海洋資源保護で大臣令 トロール漁禁止・外国船許可停止 日系企業にも影響

 スシ海洋水産相は違法外国船の取り締まりと海洋資源保護に力を入れている。外国建造船の操業許可証の更新手続きの一時停止やトロール漁法(底引き網など)の全域禁止など、次々と大臣令を発布。各地の漁民や日系企業の活動にも影響が出ている。(佐藤拓也)

▼違法外国船の対策
 スシ海洋水産相は違法外国船撲滅のため、就任直後の昨年11月、外国船の営業許可証の更新を一時停止(モラトリアム)する大臣令(2014年第56号)を発令した。11月3日から4月30日の間に更新を控える30トン以上の外国建造船が対象。漁船の更新頻度は1年に1回のため、対象期間に更新を迎えた漁船は4月まで操業停止となる。
 また違法漁船による密輸を防ぐため、洋上で船から船に水産物を積み替えるトランシップメントを禁止する大臣令(2014年第57号)を施行した。これにより、洋上で獲れた水産物を陸地に卸すことが義務づけられた。
▼全域禁止に抗議も
 スシ海洋水産相は1月にトロール漁法(底引き網など)を全面禁止する大臣令(2015年第2号)を発布した。トロール漁法の禁止については、1980年代に一部の地域限定で禁止する大統領令が施行されていた。
 インドネシア漁民組合(HNSI)は底引き網の全域禁止に抗議し、「漁業の生産を著しく低下させ、漁業の継続が困難になる」と主張。また、今回の大臣令とスハルト政権当時の大統領令の整合性を問題視し、実行範囲を明確にするよう求めている。
▼積み替えに配慮を
 外国船のモラトリアムの施行により、一部の日系企業は営業停止を余儀なくされた。1974年からインドネシアでエビ漁業を営むドウィ・ビナ・ウタマ社は、11隻の漁船のうち1隻の営業許可が出ず、操業を停止。さらに、同社はトロール漁法でエビを捕獲していることから、全域での禁止により、事業の継続が困難になるという。同社の佐々木宣之社長は「どこの国でも、時期や地域を限定してトロール漁法を制限している。全域で禁止されては、漁にならない」と困惑している。
 一本釣りで漁獲したカツオやマグロの買付け業務を行なうオキシン・フローレスの藤原敏郎社長は、漁船上での積み替え禁止が地元の魚市場にも影響を与えると指摘。「違法外国船が密輸している中、規制することで効果は出るかもしれない。しかし、積み替え自体を禁止しては、保冷設備が整備されていない現状では、さまざまな市場に魚を届けることができなくなる」と懸念した。

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