アメリカの国立図書館がサンプリング用の音素材を無償提供するプロジェクト「Citizen DJ」のウェブサイトを公開。実際に使ってみたところ、予想以上に楽しいサイトだったので、今回はそれについて書いてみたいと思います。
ヒップホップ黄金期に影響を受けた無料サンプリングネタサイト
「Citizen DJ」は、図書館の”Innovators in Residence”メンバーのBrian Fooが、ヒップホップ黄金期にインスパイアされて開発したもの。その目的は図書館所蔵の録音物をプロデューサーやミュージシャンに無料で解放し、それを新しい音楽にすることで普通なら聴かれることがないであろう素材や文化、音楽の歴史と一般リスナーをつなげることだといいます。
なかなか壮大な感じがしますが、これまでにもアカデミックな分野とヒップホップが結びつく実例があるアメリカらしいプロジェクトではないでしょうか?
サンプリングネタのダウンロード方法は3種類
さて、そんな「Citizen DJ」のサイトでは図書館が所有する声ネタや楽器演奏など様々な録音音源(中には100年前に録音されたようなものも)をサンプリングネタとして6つのサンプルパックに収録しています。
各パックには”Explore”、”Remix”、”Browse & download”という3つのボタンが設けられていますが、シンプルにサンプルをダウンロードしたい場合、クリックするのは”Explore”と”Browse & download”の2つになります。
”Explore”では、ブラウザ上に以下のような音声データらしきものが無数に表示されます。それにカーソルを合わせるとワンショットのサンプルを試聴可能で、その中から自分が好きなサンプルを選んでダウンロードすることができます。
次に”Browse & download”では、パックに収納されているサンプルが以下のようにテキストでズラリと並び、それらのサンプルを試聴しながら好みのものをダウンロードすることができます。
またパックにあるサンプルを一括でダウンロードすることも可能で、その際にMP3(192Kbps)かWavのどちらかを選択することができます。
サイト内のサンプルとブラウザベースのシーケンサーを使って音楽制作できる
そして、先述の”Remix”ですが、これはほかの2つと比べるとちょっと特殊。クリックするとなんとブラウザベースのシーケンサー画面が表示され、音楽制作が可能になります。
表示されるシーケンサーに用意されたトラックは基本ウワモノ用が4つ、ビート用が3つ。
しかしながら、シーケンサーの上部にある”and a beat pattern”というタブをクリックすると”70s soul pattern E[1]”のように様々なプリセットのビートパターンが表示され、その中から選択したパターンによってはビート用のトラックが4つになったり、5つになったりとトラック数が追加される仕様になっています。
一方、ウワモノのサンプルは4つのトラック上にワンショットサンプルとして配置されます。このサンプルは”Choose an item”タブをクリックするとことで切り替えることができるほか、配置されたサンプルはトラックごとに割り当てられている再生ボタンを押して、試聴でしたり、矢印カーソルをいじることでサンプリングする部分の切り替えが可能です。
さらに”and a drum machine”タブには”Akai MPC”、”TR-808”など8種類のビンテージドラムマシーンがアサインされており、ユーザーが好みのドラムマシーンを選択して、ビートを打ち込んでいくことができます。ちなみにヒップホップ感はE-mu SP-12が1番出た印象があります(個人的な主観による感想)。
BPM変更やボリューム調整はもちろんRec、書き出しまでできるちょっとしたDAW
あとこのシーケンサーはBPMの変更や各トラックのボリューム調整、ソロ、ミュートの切り替えに加えてRecまで可能で、Recした曲はまさかのWavで書き出されるからビビります。
個人的にこのサイトがヤバいのは膨大な量のサンプルを無料でダウンロードできることよりもブラウザシーケンサーで音楽制作、しかも制作物の書き出しができてしまうという点です。ですので、DAWを持っていない場合でも気軽に音楽制作できるのはかなりありがたいのではないでしょうか?
またシーケンサーで使ったサンプルは、画面をスクロールダウンすると各種サンプル情報が表示されるほか、ワンショットのサンプルか元のサンプルのどちらかを選んでダウンロードすることができるセクションも表示されます。サンプルのみダウンロードしたい場合はここをチェックするとよいでしょう。
ちなみに下がこのシーケンサーを使って私が作ってみたテクノっぽい曲。人力でミュート、ソロを切り替えたり、リアルタイムに打ち込んだりしながらビートに変化を加えてみました(笑)。
個人的に純粋DTMerであれば、Akufenっぽいカットアップ系IDMダンスミュージックのための声ネタ収集のためにめちゃ役立つんじゃないかと。あと実験してみたところ、”Remix”は、スマホでもいじれたので、サクッと試してみたい方はこちらのリンク先から「Citizen DJ」にアクセスしてみてください。あと、このサイト、現時点ではβ版のようで、今後、どのように進化するかも楽しみです。以上、お後がよろしいようで。
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Reference:
http://citizendj.labs.loc.gov.s3-website-us-east-1.amazonaws.com/
https://www.musictech.net/news/library-congress-sampling-citizen-dj/