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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データ
に基づく月別二酸化炭素の全大気平均濃度の公表について

平成27年11月16日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人国立環境研究所
環境省

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット))は、環境省、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した世界初の温室効果ガス観測専用の衛星であり、平成21年1月23日の打上げ以降、現在も観測を続けています。
「いぶき」観測データを使って、地上から上空までの「地球大気全体(全大気)」の二酸化炭素平均濃度を算出したところ、月別平均濃度は季節変動をしながら年々上昇し、平成27年5月に約398.8 ppmを記録しました。さらに推定経年平均濃度※は平成27年7月に約398.2 ppmに達したことがわかりました。このままの上昇傾向が続けば、月別平均濃度や推定経年平均濃度はともに、遅くとも平成28年中に400 ppmを超える見込みです。これは、「いぶき」の観測によって地球大気全体の平均濃度が400 ppmに近づくことを初めて示すことになり、衛星による温室効果ガス観測の重要性を表すものと言えます。

※ 推定経年平均濃度:季節変動を取り除いた2年程度の平均濃度値

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)とは

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット))は、環境省、NIES及びJAXAが共同で開発した、世界初の温室効果ガス観測専用の衛星です。二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測し、その吸収・排出量の推定精度を高めることを主目的にしており、さらに炭素循環の将来予測の高精度化への貢献を目指して、平成21年1月23日の打上げ以降、現在も観測を続けています。

「いぶき」による温室効果ガス観測の特徴とその意義

 世界気象機関(WMO)を含む世界のいくつかの気象機関では、これまでも地表面の各地の観測地点や、それらのデータを用いて算出した地上での全球平均濃度を発表してきました。しかし、二酸化炭素は高度によって濃度差があるために、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表しません。これに対して「いぶき」は二酸化炭素の地表面濃度ではなく、地表面から大気上端までの大気中の二酸化炭素の総量を観測できます。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において予測されている将来の二酸化炭素濃度は「全大気」の平均濃度であることから、今後の温室効果ガスの増加による地球温暖化のリスクを算出・予測する上では、地球全体の温室効果ガスの平均濃度の算出が重要であり、上空の大気まで含めた「全大気」の平均像を把握することが不可欠です。

「いぶき」による「全大気」月別二酸化炭素濃度の観測成果

 そこで、平成21年5月から平成27年7月までの6年間以上の「いぶき」観測データを用いて「全大気」の二酸化炭素平均濃度を算出したところ、月別平均濃度は北半球の植物の光合成が活発になる北半球の夏に下がり、光合成が弱くなる北半球の冬に上がる季節変動を経ながら年々上昇し、平成27年5月には、約398.8 ppmを記録しました。また、推定経年平均濃度注1)は平成27年7月に約398.2 ppmを記録しました注2)。さらに、このままの上昇傾向が続けば、月別平均濃度や推定経年平均濃度はともに、遅くとも平成28年中には400 ppmを超える見込みであることもわかりました。月別平均濃度が400 ppmを超えるのは、推定経年平均濃度よりもさらに早い時期になると予想されます。ただし、衛星で観測できる地域は、太陽高度が高くかつ雲のない特定の地域に限られるため、算出した「全大気」の濃度は、「いぶき」の観測データに基づきモデル的手法を用いて推定した結果です注3)。「全大気」月別平均値とそれに基づいて算出した推定経年平均濃度のグラフを下図に示します注4)。この数字は、地表面の平均濃度注5)より1~2 ppmほど低い結果となっています。

(補足) グラフの月別平均濃度の各点(赤●)における縦棒は、その値の信頼幅の大きさを示すもので、ここでは推定値のプラスとマイナス側に1標準偏差(±σ)の大きさを表示してあります。

「いぶき」による観測成果の公開

 また、環境省、NIES、JAXAの3者では、今回算出した「いぶき」(GOSAT)による晴天域の観測データから解析・推定された、月別「全大気」の二酸化炭素平均濃度を公開することと致しました。この「全大気」の平均濃度の公表は、平成27年11月16日より国立環境研究所GOSATプロジェクトのWebページにおいて開始し、「いぶき」の運用が続く限り定期的に結果を更新いたします。今回の「全大気」平均濃度の算出方法も、同じWebページに紹介します。この公開により、二酸化炭素濃度増加の事実を広く一般国民の皆様に周知し温室効果ガス排出の抑制につなげます。

【公開方法】

 国立環境研究所「GOSATプロジェクト」の「月別二酸化炭素の全大気平均濃度 速報値」のページ(http://www.gosat.nies.go.jp/recent-global-co2.html)において公開致します。

今後も引き続き、「いぶき」観測データに基づく成果の公表を行うとともに、平成29年度をめどに打上げが予定されている「いぶき後継機」(GOSAT-2)による継続的な温室効果ガス観測を実施し、それらの成果を地球温暖化予測の精緻化に反映させていく予定です。



(注1) 二酸化炭素濃度は1年の周期を持つ季節変動をしているが、地球大気の長期的な変動を論ずるには季節変動を取り除いた2年程度の平均濃度値を用いる必要がある。このため、観測濃度から平均的な季節濃度変動を取り除いた平均濃度を算出した。本文中では「推定経年平均濃度」と記しているが、科学的には経年トレンド濃度と呼ぶべきものである。この値は、その前後半年の1年間の平均値とほぼ同じ値を示す。
(注2) 使用した平成27年2月以降の「いぶき」観測データは、最終的な検証前の予備的な結果。
(注3) 今回の算出に関わる詳細については、国立環境研究所「GOSATプロジェクト」の「月別二酸化炭素の全大気平均濃度 速報値」のページ(http://www.gosat.nies.go.jp/recent-global-co2.html)に記載した。
(注4) 平成27年1月は機器の調整のため、観測データが取得されていない。
(注5) 米国海洋大気庁が観測した地表面での二酸化炭素全球平均濃度の月平均値は2015年3月にすでに400 ppmを超えたと報じられている。
参考URL: http://research.noaa.gov/News/NewsArchive/LatestNews/TabId/684/ArtMID/1768/ArticleID/11153/Greenhouse-gas-benchmark-reached-.aspx

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