驚いたことに、アルツハイマー病の45%はヘルペスウイルスが腸から脳に移動することが原因の可能性であると示唆する研究が発表された。
研究で分かったことは?
アメリカの研究チームの科学者たちは、神経変性疾患(何らかの原因により脳や脊髄の神経細胞が徐々に失われ、物忘れが多くなったり(=認知症)、手足がうまく動かせなくなったりする病気)で死亡した人の脳に、エビデンスとなるサイトメガロウイルス、別名ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を発見した。
HCMVは9つあるヘルペスウイルスの1つ。だが、性感染症とは別のものだ。ほとんどの場合は、40歳以前にHCMVに感染する人が多く、一般的には生涯にわたって胃腸内に潜伏している。
だが、アルツハイマー病患者の脳を死後解剖したところ、ウイルスは腸のみならず、腸と脳を通す通信経路である迷走神経にまで、このウイルスがあるのを発見。
そこで研究チームは、ヘルペスウイルスが活発になり迷走神経を通って脳にまで達する可能性があると考察。HCMVが免疫システムを活性化し、脳細胞の通信を阻害するアミロイド斑やTauタンパク質と神経原線維変化を形成する一因になっているようだ。
また、腸内感染をおこした人は、していない人と比べ炎症に関係する免疫細胞が多い一方、髄液にはHCMVに対する抗体があることも発見した。
ヘルペスウイルスはどのように拡散する?
HCMVは通常、体液に触れることで広がり、ウイルスが活発な時にだけ感染する。
「私たちは、アルツハイマー病患者の25〜45%に影響を及ぼす可能性のある、生物学的に珍しいアルツハイマー病の亜型を発見したと考えています」と、アリゾナ州立大学の神経変性病の専門家ベン・レッドヘッド博士は言う。
「この亜型のアルツハイマーには、顕著な特徴のアミロイド斑やTauタンパク質と神経原線維変化(診断の決め手となる極小の脳異常)があり、ウイルスや抗体、免疫細胞の明らかな生物学的特徴が見られます」
アルツハイマー病予防のために行われていることは?
研究者たちは現在、抗ウイルス剤で治療してアルツハイマー病を防ぐことができるよう、慢性の腸内感染症の人を特定する血液検査に取り組んでいる。
研究論文主筆で、アリゾナ州のバナー・アルツハイマーズ・インスティチュート常任理事エリック・レイマン博士は「アルツハイマー病の研究や細分類、治療、予防に影響を与えるやり方で、今まで以上に研究を活発化できることを嬉しく思います。今回のチャンスには心からワクワクしていますね」と述べた。
また、アルツハイマーズ・リサーチUKの研究ディレクター、ショーナ・スケールズ博士は「今回の研究は小さいながら、しつこい消化管感染の原因となるウイルスが免疫システムに影響を及ぼし、アルツハイマー病を引き起こす可能性があることを発見しました。100%の答えを出すには時期尚早ですが、アルツハイマー病につながる初期症状を説明するのに必ず役立つ結果といえます。この研究が将来のアルツハイマー病の治療や診断方法に新たな可能性をもたらしたことは、非常に喜ばしいこと」と述べた。
Translation: Mitsuko Kanno From Womens Health