【沖縄が危ない!】
政府は、日中関係が「正常な軌道に戻った」と強調するが、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域では、異常事態が進行している。中国公船「海警」の連続航行日数が過去最長に達し、領海侵入の日数も、7月時点で昨年1年間の総計を上回るハイペースなのだ。
中国が尖閣諸島の強奪に向け、実力行使のレベルをワンランク上げてきている。しかし、沖縄は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の反対運動に明け暮れ、迫る危機を直視する気配はない。
一方的に尖閣領有権を主張する中国は、周辺海域に「海警」を継続的に派遣している。領海外側にある接続水域では、海警の連続航行日数が6月に過去最長の64日間を記録した。その後も、台風襲来時などを除き、長期間の連続航行が続く。
尖閣周辺では、海上保安庁の巡視船が常駐体制で領海警備に当たっているが「海警」も明らかに常駐体制の構築を図っている。単に日本の実効支配を脅かすだけでなく「中国の実効支配」を誇示しようとする新たなフェーズに入ったと見るべきだ。日本としては正念場である。
ところが、尖閣周辺の離島住民に冷や水を浴びせたのが、ほかならぬ沖縄県の玉城デニー知事だった。
「中国公船がパトロールしているので、故意に刺激するようなことは避けなければならない」
尖閣周辺に出漁した石垣市の漁船が「海警」に追尾された事態について聞かれ、記者会見でこう発言したのだ。
石垣市や、周辺離島の宮古島市は「尖閣周辺は日本の領海ではないとの認識なのか!」と玉城知事に猛反発した。市議会は相次いで抗議決議を可決し、知事は発言撤回に追い込まれた。
玉城知事の親中姿勢は今に始まったことではない。
4月に訪中し、胡春華副首相と面会した際には、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」で「日本の出入口として沖縄を活用してほしい」と露骨にすり寄った。同じころ、尖閣周辺では「海警」が領海侵入していたのだから、いい面の皮と言うほかない。
「工事を強行する政府の対応は、民意を尊重せず、地方自治をもないがしろにするものだ」
玉城知事は6月の沖縄戦全戦没者追悼式で、辺野古移設を進める政府を改めて批判した。移設阻止に向け、7月には国との新たな法廷闘争に突入した。中国には融和的だが、日本政府にはめっぽう強気だ。移設反対派は「子や孫のため新基地を阻止する」と叫ぶが、果たして玉城県政は50年後、百年後の県民の評価に耐え得るか。今のままだと尖閣は、いずれ辺野古より、はるかに深刻な問題として沖縄にのしかかるだろう。
■仲新城誠(なかしんじょう・まこと) 1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県のメディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に『「軍神」を忘れた沖縄』(閣文社)、『偏向の沖縄で「第三の新聞」を発行する』(産経新聞出版)など。