ジェトロ対日投資報告2021
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向 第2節 世界・日本の直接投資動向
対日直接投資動向 part2
グリーンフィールド投資は2年連続の減少
2020年の日本向けグリーンフィールド投資の件数(公表日ベース)は、2019年から14.3%減の197件で、2年連続の前年比減となった(図表1-26)。
投資元国 ・地域をみると、米国が前年比29.9%減の61件と最多で、2番目に多かったシンガポールの3倍以上と他国・地域を大きく上回ったが、前年と比較すると3割近く件数が減った(図表1-27)。シンガポールは2019年の8件から19件と件数が2倍以上伸びた一方で、ドイツ(17件、前年比0.0%)は前年と同数、フランス(13件、同50.0%減)、英国(12件、同36.8%減)はいずれも前年比減となった。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
件数 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 米国 | 61 | -29.9 | 31 | |
2 | シンガポール | 19 | 137.5 | 9.6 | |
3 | ドイツ | 17 | 0 | 8.6 | |
4 | フランス | 13 | -50 | 6.6 | |
5 | 英国 | 12 | -36.8 | 6.1 | |
— | 全体 | — | 197 | -14.3 | 100 |
2020年の日本向けグリーンフィールド投資を業種別にみると、例年同様、ソフトウェア(63件)が最も多かったものの、前年比12.5%減だった(図表1-28)。次いで不動産が19件(前年比5.6%増)、再生可能エネルギーが17件(同21.4%増)であった。全体の件数は減少した一方で、同2業種は前年比増となった。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
件数 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ソフトウェア | 63 | -12.5 | 32 | |
2 | 不動産 | 19 | 5.6 | 9.6 | |
3 | 再生可能エネルギー | 17 | 21.4 | 8.6 | |
4 | ビジネスサービス | 16 | -30.4 | 8.1 | |
5 | 産業用機械器具 | 13 | -7.1 | 6.6 | |
— | 全体 | — | 197 | -14.3 | 100 |
2020年の対日M&Aの件数は前年から増加
2020年の日本向けクロスボーダーM&A(以下、対日M&A)の件数(完了日ベース)は前年比11.6%増の135件だった(図表1-29)。対日M&Aの件数は、2018年まで4年連続で前年比減だったが、2019年ならびに2020年は前年比増となり、2年連続で増加した。
2020年の対日M&Aの件数を買収国・地域別にみると、米国が31件(全体の23.0%)で最多で、次いで香港(12件、全体の8.9%)、シンガポール(10件、同7.4%)などが続いた(図表1-30)。上位5ヵ国・地域は、米国とドイツを除いていずれもアジア諸国・地域だった。
順位 | 国・地域 | 件数 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|
1 | 米国 | 31 | 14.8 | 23 |
2 | 香港 | 12 | -14.3 | 8.9 |
3 | シンガポール | 10 | 0 | 7.4 |
4 | 韓国 | 9 | 80 | 6.7 |
5 | ドイツ | 7 | 250 | 5.2 |
— | 全体 | 135 | 15.4 | 100 |
2020年以降の主な対日投資M&A案件は、株式会社チトセア投資(最終親会社所在国:ケイマン諸島)によるユニゾホールディングス株式会社、Oscar A-Co株式会社(最終親会社所在国:米国)による武田コンシューマーヘルスケア株式会社の買収などがある(図表1-31)。
順位 | 被買収企業 | 買収企業 | 実施年月(完了ベース) | 取引金額(100万米ドル) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
企業名 | 業種 | 企業名 | 国籍 | 業種 | |||
1 | ユニゾホールディングス株式会社 | 不動産 | 株式会社チトセア投資 | ケイマン諸島 | 金融 | 2020年6月 | 4,375 |
2 | 武田コンシューマーヘルスケア株式会社 | ヘルスケア | Oscar A-Co株式会社 | 米国 | 金融 | 2021年3月 | 2,288 |
3 | 株式会社資生堂-パーソナルケア事業 | 卸売、サービス | 株式会社Oriental Beauty Holding | 英国 | 金融 | 2021年7月 | 1,524 |
4 | 昭和飛行機工業株式会社 | 工業 | BCPE Planet Cayman LP | 米国 | 金融 | 2020年4月 | 851 |
5 | アコーディア・ゴルフ・アセット合同会社 | メディア、エンターテイメント | 株式会社アコーディア・ゴルフ | スペイン | メディア、エンターテイメント | 2020年9月 | 618 |
6 | 楽天株式会社 | ハイテク | Image Frame Investment (HK) Ltd | 中国 | 金融 | 2021年3月 | 606 |
7 | アスペンジャパン株式会社 | ヘルスケア | Sandoz International GmbH | スイス | ヘルスケア | 2020年1月 | 441 |
8 | 武田薬品工業株式会社-TachoSil事業 | ヘルスケア | Corza Health Inc | 米国 | 金融 | 2021年2月 | 415 |
9 | ESRレッドウッド久喜ディストリビューションセンター | 工業 | 物流関連の合弁企業 | フランス | 金融 | 2020年8月 | 369 |
10 | ヒューリック株式会社-日本ヒューレット・パッカード本社ビル(98.47%) | 不動産 | Tsubaki特定目的会社 | シンガポール | 金融 | 2021年6月 | 353 |
2021年上半期の対日直接投資動向は低調
先述のとおり、UNCTADは2021年6月に発表した「World Investment Report 2021」にて、2021年の世界の対内直接投資は前年比10~15%程度の増加になると予測した。2021年1月から8月までの対日直接投資額をみると、2020年の前年同期と比べ低調に推移する。外国企業による日本での拠点設立や拠点拡大を示すグリーンフィールド投資(公表日ベース)の傾向をみても、2021年1月から8月までの件数は83件で、前年同期(144件)の6割にも満たない。他方、新型コロナウイルス感染症対策では、ワクチン接種の開始で他国に後れを取ったものの、2021年10月14日現在、人口のワクチン完全接種率が65.8%となり、国内の今後の経済活動の進展が望まれる。関連して、海外からの渡航などに関する規制の緩和が進めば 、2020年以降、低調となった外国企業による新規拠点の設立や既存拠点の拡大などが期待される。
対日直接投資残高
2020年末の対日直接投資残高は39.7兆円に
2020年末の対日直接投資残高は、同年の大きな対日直接投資額を受け、前年比15.6%増の39.7兆円と最高値を更新した(図表1-32)。残高の対GDP比は6.1%から7.4%まで増加した。
同年末の残高を資本形態別にみると、株式資本が前年比1.5%増の19兆円(全体の46.9%)、負債性資本が前年比63.1%増の13兆円(同33.6%)、収益の再投資が前年比1.1%減の8兆円(同19.5%)となった。先述のとおり、2020年の対日直接投資額にて負債性資本の流入が多かったことを受け、残高における負債性資本の割合も、2019年末の23.8%から3割以上まで増加した。負債性資本の残高を国・地域別にみると、英国が前年比335.5%増の4.4兆円、米国が前年比84.8%増の2.7兆円、スイスが前年比272.5%増の0.9兆円などとなっており、2020年はこれらの国からの負債性資本の流入が特に多かったことが窺える。
対日直接投資残高を出資元の地域別にみると、欧州が18.5兆円(全体の46.7%)で最多で、次いで北米が9.6兆円(同24.2%)、アジアが9.0兆円(同22.6%)となった(図表1-33)。国・地域別にみると、米国が9.4兆円(全体の23.7%)と、例年に引き続き最多で、次いで英国が5.8兆円(同14.7%)となった(図表1-34)。対日直接投資残高に占める上位10ヵ国・地域の割合は86.0%となり、米国以外は主に欧州ならびにアジア諸国であった。
順位 | 国・地域 | 残高 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | 米国 | 94,052 | 23.7 |
2 | 英国 | 58,326 | 14.7 |
3 | シンガポール | 42,943 | 10.8 |
4 | オランダ | 42,283 | 10.7 |
5 | フランス | 33,201 | 8.4 |
6 | スイス | 23,371 | 5.9 |
7 | 香港 | 14,669 | 3.7 |
8 | ケイマン諸島 | 12,855 | 3.2 |
9 | ドイツ | 9,971 | 2.5 |
10 | 韓国 | 9,364 | 2.4 |
― | その他 | 55,659 | 14 |
― | 合計 | 396,693 | 100 |
2020年末の業種別の対日直接投資残高は非製造業が6割越え
2020年末の業種別の対日直接投資残高は、前年比1.4%減の24.1兆円だった。残高を大業種で見ると、製造業が37.2%、非製造業が62.8%だった(図表1-35)。2020年の対日直接投資額における非製造業の割合が大きかったことで、同業種の残高が増加した。
詳細業種をみると、2020年の投資額が大きかった金融・保険業が、前年比5.4%増の10.0兆円(全体の41.6%)と最多だった(図表1-36)。次いで、輸送機械器具が前年比9.7%減の3.3兆円(同13.6%)、電気機械器具が前年比9.2%減の2.3兆円(同9.5%)などだった。
順位 | 国・地域 | 残高 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | 金融・保険業 | 100,150 | 41.6 |
2 | 輸送機械器具 | 32,760 | 13.6 |
3 | 電気機械器具 | 22,897 | 9.5 |
4 | 通信業 | 20,450 | 8.5 |
5 | 化学・医薬 | 17,928 | 7.4 |
6 | サービス業 | 13,631 | 5.7 |
7 | 不動産業 | 5,309 | 2.2 |
8 | 一般機械器具 | 4,948 | 2.1 |
9 | 運輸業 | 4,215 | 1.8 |
10 | ガラス・土石 | 3,718 | 1.5 |
― | その他 | 14,740 | 6.1 |
― | 合計 | 240,746 | 100 |
2021年
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向
-
第1節
-
第2節
第2章 日本のビジネス環境と外資系企業
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第1節
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第3節
第3章 ジェトロの対日投資促進事業
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第1節
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第2節
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