映画の大ヒットなどで国民的コンテンツとなった「鬼滅の刃」。6月末までテレビアニメ「柱稽古編」が放送され、主要キャラクターの一人、お館様こと産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)の邸宅がクローズアップされたのは記憶に新しい。この産屋敷邸のモデルともささやかれる「豪農の館 北方(ほっぽう)文化博物館」が新潟市にある。前々から行ってみたいと思っていた〝お館様推し〟の筆者が初めて訪れ、そのスケールの大きさに圧倒された。

1887(明治20)年建築の主屋棟。この奥(画像左側)に大広間棟が続く

「柱合会議」をほうふつ

 越後屈指の豪農で大地主である伊藤家の歴史と、新潟の郷土文化を伝える同博物館。伊藤家の貴重な建物や庭、美術品などを後世に残すため、戦後間もない1946年、財団法人を立ち上げこれらをすべて寄付する形で開館した。およそ2万9000平方メートルの広大な敷地に邸宅や離れ、茶室、蔵などがひしめく。想像の斜め上をいく立派さで、ろくに調べもせず来てしまった自分が恥ずかしくなった。

「鬼滅の刃」の名シーンをほうふつとさせる大広間

 産屋敷邸に似ているとされるのが、1889(明治22)年に建てられた「大広間棟」にあるおよそ100畳の大広間。最高位の剣士たち「柱」がお館様の元に集う「柱合会議(ちゅうごうかいぎ)」のシーンをほうふつとさせる。実際、伊藤家でも最も格式の高い間とされ、使われるのは年に数回のみだったとか。開け放たれた戸の先に美しい日本庭園が広がり、気持ち良い風が通り抜けていく。訪れたのが平日の午前中だったせいか観光客が少なく、しばらく一人きりでぜいたくな時間を過ごした。