バリアフリーの概念を理解し実践することで多様性を尊重し、誰もが生き生きと暮らせる社会の創造につながるでしょう。
高齢化社会と障がい者支援の観点から見たバリアフリーの必要性
国土交通省が行ったアンケートによると、バリアフリーの必要性を感じている人は97%という結果がでています。
しかし現状満足していない人は75%と、バリアフリーに満足できていない人が7割を超えている現状です。
以下のようなケースで、バリアや不便を感じるという声も。
- 移動面の困難がある
- 分かりにくい案内や難しい言葉で状況が理解できない
- 車両とホームの段差が多い、またスロープがない
- 点字ブロックが破損している
- 多機能トイレがない
これらの内容から生活・社会における不便を解消するためには、バリアフリーが必要といえるでしょう。
公明党は「バリアフリー化の街づくり」を重点政策に掲げ、1994年からさまざまな成果を挙げています。
国土交通省の集計結果によれば、2021年度末時点で整備が実現している駅や空港などの施設は、段差解消で93.7%、点字ブロック設置で96.9%にアップ。
少しずつバリアフリー化は進んでいます。
バリアフリーの普及が社会全体に与える影響
バリアフリーの普及は社会全体に多面的かつ広範な影響を与え、包括的で持続可能な社会の実現に寄与します。
主要な影響は、以下の5つです。
影響の種類 | 内容 |
社会参加の促進 | すべての人が日常生活や社会活動に参加しやすくなる |
生活の質向上 | 誰もが利用しやすい環境整備により、不便が解消され生活しやすくなる |
意識の変化 | 物理的バリアの改善だけでなく、「心のバリアフリー(多様性)」を受け入れやすくなる |
安全性の向上 | 事故防止につながり、特に高齢者や障がい者にとって安全な移動環境が整う |
教育や就労の機会 | 誰もが必要な情報を入手でき、教育や就労の機会均等化につながる |
参照:内閣府
バリアフリーの普及は社会のあらゆる面に影響を及ぼし、より公平で活力ある社会の実現に向けた重要な要素となっています。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとユニバーサルデザインは、異なるアプローチで社会の包括性を高める概念です。バリアフリーは主に障がいのある人や高齢者を対象とし、特定のバリアを取り除くことを目的としています。
一方、ユニバーサルデザインはより広範な概念で、すべての人が対象です。
違い | 具体例 |
バリアフリー | ・建物の入口の段差を解消
・点字ブロックを設置 →既存の環境・製品を改善 |
ユニバーサルデザイン | 誰でも使いやすい多機能トイレ
→設計段階から多様なニーズを考慮し 幅広い適用範囲を持つ |
バリアフリーは、既存の障壁に対する即時的な解決策を提供します。ユニバーサルデザインは長期的かつ予防的な観点から、社会全体のアクセシビリティ向上を目指すのです。
これらの概念を理解し適切に組み合わせることで、より多くの人々が快適に暮らせる環境づくりが可能となります。
バリアフリーが抱える現状と課題
以下の表を見ても分かるように、公共機関のバリアフリー化は大きく前進しています。
2000年 | 2021年 | |
段差の解消 | 28.9% | 93.7% |
視覚障がい者誘導用ブロックの設置 | 57.2% | 97.2% |
障がい者用トイレの設置 | 0.1% | 91.8% |
参照:国土交通省
段差の解消やエレベーターの設置など、物理的なバリアの除去は進んでいるものの依然として多くの課題が残されているのも事実です。
内閣府の調査では、バリアフリー化が進んだ・まあまあ進んだと答えた人は半数近くにのぼっています。
一方で「バリアを感じる」人は6割を超えていて、障がいのある人や乳幼児を抱える人程バリアを感じるという結果も。
参照:内閣府
バリアフリーの認知や環境は増えてきた一方で、バリアを感じる人が多くなっている現状です。
今後は利用者の視点に立った、バリアフリー化が課題となります。
公共施設や交通機関におけるバリアフリーの取り組み
日本では「バリアフリー法」の施行により、公共施設・公共機関でもバリアフリーの取り組みが行われています。
本章では具体的な事例を交えながら、交通機関のバリアフリー化の現状と、公共施設におけるユニバーサルデザインの導入事例について解説。
- 鉄道・バスのバリアフリー化の現状と今後の取り組み
- 駅や空港などでのユニバーサルデザインの導入事例
これらの施設では物理的な障壁の除去だけでなく、誰もが使いやすいユニバーサルデザインの導入も進んでいるので、チェックしてみてください。
鉄道・バスのバリアフリー化の現状と今後の取り組み
公共交通機関におけるバリアフリー化は、着実に進展しています。
公明党の主導で2000年に制定された「交通バリアフリー法」により、鉄道のエレベーター設置などが大きく加速しました。
その他、段差の解消や視覚障がい者誘導用ブロックの整備・多目的トイレの設置、など、多岐にわたる取り組みを行っています。これらによって2010年度末から2020年度末にかけて、鉄道駅の段差解消率は約78%から約95%へと大幅に向上しました。
しかし構造や地形上の問題により、一部の駅ではバリアフリー化が困難な状況にあるため、まだ課題が残されています。特に地下駅ではエレベーターを設置するスペースの確保が難しいケースが多い他、無人駅や駅員の少ない駅では人的対応が不十分となることも。
また施設間の境界における段差の解消なども、重要な課題です。バスやバスターミナルのバリアフリー化は鉄道駅に比べて遅れており、民間施設におけるバリアフリー化の推進も求められています。
加えて情報化の進展に配慮したバリアフリー化の必要性も、高まっている状況です。
今後は物理的な障壁の除去だけでなく、情報提供や人的サポートの充実、さらには民間事業者との連携強化など多角的なアプローチが求められます。
駅や空港などでのユニバーサルデザインの導入事例
駅や空港では、多様な利用者のニーズに対応するユニバーサルデザインの導入が積極的に進められています。
場所 | 主な取り組み |
駅 | ・バリアフリー基準の見直し
L車椅子使用者用便房 L駐車施設の設置数 L車椅子使用者用客席など ・学校と連携したバリアフリー教育活動 ・講習会やセミナーの開催 ・優先席や車椅子使用者用駐車施設の適正利用に関する啓発活動 |
羽田空港国際線ターミナル | ・ステップレス搭乗橋の導入
・ユニバーサルデザイン検討委員会の設置 ・ワークショップの実施 |
成田国際空港 | ・当事者参加のプロセス徹底
・UD基準の策定 ・解説書の作成によるノウハウ継承 |
電車内で優先席についてアナウンスされているのも啓発活動の一環で、利用者の意識向上にも取り組んでいます。
また羽田空港国際線ターミナルでは、世界初の「ステップレス搭乗橋」が導入されている他、「ユニバーサルデザイン検討委員会」が設置。実物・実地での検証と意見聴取を行う「ワークショップ」も実施されています。
駅や空港では利用者の多様性に配慮したユニバーサルデザインの導入が進められ、より多くの人が快適に利用できる環境づくりが進んでいるのです。
住宅のバリアフリー化:家庭でできる対策
住宅のバリアフリー化は、高齢者や障がい者が安全かつ快適に暮らせる環境を整えるために重要な取り組みです。家庭でできる対策は多岐にわたり、小さな工夫から大規模な改修までさまざま。
本章では、バリアフリー住宅の具体的な改築ポイントや、活用できる公的支援制度について詳しく解説していきます。
- バリアフリー住宅とは?高齢者や障がい者向けの改築ポイント
- 住宅改修に使える公的補助金や支援制度
これらの情報を参考に、自宅のバリアフリー化を検討してみてください。
バリアフリー住宅とは?高齢者や障がい者向けの改築ポイント
バリアフリー住宅は段差をなくし、小さな子どもから高齢者まで安心して生活できることを前提とした住宅です。
この住宅設計の考え方は、すべての人が快適に暮らせる環境を整えることを目指しています。代表的なバリアフリーの設備として、廊下の手すりや段差を無くすなどが挙げられ、どれも欠かせないポイントです。
またバリアフリー住宅の設計では動線の確保も重要な要素で、車椅子でも自由に移動できるよう、廊下や部屋の出入り口を広くすることが求められます。
このような配慮は高齢者や障がい者だけでなく、妊婦や小さな子どもがいる家庭にとっても有益です。将来的な身体機能の変化に備えることができ、長期的な視点で住宅の価値を高めることにもつながります。
改築の詳しいポイントは「Q1. バリアフリー対応の住宅に改築するためには何をすればいい?」をご確認ください。
住宅改修に使える公的補助金や支援制度
バリアフリー住宅改修を行う際に利用できる公的支援制度として「介護保険制度」と「減税制度」があります。
制度 | 介護保険 | 減税制度 |
対象者 | ①65歳以上の高齢者で
要介護・要支援認定を受けた場合 ②40歳~64歳で16種類の 特定疾病により 要介護・要支援認定を受けた場合 |
マイホームについて
バリアフリー改修工事を行った人 |
支援内容 | 対象工事費用の支援 | 所得税の還付 |
本人負担 | 1~3割
※所得基準・市区町村 によって異なる |
– |
対象工事 | ・手すりの取付け
・段差解消 ・滑り防止のため床材料の変更 ・引き戸への変更など |
・階段の設置
・出入口の戸を改良する工事 ・介助用の車椅子で容易に移動するために通路または出入口の幅を拡張する工事 など |
支援限度額 | 200,000円 | 住宅ローンの場合
確定申告で最大625,000円 ※築年数や住宅ローンによって条件が異なる |
特記事項 | 2018年8月1日から適用 | 2009年導入
築年数や住宅ローンによって条件が異なる |
介護保険制度は、要介護・要支援認定を受けた方が対象です。本人負担は1〜3割となりますが、所得基準や居住する市区町村によって異なるので注意してください。
一方、減税制度では、バリアフリー工事を実施した場合に所得税の還付を受けることができます。ただし築年数や住宅ローンの条件によって適用される減税額が変わってくるため、こちらも事前に詳細を確認してください。
これらの支援制度を活用することで、高齢者や障がい者が安全に快適に暮らせる住環境を整えるための費用負担を軽減できます。
バリアフリー改修は生活の質を向上させるだけでなく、将来的な介護負担の軽減にもつながる重要な投資といえるでしょう。各制度の利用を検討する際は、地域の福祉課や税務署などの関係機関に相談し、自身の状況に最適な支援を選択することをおすすめします。
企業や観光施設におけるバリアフリーへの取り組み
企業や観光施設におけるバリアフリーへの取り組みを、以下にまとめました。
- バリアフリー対応のホテルや観光施設
- バリアフリー観光の拡大とそのメリット
- 企業が進めるバリアフリー化の事例紹介
企業や観光施設におけるバリアフリーへの取り組みは、近年急速に進展。
これらの取り組みは法律を守るだけでなく、企業の価値を高め誰もが社会に参加できる環境づくりに役立っています。
バリアフリー対応のホテルや観光施設
ホテルや観光施設もバリアフリー対応しているところが多く、誰もが快適に旅行を楽しめる環境を提供しています。物理的なバリアの除去だけでなく、心のバリアフリーにも取り組んでおり、多様なニーズに応える体制が整っている施設が多いです。
代表的なバリアフリー対応施設を以下にまとめました。
施設名 | 主なバリアフリー設備 |
ユニバーサルスタジオジャパン | ・車椅子対応アトラクション
・音声ガイド |
東京ディズニーリゾート | ・補助券同伴可
・筆談対応 |
国立科学博物館 | ・多目的トイレ
・車いす用簡易リフト |
京都国立博物館 | ・エレベーター
・車いすの貸出 |
ホテルグランヴィア大阪 | ・バリアフリールーム
・段差のない動線 |
また観光庁では、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を2020年12月に創設。
認定を受けた施設では障がいの有無にかかわらず、すべての利用者に対して適切な対応ができる体制が整っています。
以下の施設が対象です。
1.宿泊施設(以下のいずれかに分類される施設)
[1]旅館業法(昭和23年法律第138号)上の営業許可を得ている施設
ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む施設を除く。
[2]国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)上の認定を受けている施設
[3]住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)上の届出をしている施設
2.飲食店
食品衛生法(昭和22年法律第233号)上の営業許可(食品衛生法施行令(昭和28年政令第229号)第35条第1号及び第2号に掲げるものに限る。)を得ている施設
3.観光案内所
日本政府観光局から外国人観光案内所の認定を受けている施設等
4.博物館
博物館法(昭和26年法律第285号)第2条第1項に規定する博物館及び同 法第31条の規定により博物館に相当する施設として指定された施設
引用:国土交通省 観光庁
バリアフリー対応の充実は、観光産業の発展と共生社会の実現に大きく貢献しています。
今後もより多くの人々が安心して旅行を楽しめるよう、さらなる施設のバリアフリー化と、心のバリアフリーの推進が期待できるでしょう。
バリアフリー観光の拡大とそのメリット
近年バリアフリー対応のホテルや観光施設が増加傾向にあり、宿泊施設におけるバリアフリー化も着実に進んでいます。
国土交通省が行った宿泊施設に対するアンケート調査では、客室に「バリアフリールーム、または準ずる洋室・和洋室あり」と回答した宿泊施設が約4割でした。「部屋風呂または貸切風呂」「大浴場で対応可」を合わせれば約6割で対応していることが分かっています。
参照:国土交通省「車いす、足腰が不安なシニア層の国内宿泊旅行拡大に関する 調査研究 」p34より
ここまでのバリアフリーの発展は超高齢化社会になり、身体の不自由なお客様を含むマーケットが人口の半分を超えているという現状に対応するためともいえるでしょう。
またバリアフリー観光が拡大すると、経済的・社会的に以下のようなメリットも。
経済的メリット | ・高齢者や障がい者を含む大きな潜在市場の開拓が可能
・観光客数の増加や宿泊施設の再生につながる ・70代の旅行回数が60代と同じになれば、年間約1兆円の経済効果が見込まれる |
社会的メリット | ・高齢者や障がい者など、誰もが安心して旅行を楽しめる環境に
・暮らしやすい環境づくりにつながる ・社会的偏見の解消や、トラブルのないバリアフリー観光の実現に寄与 |
参照:日本政府観光局
バリアフリー観光の拡大は経済的な恩恵をもたらすだけでなく、より包括的で思いやりのある社会の実現にも貢献しています。今後もさまざまな観光地でバリアフリー化が進むことで、より多くの人々が旅行の喜びを享受できるでしょう。
企業が進めるバリアフリー化の事例紹介
企業が進めるバリアフリー化の事例は、以下の通りです。
種類 | 具体例 |
物理的バリアフリー | ・場内のフォークリフトの通路を色分け
・歩行者専用通路を設ける L聴覚障がいがある従業員の安全確認を容易にする |
情報のバリアフリー | ・エスカレーターの運転方向を知らせるための工夫
・ATMの音声ガイダンス機能の導入 |
心のバリアフリー | ・視覚障がいや車椅子利用の疑似体験
Lサービス提供時の「気づき」を得る取り組み |
制度的バリアフリー | ・障がい者の積極的な雇用
・点字での資格試験受験を認めるなどの取り組み |
バリアフリー情報の発信 | ・どのようなバリアがあるかも含めて情報発信 |
AI・ロボットの活用 | ・最新技術を用いて、障がい者や高齢者の生活をサポート |
企業のバリアフリー化への取り組みは、物理的な環境整備から心の問題・制度の改善、最新技術の活用まで幅広い分野で進められています。
これらの取り組みが相互に作用し合うことで、さらなるバリアフリー社会の実現につながるでしょう。
バリアフリーに関連する法律と政策
日本では高齢者や障がい者を含む人々が安全で快適に生活できる社会の実現を目指し、バリアフリー化を推進するための法律や政策が整備されてきました。
本章ではバリアフリー法の概要と施行状況、そして日本政府による具体的なバリアフリー推進政策について解説していきます。
- バリアフリー法とは?その概要と施行状況
- 日本政府によるバリアフリー推進政策
これらの取り組みは、誰もが暮らしやすい共生社会の実現に向けた重要な一歩となっているのでしっかりと理解しておきましょう。
バリアフリー法とは?その概要と施行状況
バリアフリー法は、高齢者や障がい者などの円滑な移動と施設利用を促進するための総合的な法律です。正式名称は「高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」で、2006年に制定されました。
この法律は、1994年度に施行された「ハートビル法」や2000年度に公明党が訴えた「交通バリアフリー法」が統合・拡充したものです。
交通バリアフリー法では、駅のエレベータースロープの設置やバスのノンステップ化が一気に進みました。
出典:公明党
一方でバリアフリー法の制定では、対象者や対象施設の範囲を広げられ、病院や劇場・お店など多くの人が利用する施設にもバリアフリーが普及しています。
近年では以下のような取り組みも大幅に進行。
- 新幹線など車いすスペースの増加(※1)
- 転落事故防止のためのホームドア設置(※2)
※1:新幹線は1編成で3~6以上の車いすスペースの確保義務
※2:1002駅まで拡大
施行状況については、国土交通省が定期的に検討会を開催し、法の実施状況や課題を評価しています。
1994年に、当時野党だった公明党は、「バリアフリー化の街づくり」を重点政策に掲げて、法整備と予算確保に奔走してきたんだヨネ!
「すべての人が暮らしやすい社会」の実現に向けて、公明党は今なお挑戦を続けているよ。
日本政府によるバリアフリー推進政策
日本政府はバリアフリー社会の実現に向けて、法整備だけでなく多角的な推進政策を展開しています。
これらの政策は、物理的環境の改善から意識改革まで幅広い領域をカバーしている点が特徴です。段階的に社会全体のバリアフリー化を進めることで、誰もが暮らしやすい共生社会の創出を目指しています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
政策分野 | 内容 |
建築物のバリアフリー化 | 国土交通省の対応
・バリアフリー設計ガイドラインの作成 ・公共施設や大規模建築物のバリアフリー化推進 ・住宅バリアフリー化支援 |
公共交通機関のバリアフリー化 | 駅や車両のバリアフリー化 |
情報アクセシビリティの向上 | ・政府機関ウェブサイトのバリアフリー化
・高齢者や障がい者の情報入手支援 |
心のバリアフリーの推進 | ・社会全体の意識改革を目指す取り組み |
補助金制度 | バリアフリー化を進める事業者や地方自治体への各種補助金提供 |
関係省庁の連携 | 内閣府を中心に、国土交通省/厚生労働省/文部科学省などが連携してバリアフリー施策を推進 |
これらの政策を通じて、政府は物理的なバリアの除去だけでなく、社会の意識改革も含めた包括的なアプローチを採用。
特に「心のバリアフリー」の推進は、共生社会の実現に向けた重要な取り組みとして注目されています。
心のバリアフリーとは?:社会全体で目指すべき姿
心のバリアフリーとは社会のあらゆる構成員が互いの違いを理解し、尊重し合うことを目指す考え方です。具体的には多様な心身の特性や価値観を持つ人々が、積極的にコミュニケーションを取り、互いに支え合う姿勢を指します。
この概念は単なる理念にとどまらず、実践的な社会変革を促す原動力です。
性別や国籍・障がいの有無にかかわらず、すべての人々が安心して快適に暮らせる環境づくりを目指しています。これはユニバーサルデザインの理念に基づいたまちづくりを通じて、具現化されつつあります。
以下の見出しで、この理念を日常生活で実践するための具体的なポイントや、障がい者への理解と支援の方法について詳しく解説します。
- 心のバリアフリーの実践ポイント|とは?障がい者への理解と支援
- バリアフリーを通じて実現するインクルーシブ社会
またバリアフリーの推進が、どのようにしてインクルーシブな社会の実現につながるのかを説明するので、参考にしてみてください。
心のバリアフリーの実践ポイント|障がい者への理解と支援
ユニバーサルデザイン2020 行動計画によると、心のバリアフリーの実践には3つの主要なポイントがあります。
出典:国土交通省 |
これらの実践ポイントを踏まえバリアを感じている人の立場に立って考え、行動することが大切です。具体的には困っている人に気づいたら積極的に声をかけ、必要な支援を提供することが心のバリアフリーの実践につながります。
このような行動は妊婦・子育て中の人など、さまざまな人々にとって有益です。心のバリアフリーは、一人ひとりの意識と行動の変革から始まります。
日常生活の中でこれらのポイントを意識し実践することで、より包括的で思いやりのある社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができるのです。
バリアフリーを通じて実現するインクルーシブ社会
バリアフリーの推進は、すべての人が尊厳を持って生きられるインクルーシブ社会の実現に不可欠です。
インクルーシブ社会とは障がいの有無にかかわらず互いの人権や尊厳を大切にし、支え合いながら、生き生きとした人生を享受できる共生社会を指します。この理想的な社会を実現するためには、物理的なバリアフリー化だけでは不十分です。
制度や慣行、さらには人々の意識に存在するバリアも取り除く必要があります。
インクルーシブ社会の大きな特徴は、多様な個人の能力が最大限に発揮されることです。従来の「支え手側」と「受け手側」という固定的な役割分担を超えて、すべての人が互いに支え合う関係性が構築されます。
これにより社会全体の活力が高まり、イノベーションが促進される可能性も広がるのです。バリアフリーを通じたインクルーシブ社会の実現は、単に障がいのある人のためだけではありません。
高齢者や子育て中の親、一時的に怪我をしている人など、誰もが恩恵を受けることができます。多様性を尊重し互いの違いを認め合う社会は、すべての人にとってより豊かで安心して暮らせる環境を提供するのです。
バリアフリーに関するよくある質問
バリアフリーに関するよくある質問を、以下にまとめました。
|
バリアフリーは、すべての人が社会に平等に参加できるよう、物理的・社会的障壁を取り除く重要な概念です。しかしその実践や理解には、さまざまな疑問が生じることがあります。
これらの情報はバリアフリー社会の実現に向けた理解を深め、具体的な行動につなげるためのヒントとなるでしょう。
Q1. バリアフリー対応の住宅に改築するためには何をすればいい?
バリアフリー対応の住宅に改築するためには、以下のような対応がおすすめです。
場所 | 具体例 |
段差の解消 | ・玄関の上がりかまちの段差に踏み台を設置
・室内の床をフラットにする ・玄関をスロープにする |
手すりの設置 | 階段や廊下など必要な場所に手すりをつける |
床材の変更 | 滑りにくい素材にする |
ドアの改修 | ・ドアノブを握りやすいものにする
・開き戸を引き戸にする |
水回りの改修 | ・ユニットバスに変更し段差をなくす
・洗面台の高さを調整 |
その他の対策 | 人感センサー付き照明にする |
これらの対策を実施する際は、専門家のアドバイスを受けながら、居住者の身体状況や生活スタイルにあわせて適切な方法を選択することが重要です。また自治体によっては補助金制度を利用できる場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
バリアフリー改修は、高齢者や障がい者だけでなく、家族全員にとって安全で快適な住環境を実現するための大切な取り組みです。
将来を見据えて計画的に進めることで、長く住み続けられる家づくりにつながります。
Q2. バリアフリーに対応した観光施設の情報を調べるには?
バリアフリーに対応した観光施設情報は、以下で調べることができます。
- 専門WEBサイトの活用
- 公的機関
- 専門旅行会社
- 自治体や観光協会への問い合わせ
多くの自治体や観光協会が、バリアフリー対応の観光施設情報を提供する専門サイトを運営しています。
横浜市観光情報サイトや東京観光バリアフリー情報ガイドでは、地域特有のバリアフリー情報が詳細に掲載されており、旅行計画の際に役立つでしょう。また国土交通省は「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を創設し、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む観光施設を認定しています。
公的機関による情報は信頼性が高く、最新の状況を反映していることが多いです。
その他「バリアフリー旅行.com」のような専門サイトや自治体・観光協会に直接問い合わせることもできます。
これらの方法を組み合わせることで、より正確で充実したバリアフリー対応の観光施設情報を入手することができ、安心して旅行を楽しめるでしょう。
バリアフリー社会の実現に向けてできること
バリアフリー社会の実現には、さまざまな主体の連携・協力が欠かせません。
柱 | 主な取り組み | 具体例 |
環境整備 | 物理的バリアの除去 | ・エレベーター設置
・スロープ設置 ・点字ブロック設置 |
情報のバリアフリー化 | ・多言語対応
・音声ガイド ・字幕付与 |
|
教育・啓発 | 学校教育での取り組み | ・バリアフリーに関する授業
・体験学習 |
社会教育での取り組み | ・講演会
・ワークショップ ・体験イベント |
|
連携・強力 | 行政機関の取り組み | ・バリアフリー化の指針策定
・補助金制度 |
民間企業の取り組み | ・施設のバリアフリー化
・接遇研修 |
|
地域団体の取り組み | ・バリアフリーマップ作成
・啓発活動 |
行政機関が中心となり民間企業や地域団体と協力しながら、バリアフリー化を推進していくことが重要です。行政の指針に基づき、民間企業が施設のバリアフリー化を進め、地域団体が利用促進と啓発を担当する流れで、各主体の強みを活かした協働ができるでしょう。
これらの取り組みを総合的に推進することで、誰もが自分らしく生活できる真のバリアフリー社会の実現に近づけるはずです。
バリアフリー化を促進するために個人ができるアクション
バリアフリー化の促進は行政の取り組みだけでなく、個人の行動も重要な役割を果たします。
以下の表は、個人ができるバリアフリー化促進のアクションをまとめたものです。
カテゴリー | 個人ができるアクション |
周囲への気づきと声かけ | ・バリアを感じている人の存在に気づく
・困っている人に「お手伝いしましょうか?」と声をかける |
理解と配慮 | ・高齢者や障がい者の困難を自らの問題として認識する
・バリアフリー施設やサービスの利用を妨げない ・相手の気持ちを尊重し、断られても気にしない |
習得と実践 | ・バリアフリーに関するサインやシンボルマークを学ぶ
・身近なバリアフリーの工夫に目を向け、意味を考える ・学んだことを日常生活で実践する |
これらの個人的な取り組みは、社会全体のバリアフリー化を促進する上で非常に重要だと言えます。
また「心のバリアフリー」と呼ばれる意識の変革にもつながります。一人ひとりが小さな行動を積み重ねることで、社会全体のバリアフリー化が進み、より包括的で思いやりのある社会に近づけるでしょう。
バリアフリーを考慮した社会を目指して
バリアフリーとは、高齢者や障がい者を含むすべての人々が、社会生活を送る上で障壁(バリア)となるものを取り除くという考え方です。これまで建築物や公共交通機関・情報通信など、さまざまな分野でバリアフリー化が進められてきましたが、依然として課題が残されています。
車いすの方は段差や階段・狭い通路があると通れなかったり、視覚や聴覚に障がいがある方々は、必要な情報にアクセスすることが難しい場合も。
これらの課題に対して、身近な環境からバリアフリー化を進めることが大切です。家庭や職場・地域コミュニティにおいて、物理的なバリアを取り除く工夫をすることから始めましょう。
さらに重要なのは、心のバリアフリーを実践することです。障がい者や高齢者などのさまざまな立場に立って考え、理解を深めることが求められます。
教育現場や企業研修で、バリアフリーに関する知識や意識を高める機会を設けることも有効でしょう。バリアフリー社会の実現には、個々が当事者意識を持ち、積極的に行動することが不可欠です。
小さな気づきや行動の積み重ねで、誰もが暮らしやすい社会づくりにつなげていきましょう。
その“当たり前”実は
公明党が頑張りました!
政党って何してるの?と思う
あなたに知ってほしい、私たちの実績。