博士後期課程1回生の奥内蒼馬さん(久代恵介研究室)が日本スポーツ心理学会第51回大会で最優秀発表賞を受賞しました

奥内蒼馬さん(博士後期課程1回生 認知・行動・健康科学講座 久代恵介研究室)が,2024年10月25日に日本スポーツ心理学会第51回大会にて最優秀発表賞を受賞しました。奥内さんの研究題目と研究の概要は以下のとおりです。

研究題目「重力がフィッツの法則成立性に及ぼす影響の運動学的評価」

研究概要
 本研究では重力がヒトの上肢運動に及ぼす影響を評価し、ヒトが無意識下で重力の影響を巧みに制御しながら運動していることを明らかにしました。
 ヒトの身体運動は、速さと正確性がトレードオフの関係をなします。今から70年前、これらの関係性に着目したフィッツは、運動に要する時間が標的までの距離と標的サイズを用いた簡単な対数式(MT = a + b × log(2A/W)、MT 運動時間、A 距離、W 標的サイズ、aとbは定数)で表せることを見出しました(Fitts 1954)。この式はフィッツの法則と呼ばれ、ヒトの運動現象を説明するモデルとして広く知られています。
 通常、私たちが行う上肢運動は運動開始直後に加速してピーク速度を迎え、その後、手が標的に近づくにつれて減速する釣鐘状の速度曲線を描きます。今回の研究では、上肢運動を鉛直上下方向に行わせ、重力が上肢運動の加速/減速の各局面に及ぼす影響をそれぞれ定量しました。これにより、重力が運動方向に依存して上肢運動に異なる影響を及ぼす様子を評価・検討しました。
 その結果、下方向の運動では、重力は加速局面では運動を促進するが手を標的に合わせる減速局面で運動に強く干渉するため、上方向よりも長い運動時間を要することがわかりました。さらに下方向の運動では、標的の大きさが小さくなること(運動が難しくなること)の影響を強く受けやすいことがわかりました。これらの結果は、私たちの身体運動が環境からの外力の影響を常に受けていることを可視化するとともに、それらの影響を無意識下で制御するヒトの洗練された運動生成システムの性質を表していると考えられます。

奥内蒼馬さん  最優秀発表賞賞状

 

人間・環境学研究科パンフレット 総合人間学部パンフレット
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