【レスラーめし】ファンを熱狂させた「四天王プロレス」田上明 壮絶な闘病体験とステーキ屋の話【鶴田と天龍】

192センチの身体から繰り出すパワフルな技の爆発力は「四天王プロレス」と呼ばれたレスラーのなかでもトップクラス。 現在は茨城県つくば市で「ステーキ居酒屋チャンプ」を営む、「ダイナミックT」こと田上明さんのめし話をうかがいます。

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喉輪落とし、オレが田上、秩父セメント!

食えたことも、食えなかったこともレスラーを作る。

新弟子時代から現在までの食にまつわる話を、さまざまなプロレスラーにうかがう連載企画「レスラーめし」。

 

18歳で角界入りし、玉麒麟安正(たまきりんやすまさ)のしこ名で活躍。その後、全日本プロレスに入団した田上明さん。

ジャンボ鶴田とのタッグで一躍成長し、世界タッグ王者を獲るなど躍進し団体のトップに食い込むように。

そして川田利明と聖鬼軍を結成、三沢光晴・小橋建太らとぶつかり合い「四天王プロレス」という至高のプロレスを作り上げたことは言うまでもありません。

 

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(写真提供・田上明さん)

 

1996年にはチャンピオン・カーニバル、三冠ヘビー級王座、世界タッグ王座、世界最強タッグ決定リーグ戦すべてを奪取するグランドスラムの快挙を果たし、四天王の中ではもっとも早く三沢さんを破って三冠ベルトを巻くなど、数々の記録も残しています。

 

2000年には全日本プロレスを離脱し、プロレスリング・ノア旗揚げの中心メンバーとなり、三沢急逝後は二代目社長としてノアの舵取りを行いました。

2013年に有明コロシアムで引退後、茨城県つくば市に「ステーキ居酒屋チャンプ」をオープン。

現役時代の写真が飾られた店内で、現在も自ら肉をさばいたり、近所のお客さんや遠方から来たファンをもてなしています。

 

クマにマムシにシカも食べた! 秩父ワイルド地帯

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相撲出身の192センチという体格で、四天王の中でも喉輪落としやダイナミックボムなど高さを活かした技で圧倒的な破壊力を誇った田上さん。

学生時代には全国高等学校相撲選手権大会で3位になるほどの成績を残していますが、当時から体格は大きかったんでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:身長は大きいほうだったけど、横幅は細かったよ。相撲の新弟子検査の時は、189センチで76キロとか、そんなもんだった。スマートでしょ?(笑)

 

──そのバランスだと、むしろヒョロヒョロじゃないですか! あんまり大食いって感じではなかったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうだね、人よりは食ったけど、そんなアホみたいに食うほどではなかったな。学校が県立だから寮生でめちゃくちゃ食わされる、ということもなくて、普通に家庭で好きな料理を食べるって感じだったんだよ。

 

──では子供のころの思い出のご飯ってなんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:やっぱりおふくろが作ってくれる料理だなあ。じゃがいもを天ぷらにしてね、味噌と砂糖で作ったタレをかけて食べる。秩父の田舎の郷土料理だよ。

 

──じゃがいもの天ぷらって珍しいですけど、美味しそうですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:まあ、基本は埼玉の山奥だからね。あとガキのころはポッケにいつも塩を入れててさ、学校帰りに畑からキュウリやトマトをもぎって、塩かけて食うんだよ。夏場なんかは桃をとったりしてね。あれはうまかったなあ。

 

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──アハハ、今は時効ということで(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:あと鮮明に覚えてることがあって、部活が終わってから「腹減ったなあ~」って帰ってくると、庭でオヤジと弟がなんか醤油で焼いてんだよ。いい匂いするなって見たら、いろんな肉と筒状のものが転がってんだよ。よく見たらヘビでさあ! マムシ焼いて食ってたの。

 

──ええ! それは誰が捕まえてきたんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:オヤジが猟をやってたからさ、マムシも捕まえてくるんだよな。それを「食うか~?」って言われても……。いつも腹は減ってけど、それはあんまり食べたいとは思えなかったよな。弟はそういう山のものも好きだったけど、オレはあんまりは好きじゃなかったよ。他にもクマとかシカとかウサギとか……。

 

──秩父って凄い……というかお父さんが凄い! そういうのを自分でさばいて食べてたんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうそう、オヤジは獣肉をさばけるんだよ。クマも食べたしね。うまくないよ、クマは! くさいし、硬いしさあ。ウサギだってうまくないよ! イノシシはボタン鍋とかあるくらいだから、食べようによっては美味しかったけど、やっぱり獣のにおいがするからな。味噌とかを足していかないとダメだね。

 

──しかし、昔の秩父ってそんな地域だったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:裏のぶどう畑に誰か勝手に入ってる奴がいるって言うんで文句を言いに行ったら、それがクマで腰抜かしたとか。近所でそういう話が普通にあったからね。

 

1食あたり3合のめしを食わされた力士時代

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(写真提供・田上明さん)

 

18歳で押尾川部屋に入門し、「田上」の名で初土俵を踏み、十両に昇進してからは「玉麒麟安正」に名前を改めました。

レスラーになってからも先輩たちに「玉ちゃん」「玉」と呼ばれていたのも、そのしこ名が由来です。

 

──では力士時代の話をうかがいたいんですが、さきほど入門の時の体重は76キロとおっしゃってましたけど、だったらめちゃくちゃ食べさせられたんじゃないですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:大変だったよ~、每日ノルマが決まってたからね。稽古の後のめしは、軽く1合は入るどんぶりを3杯は食わなきゃいけなかった。3合だよ? キツかったねえ。ズルして少なく盛ったりもしたけどさあ。

 

──ズルして!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そこはインチキしないとやってけないよお。2合くらいならいいけど、3合なんて食ったら、もう苦しくて動けなくなっちゃう。

 

──新弟子としてちゃんこ鍋とかももちろん作ったわけですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:当時も作ったし、今も店で鍋を出してるけど、ホントはあんまり作ってないんだよね。なにせ出世が早かったからね、アハハハ。

 

──出世が早かった人は、すぐにちゃんこ番から抜けられるところも実力社会ですね。前に同じ力士出身の天龍源一郎さんにもお話をうかがったのですが、当時いた相撲部屋ではちゃんこ鍋以外にも刺身や肉などサイドメニューもすごく豪華だったらしいですね。押尾川部屋はいかがでした?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:いやあ、天龍さんがいた二所ノ関部屋は由緒ある部屋だったし、ウチはそこから分家した部屋だったから、どっちかというと貧しい部屋だったんじゃないかな。食材なんかも親方や女将さんは苦労したと思うよ。

 

──最初は付き人をされてたわけですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうだね。青葉城関に付いてたんだけど、これがカタい人でねえ。それでもタニマチもいるんで、寿司とか焼肉とかいいところ連れて行ってもらったよ。
焼肉なんて、自分で食べるとしたら、上野の安い焼肉屋しか行ったことなかったからさ(笑)。叙々苑とかに連れて行ってもらったけど、当時は雲の上の上の店だったからね。

 

──巡業でもいろんな店に行ったりしたんじゃないですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:店にも行ったけど、オレらの時代は泊まりが宿じゃなくて「素人屋」っていって、要は後援してくれる人の家に泊まるんだよ。そこがいろいろ良いもんを出してもてなしてくれてね。キンキ(キンメダイ)のこんなでっかい煮付けとか、鍋もキンキのしゃぶしゃぶとかさ。うまかったなあ。

 

──その土地のいちばんうまいもの食わせてくれそうですもんね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうだね。どこだったか忘れたけど、イカのワタが詰まってる、ポンポン焼きっていうんだっけ? ああいうのとか美味しかったなあ。

 

──埼玉では食べられない味がいろいろと。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:特に九州の食いものが好きでね。あっちの焼き鳥屋って出てくるのが豚バラじゃない? 鶏もあるけど主役は豚で。それに三杯酢みたいなのかけて、つきだしにキャベツが出てくる。こういうスタイルもあるんだな~って思ったもんだよ。
あと屋台に行くと、若いネエちゃんが豚足かぶりついてて、すごいな! と思って食べてみたら、たしかにうまいもんね。おかわりするくらい食べちゃって、ニキビが出来てしょうがなかったの覚えてるよ(笑)。それから豚足が大好物になっちゃって、今はウチの店でもやってるからね。

 

渕さんと志村けんさんの思い出

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角界を離脱してからは、三遊亭楽太郎や天龍源一郎らの勧めもあって、1987年にプロレス入りを決意。全日本プロレスで新弟子として稽古をはじめることになります。

 

──新弟子とはいえ、相撲の経験もあるから一からやるって感じではなくて、ちゃんこ番みたいなことはやる必要もなかったそうですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:でも、たまに渕さん(渕正信)なんかが「イワシのつみれ作れ!」とか面倒なこと言ってくるんだよ。イヤになったね。それでミンチにする機械をわざわざ持って行ってさあ。

 

──あははは、田上さんがイワシをミンチにする機械を買ったって話は小橋さんからも聞きました。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:あのころは渕さんが全部練習を見てたからね、合宿所のボスだったから、めしのこともだけど、プロレスも全部教えてもらって。ちょっと面倒だったけどね(笑)。

 

──渕さんのどの辺が面倒だったか、教えてください!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:え~、渕さんの話はねえ、やばい話ばっかりだから! 笑ったのはさあ、女優のTさんに熱上げちゃってさ。亡くなった志村けんさんと渕さんが仲が良かったから、その縁で飲み会かなんかで会ったことあるらしくて。

 

──渕さん、志村さんにそんなお世話になってたんですね!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:志村さんが気きかせてくれたんじゃないかと思うんだけど。それからもう「田上、Tさんにプレゼントを送ったけど、返ってこないんだ! どう思う、これ?」とか相談されたりして(笑)。

 

──そんなの知りませんよ、って話ですよね(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そんなの普通、「向こうに気がないんじゃないですか?」って思うじゃない? くっだらねえけど、大先輩だしさあ。そうも言えないよな(笑)。あとめしの話だったら、渕さんと一緒に焼肉屋に行くと、ミノとかホルモンとか、自分の嫌いなもんばっかりオレに押し付けてくるんだよな……うーん、渕さん、いい話がないなあ。嫌いじゃないけどよぉ。

 

──素晴らしいレスラーなのは間違いないです(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうだねえ、あといろいろ連れて行ってくれた先輩って言ったらカブキさん(ザ・グレート・カブキ)だよね。カブキさんはいろんなところに連れて行ってくれたよね。ジジイだから変な店を知ってんだよ、スッポンの店とかさあ。あとマイティ井上さんとか、ラッシャー木村のおじさんとかにもいろいろ連れて行ってもらったね。

 

──そうそうたるメンツですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:木村さんとオレとで味の好みが合うのかわかんないけど、札幌のホテルの裏にうまい味噌ラーメン屋があってさ。そこに行くといつも同じ時間に木村さんがいるんだよ。「おう、玉、よく知ってんな。ここのラーメンうまいだろ?」っていつも言われてたね。波長が合うのか知らないけどさ。

 

──ちなみに馬場さんとのめしの思い出ってあります?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:馬場さんともめし行くことはあったけど、馬場さんはその時の付き人と和田京平さん(※全日本プロレスのレフェリー)、あといつも「お姫様」が一緒だからね。ふふふ。

 

──「お姫様」って、奥さんの馬場元子さんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:馬場さんよりもそっちの方が気を使うんだよなあ(笑)。でも奥さんに俺はかわいがってもらったからね。行くところ行くところ、うまい店ばかり連れて行ってもらったよ。

 

天龍さんと鶴田さんは正反対のタイプ

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──それと、やっぱりお酒の話も聞きたいんですが!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:まあ、相撲部屋ってのはとんでもない酒豪ばっかりだからさあ。 

 

──そういう時代でしょうね……。では全日本時代でお酒と言えば?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:やっぱり、天龍さんにはとにかく飲まされたねえ。山形の鶴岡温泉だったかな、トイレに行った帰りにいきなり襲われて、鼻をつままれてなんか濃いやつを無理やり飲まされたんだよな。それで気がついたら廊下でぶっ倒れるように寝ててさ。目が覚めたら口にはアロエかなんかを突っこまれてたなあ。

 

──そ、そんなにベロベロになるまで!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:なにがあったのかなんてわっかんないよ、天龍さんに聞けよ~。それ見てあの人、喜んでんだもん。天龍同盟の時代はホントひどかったよ。他にも「木村さんの誕生日だ」って飲みに行ったら、またガーッと飲まされて。気づいたらまたイタズラされてて、寝てるオレの上に山のように椅子が積まれててさ。

 

──天龍さんがらみはいろんなことあったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:まあ、オレがプロレス入りした時に口添えしてもらった人だからね。お世話になったよ。でもひどい思い出も多いよね(笑)。うちの女房が昔、スナックやっててね、オレはその店があるビルの上の階に住んでたの。その店に天龍さんが飲みに来る時は「田上、借金返せ~!」って大声で近所に聞こえるように叫んでから帰るんだもん。別に金なんて借りてないのにさあ。最悪だよ~! 悪ふざけがひどい。

 

──ワハハハ、天龍さんが大声で叫ぶのは近所迷惑すぎます(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:あとは、天龍さんのデビュー何周年だったかな? 「馬場さんとこにお米(※相撲・プロレス界の隠語で、ご祝儀のこと)をもらいに行ってきてくれ」って言われてさ。要はお祝い金だよね。それで馬場さんの家にご祝儀を受け取りに行ったんだけど、なぜか馬場さんが本物のお米の中に(隠して)祝儀を入れて渡してくれたんだよね。それを持ってって天龍さんに渡したら「これは何だ! 本物の米を持ってくるやつがあるか!」って怒られてさあ。

 

──田上さんがとばっちりに(笑)。しかし、馬場さんもそういうイタズラするんですね。それと、そのころの全日本というと、田上さんはジャンボ鶴田さんともタッグを組まれてましたよね。一緒にご飯に行ったりはなかったですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:鶴田さんはね……もう天龍さんとは逆だよ。天龍さんはひどい悪ふざけもするけどさ、後輩のめしは全部おごったりする。そういうところは相撲の流儀だよね。でも鶴田さんはぜんぜんおごってくれないんだよな。

 

──財布の紐が固い(笑)!

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:でもね、鶴田さんにはゴルフに連れて行ってもらったことがあったの。その帰りにラーメンをおごってもらったんだよな。その話を控室でみんなにしたら、みんなものすごくビックリしてたからね。おごってもらった後、前が見えないくらいどしゃ降りの雨が降ったけどね(笑)。

 

田上さんを夜中に呼び出す若手レスラーとは

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──田上さんというと、聖鬼軍時代に川田さんと長らくタッグパートナーとして一緒でしたが、一緒にめしに行くことはありました?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:行かないねえ。もうそのころは付き人がいるからさ。そいつらと行っちゃってたね。川田もホラ、一風変わってるじゃない? そう言えば、あいつが付き人とめしに一緒に行ってるのはあんまり見てないね。

 

www.hotpepper.jp

 

──以前、田上さんが全日本を離脱した後に川田さんの付き人をされてたタイチ選手に取材したんですが、夜中に突然呼び出されたりして大変だったそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そんなのまだいいよぉ。オレなんか逆に付き人からむちゃくちゃさせられたよ! 夜中2時ごろ、付き人からオレんとこに電話かかってくるんだもん。「田上さん、いまから飲みにきてくださいよ!」って。お前ブッ飛ばすぞ! って思ったよね。

 

──それはひどい! ちなみに誰ですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:森嶋!(森嶋猛)バカだろアイツ、もうほんとに……。

 

──深夜に田上さん呼び出すのは勇気ありすぎですよ! 他に付き人で大食いの選手や酒飲みはいませんでしたか。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:あんまり大食いだったヤツはいなかったかなあ。杉浦(杉浦貴)は神経質だったしなあ。女装しているママがいるような、ちょっと賑やかな飲み屋さんってあるじゃない? まだ入りたてのころ、そういうところに連れて行くと、アイツも気取ってやがってさ、店の端っこでモジモジしてんだよ。ああいう店が大の苦手だったのが、今はなにアレ! すごくなっちゃったじゃん。

 

──今はもう完全に飲み屋さん大好きなイメージですけどね(笑)。最初は固かった。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:ホントに「元・自衛隊!」って感じでさあ。すげえ(性格が)固いっていうんで、飲みに連れて行ってほぐしてやったら、ほぐれすぎちゃったよな(笑)。

 

──田上さんはけっこう後輩を飲みに連れていくタイプの先輩だったんですね(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:まあねえ。でも、三沢(三沢光晴)ほどじゃないよ! リングの上で味方になることもなかったから、一緒に飲むことはぜんぜんなかったけど、他の選手からは「三沢さんは長っ尻で困ります……」という話はよく聞いたよね。いちど飲みに行ったら、お日さまが出るころに帰ってきてたらしいから。

 

──三沢さんについて川田さんが言ってたエピソードがあって、素人に「技かけてください」ってお願いされると、かなり本気気味のエルボーを入れてたとか。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:ホントに? いやー、怖い! 素人に打撃なんてやっちゃだめだよ~、それでケガさせちゃたまんないからね。オレなんかファンサービスでやるとしてもせいぜいヘッドロックくらいだよ。頬骨キュッと締めてやるとヒーッ! てなるからさ。「なんだよ、ヘッドロックもダメのかよ」って言ってやるけどね。

 

川田もたまにウチにきて「家賃が高い」とかってボヤいてるよ

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2013年のプロレス引退後、2017年に茨城県つくば市で奥様が経営されていた居酒屋に、ステーキメニューを加えて「ステーキ居酒屋チャンプ」を新装開店した田上さん。ステーキの焼き方を教わったのは、元レスラーであり「ステーキハウス ミスターデンジャー立花本店」オーナーでもある松永光弘さんでした。

 

──ステーキの焼き方を教わったのが松永光弘さんというのが意外でした。元W★INGとノアがなぜ?っていう。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:松永さんと齋藤(齋藤彰俊)が同級生っていうのもあって仲が良くって、その縁で自分も親しくなって、松永から引退試合もノアでやらしてくれって頼まれてやってあげたりしてたからね。それにうちの息子があそこのステーキ好きだったんだよ。それでステーキ屋をやるっていうんで、肉を柔らかくするさばき方を習いに行ったの。

 

──何日か修行した感じなんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:いやあ、一時間くらい(笑)。オレは釣りをやってたから、魚はさばけるんだよ。包丁は使えるから、とりあえず肉のさばき方だけ教えてもらったんだよね。あとはもう見よう見まねで。

 

──タッグパートナーの川田さんとは、奇しくもどちらも飲食店オーナーということになりました。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:たまにウチにも来てくれたりするよ。別に飲食やってるからって難しい話はしないけどね。ボヤキばっかりだよ、家賃が高いとかさあ。でもあそこも10年もやってんだから、けっこう儲かってんじゃないの? 飲食店としてはあんな立地が悪いところだけど……って、オレんちほど場所が悪いわけじゃないけどな(笑)。

 

胃を全摘した大手術から復活した「不屈のプリンス」

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──居酒屋を経営しながらプロレスファンのお客さんたちを出迎える、落ち着いた引退後の生活……と思いきや、2018年に自宅で倒れ、診断すると胃がんが発覚。胃を全摘手術するほどの大手術となりました。しかし現在では普通の食生活で過ごされています。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:最初は胃潰瘍で入院して、ホント死にかけたよ。血圧が上が60で下が40まで下がって、家族全員呼ばれたんだから。不整脈だったから、それまで血液がサラサラになる薬を飲んでた。そのせいで血が止まらなくなっちゃってさ。いやあ、キツかった~。

 

──そこをクリアしたのは、やはりプロレスラーの体力ですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:そうなのかねえ。これまで大病なんかしたことなかったからね。不整脈はあったけど。あとは痛風(笑)。

 

──本当に元気になられてよかったです。胃を全摘されてますが、食生活は変わりました?

 

f:id:Meshi2_IB:20200427171928p:plain田上:お酒も飲むし、ご飯も普通に食べてるからね。ちょっとセーブしてるくらいであんまり変わらない。酒は週1で休肝日をとってるけどね、本当は2,3日くらい取らなきゃダメだってかあちゃんに叱られてる(笑)。
そういや昔、カブキさんがあんころもちを食いながら日本酒を飲んでたんだよな。「これがうまいんだよ~」って。当時は「その組み合わせ、変だろ」と思ってたけど、最近オレもまんじゅうを食いながら日本酒飲んでるから、トシ取ったらそうなっちゃうんだなってわかってきたね(笑)。

 

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近所の仲間がカウンターに集い、今も全国から、時にはヨーロッパからプロレスファンが田上さんを訪ねて来るという「ステーキ居酒屋チャンプ」。

 

そこに行けば、田上さんも芋焼酎を片手に迎えてくれるはず。

現役時代のパネルが囲まれた店内で、四天王プロレスを支えた巨人の雄大さを今も感じることが出来ると思います。

 

店舗情報

ステーキ居酒屋チャンプ

住所:茨城県つくば市茎崎1815-50
電話番号:090-9000-0335
営業時間:火曜日~日曜日17:00~23:00 ※土曜日・日曜日のみランチ営業有り11:30~14:00
定休日:月曜日

twitter.com

 

書いた人:大坪ケムタ

大坪ケムタ

アイドル・グルメ・芸能etcよろず請け負うフリーライター。メシ通での好評連載『レスラーめし』(ワニブックス・刊)が書籍版のみの追加エピソード、小林邦昭☓獣神サンダー・ライガー対談も特別掲載して絶賛発売中!

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