バーバラ・ベスキンドさんは、子供の頃発明家になりたいと思っていた。そして91歳になった彼女は、その夢をカリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザイン・コンサルタント企業IDEO社のプロダクトデザイナーとして働くことでかなえている。
公共ラジオのNPRによると、ベスキンドさんは高校を卒業したら発明家としてキャリアを積みたいと考えていたそうが、そのためには工学の学位が必要だった。ところが当時の進路指導教官から、工学系の学校は女性を受け入れないと言われたため、ベスキンドさんは発明家の夢を諦めて軍隊に入り、作業療法士になった。
若い頃のベスキンドさん
一度は諦めた夢だったが、今から2年前に、IDEO社の創設者デビッド・ケリー氏がインタビューでデザイン部門に多様な人材を置く重要性について語っているのを聞き、ベスキンドさんはIDEO社に履歴書を送ることに決めたという。
「履歴書を書くのに約2ヶ月かかりました。9ページにまでふくらんだ分量を減らさなければいけなかったんです」とベスキンドさんは振り返る。「それから、手紙を添えて郵便で送りました」
IDEO社は、パロアルトの他にサンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ボストン、ロンドン、ミュンヘン、東京、上海に拠点を持つ世界的に有名な企業。「TODAY.com」によると、2014年にIDEO社の社員になったベスキンドさんは、これまで主に高齢者向けのプロジェクトに携わってきた。彼女はIDEO社の高齢者向け製品に携わるデザイナーたちに、彼女自身の経験をもとにして様々な製品への意見を提供し、さらに彼女自身も、自分が作った試作品をチームのメンバーに披露して、チームからの意見をもらっている。
「能力を発揮する上で、年齢は障害になりません。人生は冒険です。変化が起こることを期待し、それを受け入れるのです」とベスキンドさんは語っている。「91歳という年齢の素晴らしい点は、過去を振り返ると、人生で起こったさまざまな小さなことがどのように組み合わさって大きな出来事になったのかがわかることです。人生とは完成したパズルのようなものです」
そんなベスキンドさんは、社内で大変慕われているそうだ。チームのメンバーたちは、ベスキンドさんはIDEO社に新しい視点を提供してくれるだけでなく、彼女の持つエネルギーから元気をもらっていると述べる。
従業員のひとりジェイソン・デーラーさんは、ベスキンドさんにこう話しかける「私がやっている予算の組み立てなどは、それほど刺激的な仕事ではありません。でもあなたの話を聞いたり、物事へ向かう姿勢を見たりするだけで、やる気が出てくるんです」
ベスキンドさんも、会社での仕事を楽しんでいるようだ。TODAY.comの記事によれば、彼女は加齢黄斑変性のために視力に問題を抱えているほか、歩くときはスキーのストックを改良した杖を使っているが、仕事のペースを緩める様子はないという。
「情熱とクリエイティビティを持つ人たちが集まる刺激的な場所が、私には必要なのです。これまでやってきた仕事の中で、この仕事が一番気に入っています」と、彼女はウォール・ストリート・ジャーナルに対して語っている。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:佐藤卓/ガリレオ]
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