「動きやすくて暖かいブレザーがいい」「こっちの色の方が高級感があるな」。夏休み前の放課後、会議室に生徒が集まり、意見を出し合った。サンプル生地に顔を近づけ、さわり心地を確かめる。議題は「新しい制服に求めること」。兵庫県のある中学校が、およそ30年ぶりに制服を一新する。これまでに保護者らの声を取り入れたほか、制服の選定には生徒の意見を多く反映した。背景には「学校のことは生徒自身で決める」という学校の方針がある。(喜田美咲)
■30年ぶりの新制服、来春から導入
三田市立狭間中学校(狭間が丘4)が創立40周年のタイミングに合わせて、時代に即したモデルチェンジを実施する。来春から導入されるといい、27日の記念式典で全校生に初披露される。
新たな制服の計画には、兵庫菅公学生服(兵庫県姫路市)が携わった。ブレザーにはこれまでのサージ生地に比べて伸縮性があって軽く、自宅で丸洗いできるニット生地を採用した。紺のブレザーに合わせる男女兼用のスラックスはグレーに。紺色のスカートには水色のチェック柄があしらわれている。これまでの白のポロシャツに加えてワイシャツも採用したが、メーカーに指定はなく、衣料品店で購入できる。
構想は2年ほど前に始まった。制服に使う素材の価格が高騰しており、保護者懇談の場などで「材質を変えられないか」といった意見が出ていた。「洗えるスーツ」など、フォーマルウエアを扱う業界で素材が多様化していたこともあり、教員らは学校でも変えていけるのではないかと検討を始めた。今年6月、職員やPTA、学校地域運営委員会などから新制服への変更について同意を得た。
■全学年のクラス代表がデザイン議論
夏休み前の大掃除を終えた7月19日の放課後、会議室に全学年のクラス代表が集まり、検討会を開いた。生徒に機能やデザインで求めることを尋ね、新制服が条件を満たしているかを確認した。
「畳んで持って帰ってもしわになりにくい」「チョークなどで汚れても簡単に洗える」「汗をかいた時にすぐ乾く」。生徒が次々に手を挙げて意見を出す。加えて「大人っぽい色がいい」「ネクタイは付けたい」「でもなくしそう」など、デザインについても多数決や話し合いで決めていった。
議論が長引いたのはワイシャツかポロシャツか。それぞれ、水色か白色か。現在はポロシャツで、白であればどこの衣料品店で購入してもいいため、比較的安価にそろえられる。水色の場合、買った店によって色の違いが出て統一感が出ないのではないかなどの声が上がった。教員や保護者らの意見も聞き、最終的に2種類の形を2色とも採用することに決めた。
検討会に参加し、新制服案を見た3年の女子生徒(15)は「3年着ると摩擦で傷んだり、破れてしまったりする人もいる。丈夫になると聞いて、次の世代に喜んでもらえる変更ができたならうれしい」。別の女子生徒(14)は「長年変わっていなかったし、大人が考えることだと思っていた。自分たちの意見が出せるということに驚いたけれど、機会があってよかった」といい、「私たちも着たかったね」と顔を見合わせて笑った。
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■校則も生徒提案で見直し
同校では2019年度から自分たちで校則を見直すなど、学校運営について生徒自身が考える機会を設けてきた。同時期から同校の生徒指導担当となったのが橋本晋教諭。自身が中学生だった30年ほど前は校則を守るよう注意されることはあっても、「自分たちで変えられるなんて考えたこともなかった」と振り返る。だが、生徒指導を担うようになり、「生徒にルールを伝える時、納得いく説明ができない決まりは必要なのだろうかと考えるようになった」。勉強会などに赴き、指導方法を学び直した。
社会の流れも少しずつ変化してきた。不合理な「ブラック校則」が世間で注目されるようになったこともあり、文部科学省は今年8月、12年ぶりに教員用の手引書「生徒指導提要」の改定案を提示。校則は最終的に校長が制定するが、「校則の運用・見直し」として生徒自身が自分事として理解できる内容にすることや、見直しの過程に児童生徒が参加し、ルールについて議論する機会を設ける必要性、少数派の意見も尊重することなどが明記された。
生徒会では毎年、現行の校則や生徒からの投書を通して「生徒が主役の学校づくり」を考える機会を設けている。生徒から変更の提案を受けた教員は、PTAや他の職員らの意見を聞く。大人たちから出された意見を基に、生徒が再び議論する。
■靴下の色から頭髪、ブレザーの着方まで
同校の校則ではもともと靴下の色は白のみだったが、議論を経て黒や紺も可能となった。内容によっては文言を「禁止」から「好ましい」に変え、自分たちで考える余地をつくった。頭髪の男女差をなくした。常に着用していたブレザーは休憩や給食の時間は脱いでもよいなど、マナーの観点からも考え直した。
自分で考えたら責任を持って守る。初めは「とんでもない案になったら風紀が乱れてしまわないか」との意見も保護者らの間ではあったが、まずは子どもたちを信じようという思いで一致したという。
「近ごろは子どもたちが暴力で荒れているといった問題は少ない」と大杉正昭校長。一方で「どちらかというと学校に来にくい子が増えている印象」といい、校則の変更について相談を受けた時「単なる見直しではなく、生徒の多様性や個性を認める学校の雰囲気づくりができるのではないか」と考え、応援しようと思ったという。検討委では話し合う生徒の様子を静かに見守っていた。
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■「信じて任せる」教諭と生徒、互いに利点
スマートフォンの普及で、放課後もメッセージでやりとりできるようになり、生徒間のトラブルも大人の目が届きにくい場所で広がることが増えた。同校では外部講師による授業を開くほか、生徒がネットの利用時間や使い方を学年ごとに定めたり、オリジナルの啓発動画を作って校内で見られるようにしたりしてきた。以前は交流サイト(SNS)でのやりとりで、勘違いから生徒同士のもめ事に発展したケースがあったが、情報モラルの授業を始めてから大きなトラブルは起きていない。
およそ30年続いてきた制服を改訂するには保護者や地域の理解を得るために丁寧な説明が必要となる。2020年からは制服検討委員会を立ち上げ、時間をかけて取り組んできたが、価格や手入れのしやすさでプラス面が多いとして周囲からの反応は良好だったという。
「子どもを信じてある程度任せる。すると一人一人が自分の考えを持って話し合い、自分たちの結論を導き出す」。教員は、生徒たちが迷ったり方向を間違えかけたりしたら、指摘し、相談にのる。「結果として、生徒指導に割く時間が減り、教員の働き方も改善される。互いにウィンウィンとなる取り組みが今後も続くことを期待したい」と話している。

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