キングオブコント優勝者がカレーをつくる！？　かもめんたる槙尾が手がけるスパイスカレー「カリガリ　マキオカリー」

キングオブコント優勝者がつくるカレーとは？

令和2年1月、三軒茶屋に話題の間借りスパイスカレー屋ができた。

以前メシ通でも取り上げたことがあるアイドルに出会えるというカレー屋の系列店だとか。

www.hotpepper.jp

なんでも噂によると、こちらの間借りスパイスカレー屋は、あの『キングオブコント』のチャンピオンがカウンターに立っているのだそう。

ど、どういうことだろう……？　芸人がカレーを？　その謎を解明すべく、是が非でも行かねばならぬ。

ということでさっそくやって来た。

三軒茶屋駅から徒歩1～2分、国道246号線を環七方面に歩いていくと「三軒茶屋　カリガリ　マキオカリー」というのぼりと立て看板……。

2階を示す看板には「芸人BAR　PUNCH LINE」の文字が。

どうやらこちらのカリガリは、BARをお昼の時間帯に間借りする形で営業しているようだ。

階段を上ってドアを開けると、なんとも素敵な、アメリカンな雰囲気のバーカウンター。

そして、カウンターに立っていたのは、この男！

第6回（2013年） 『キングオブコント』優勝　かもめんたる・槙尾ユウスケ氏！！

なんでまた「キングオブコント」チャンピオンが、間借りスパイスカレー屋のカウンターに立っているのか？？？

その経緯＆エピソードに興味津々だが、かなり腹ペコの状態で訪店したので、まずはそのスパイスカレーをかっ喰らうとしよう！

こちらがメニュー。

「カリガリ　マキオカリー」と「カリガリ　超スパイスマキオカリー」の2種類のカレーと、その2つをあいがけにしたカレー、さらにいくつかのトッピングがついている“DX”があるようだ。

ここはせっかくなので、あいがけでトッピングも豊富な「あいがけマキオカリーDX」（税込1200円）をいただくとしよう。

ほどなくして着皿！

▲「あいがけマキオカリーDX」（1200円）

おー、2種類のカレーといろんなトッピングに、ワクワク＆ドキドキ！

そして俯瞰画像がコチラ！

うひょー、画像では伝えられないのがザンネンですが、ほのかに立ち昇る湯気から漂うよい香り！　そしてアーティスティックな見た目が、写真映えしますねー。

トッピングの種類は何だ？

メニューを見てみると......

• パクチー
• ココナッツサンボール（スリランカのふりかけ）
• アチャール（インドの玉ねぎのお漬物）
• 煮卵
• レタス

へー、これだけあると、いろいろ混ぜて味変させながら食べるのが楽しみだなぁ！

なんて思いつつ、メニューをひょいと裏にひっくり返すと…

裏メニュー「マキオカリーSP」（1500円）の文字。

2種のカレーにトッピングをのせた「あいがけマキオカリーDX」に、さらにチーズとナッツとレモンが付いた、フルトッピング！！　（しかも、お店オリジナルの特製ステッカー付き）

トッピングが各100円だから、3種のトッピングとステッカーでプラス300円……って、ちょっとお得なわけだな。

ということで、いまからトッピングを足してもらって「マキオカリーSP」に変更の巻です。

よろしくお願いしまーす！

▲裏メニュー「マキオカリーSP」（税込み1500円）

おー、さらに賑やかになって、見た目にも楽しい！　1種選べるステッカーも可愛い！

よくラーメンで「野菜・アブラ増し増しで！」なんて注文の仕方があるけど、こちらはトッピングが増すだけでなく“ワクワク感増し増し”でもあるな。

はやる気持ちを抑えつつ、優しくカレー入刀（？）といきましょう。

まずは、色の濃い「カリガリ　超スパイスマキオカリー」を単体で味わってみようぞ。

おー、香りがよくて、めっちゃスパイシー！　

身体の芯からあったまって、吹き出す汗・汗・汗……。

さすがの“超”である。スパイシーさは伊達じゃない。

しかし、ただ辛いだけにあらず。口にすると、さまざまなスパイスが複雑に絡み合った香りがフワッと浮かび上がり、そのあとで香りの向こう側から厚みのあるコクが迫ってくるのだ。

それもそのはず！　種子から挽いたカルダモン・クミン・シナモン・アジョワンなどを中心に、20種以上のスパイスをふんだんに使用し、大量のたまねぎ・ニンニク・生姜・鶏肉とともに煮込んでいるのだそう。

加えて、鶏肉は形が見えないほどに煮込まれて細かな繊維になっており、もはやソースと化している。実に、手間とコストのかかった、香りとコクが豊かなカレーだ！！

心地よいスパイシーさを味わったあと、お次はタイカレーを和風にアレンジした、もう一方の「カリガリ　マキオカリー」をいってみましょうか。

トッピングも楽しむべく、ココナッツサンボールとアチャールをのせてカプッと……。

おーおー、これは優しい甘みが口に広がるぅー！

ルウは豚肉や鶏肉、玉ねぎ、チーズ、にんにく、しょうがなどを圧力鍋で約15時間じっくり煮込み、そこにクミンやコリアンダー、ターメリック、チリ、シナモンなどのスパイスとココナッツミルクを入れて味を調えているのだとか。

さっきはスパイスが“超”、こちらは手間と優しさが“超”！！

そして、トッピングがいい仕事をしておる！

ココナッツ・ファイン（粉末ココナッツ）に青唐辛子や鰹節などを加えた、ココナッツサンボールが風味と爽やかな辛味をプラスしてくれて、さらにアチャールのシャキシャキ感と酸味が加勢し、口の中が何とも面白い。

ちなみにこのカレーは、かつて銀座の某老舗高級クラブで裏メニューとして愛されていたカレーのレシピでつくられているのだそう。

夜の銀座じゃなく、昼の三軒茶屋で、安価に老舗高級クラブの味を楽しめるとは、“お得さとお金持ち気分も増し増し”だ。

さて最終形態、2種のカレーを口の中で出会わせる時がやって参りました。

辛さ際立つ「カリガリ　超スパイスマキオカリー」と、優しい甘みの「カリガリ　マキオカリー」、そこに皮まで安心して食べられるレモン・ナッツ・パクチー・ココナッツサンボール・チーズ・アチャールと、これでもかとふんだんにトッピングをのせて、いざお口へGO！

はい、キターーーー！　

辛さと甘さ、酸味と香りに風味や食感、コクが、何十層？　何重奏？　にもミルフィーユやー！

お口の中がパレード、フェスティバル、カーニバル。

ススム、ススム、止まらん、うぉーーーーー！

ごっそうさーん！

いやぁ、あと引く辛さ、優しい甘さ、食感や味わい溢れるトッピングが相まって、たまげるバランス＆美味さでっせ。

さぁ、カレーが美味しいのはわかった。

ますます、ここに至った経緯＆エピソードが気になる！

聞いてみるとしよう。

「なんでまた『キングオブコント』チャンピオンが間借りスパイスカレー屋のカウンターに立っているのか？？？」の理由に迫る

──何がきっかけで間借りカレー屋のカウンターに？

槙尾氏：昔から、カレーづくりが好きで、ホールスパイスを使って家でオリジナルカレーをつくったりしていたのですが、そんな中、僕らお笑いコンビ・かもめんたるが出演しているラジオ番組のスタッフさんから、「カレー屋『カリガリ』の代表・二木さんが“芸人さんとコラボしてみたい！”とおっしゃっていますよ」と誘いを受けたのがきっかけです。

ちなみに「カリガリ」は、「神田カレーグランプリ2019」で優勝したカレー屋さんで、ウチ以外の間借りやFCなども合わせると、東京や大阪におよそ10店舗あるんです。

──そうなんですね！　えっ、それにしても、キングオブコント2013チャンピオンの「かもめんたる」が、なぜまた実際にカウンターに立つことに？

槙尾氏：実は最近、相方の岩崎う大が“劇団かもめんたる”にかなり専念していて、コンビではほとんど活動できてないんですよね……。

で、僕も何かやらなきゃということで始めたのが、間借りスパイスカレー屋だったんです。

──「劇団かもめんたる」？　コンビ「かもめんたる」じゃなくて？

槙尾氏：ええ。お笑いコンビ・かもめんたるとしては、なかなかオファーが無い中、いろいろな思いがあり、相方が劇団員を入れて劇団かもめんたるをつくりました。実は、劇団には僕も参加してます。

本当はもっとお笑いコンビ・かもめんたるとしてたくさん活動したいし、単独ライブもやりたいんですけどね。

──あっ、その話ですね。先日出演されたTV番組をきっかけに、お笑いファンの間でも話題になっているみたいですね！

槙尾氏：そうなんです。テレビ東京『ゴッドタン』の“腐り芸人セラピー”という企画で、最近、コンビ活動が少ないことを相談したら、セラピーしてくれる芸人に

「劇団かもめんたるに専念すりゃいいじゃん」「かもめんたるの成長として、とらえたらどう？」「賞も獲ったし、もういいじゃない、2人でやるネタは」「ネタを書いていないお前には、何も言う権利はない」「もともと、劇団員のひとりだったんだよ」

などと、散々に言われました（笑）。

そして、とうとうこの間、相方が書いた劇団の台本が“演劇界の芥川賞”と呼ばれる『第64回 岸田國士戯曲賞』の最終候補8作品に選ばれて、ますます劇団かもめんたるの比重が……。

──番組見ました！　あのイジられ方、めちゃめちゃおいしかったじゃないですか！　カレーと同じくらいおいしかったです。

槙尾氏：あっ、はい……。複雑な気分でしたが……。

──番組でも話していたとおり、ネタづくりは完全に相方さんですか？　『キングオブコント』優勝の時も？

槙尾氏：はい、相方のネタに惚れ込んでるんで。ネタは完全に相方がつくって、僕は少し意見を言うくらいです。

──なるほど。ちなみに、お店で出されているカレーについて、槙尾さんはどこまで関わっているんですか？

槙尾氏：2種類のカレーは、間借りスパイスカレーのコラボを提案してくださった「カリガリ」のものです。僕は、そのカレーに合うトッピングを考えて、他の「カリガリ」の店舗ではのっていないトッピング（ココナッツサンボール・ナッツ・レモン）や盛り付けでつくっています。

──そうなると、コンビ「かもめんたる」のコントづくりと、「マキオカリー」のカレーづくりは、ほぼ同じシステムですね？

槙尾氏：はい、全くその通りです（笑）。いまは開店したてなのでこのラインナップですが、さらに新しいトッピングも増やしていきたいですし、僕オリジナルのカレーもつくってメニューに載せてみたいです。

──おー、それは楽しみ！　コンビネタのほうも、相方さん作じゃなく、槙尾オリジナルのものをつくったり？

槙尾氏：いや、ネタをつくるのは恐れ多いです！

とのことでした。

これからのオリジナルネタ！　……ではなく、カレーに期待です（笑）。

でも、冗談抜きで凄いよね、このカレー。

カウンターに立つ人間は『キングオブコント（KOC）』で優勝。

カレー自体も『神田カレーグランプリ2019』で優勝という、つまりは“キングオブカレー”のような存在。

よく考えたら、Conte（コント）とCurry（カレー）の、KOC2冠やん！

実は、間借りスパイスカレー屋のカウンターに立った理由はこれだけではなかった！

槙尾氏を取材した翌日、彼とのコラボを提案したという「カリガリ」の代表・二木さんにもお話を聞くことができた。

二木代表：槙尾君は仰らなかったと思うのですが、コラボしたのは「カレーが好き」とか「稼ぐため」とか、それだけが理由ではないんですよね。

──詳しく聞かせてください。

二木代表：確かに、かもめんたるは『キングオブコント2013』で優勝しました。にもかかわらず、やはりお笑いは厳しい世界。現在は、コンビでは思うように活躍できる場がなかなかありません。そんなタイミングで、昨年、槙尾君と出会ったんです。この「カリガリ　マキオカリー」を始めるにあたって、彼としては後輩たちに、お笑いだけではない道をつくりたいと思ったようですね。

──どういうことでしょうか？

二木代表：私としては、かもめんたるの後輩芸人も含め、複数の店舗で間借りカレーを同時に始めるのもよいのでは？　と思いましたが、槙尾君は非常にまじめな男。まず、自分が失敗せずにできるという姿を示し、成功の道筋をつくってから後輩を紹介したいと。才能はあるけど、まだ稼げていない後輩芸人たちに、芸人を続けながらでもできる“稼ぎ方”の道をつくりたいんだと思います。

わぁ……なんかええ話聞いてもうたなぁ。

若手芸人界の新たな生き残り方、働き方改革までも提案していたのか。

おそらく、一般の方が考える何百倍も凄い『キングオブコント』優勝という称号。

それでも一筋縄にはいかない。それがお笑いという世界なのだ。

第6回『キングオブコント』に参加した2988組の頂点に立った、お笑いコンビ・かもめんたる。

優勝後は、あらゆるネタ番組やバラエティー番組に出演したものの、やがて、コンビでの活動の場は少しずつ減っていった。

しかし形を変えて、いまは“劇団かもめんたる”としての活動が増え、相方さんの台本は“演劇界の芥川賞”とも呼ばれる『第64回 岸田國士戯曲賞』の最終候補作品に選出されるまでに。

そんな中で、自分の立ち位置を模索しながらもガムシャラに前に進む、槙尾ユウスケ氏。

言うなれば「カリガリ　マキオカリー」は……

【曲がりなりにも『キングオブコント』で優勝した芸人が、曲がりくねった道を歩みつつ、自分の今の道と後輩の未来の道のために導き出した、究極の曲がり道……いや、曲がり（間借り）スパイスカレー屋】

なのかもしれない。

人生って、大きな成功を勝ち取ったとしても、その成功がずっと続くとは限らないし、本当に思いどおりいかないことだらけだ。

でも、思いどおりいかなかったからこそ、新たに出会える人と縁がある。

そのまま大成功も良いけど、チャレンジし続ける“曲がり”人生って素敵だ！

そう思わせてくれるのが「カリガリ　マキオカリー」だ。

いろんな気持ちがない交ぜになって、いろんな食材が混ざり合って……。

さまざまな要素が複雑に絡み合う「カリガリ　マキオカリー」の、優しくもスパイシーなカレーを、ぜひ体感して欲しい。

お店情報

『カリガリ　マキオカリー』

住所：東京都世田谷区三軒茶屋1-32-12 西沢ビル2F（「芸人BAR　PUNCH LINE 」のランチタイムに間借り）

mail：[email protected]

営業時間：11:30～14:00 （LO 13:50）

定休：不定休（営業日はtwitterとInstagramにて更新するので確認してほしい、とのこと）

https://twitter.com/caligarimakio

https://www.instagram.com/caligarimakio/

書いた人：クック井上

フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと！スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。

• X：@cook_inoue
• Instagram：cook_inoue
• ブログ：料理芸人・クック井上。の「ようこそブログへ　クック　クック♪」powerd by Ameba

過去記事も読む