大学院人間・環境学研究科(人環)の大学院生および総合人間学部(総人)の学部4回生より、研究内容や学生生活をご紹介します。
- 大学院人間・環境学研究科
- 総合人間学部
-
フラクタル日除けとその影。
後ろの建物は人間・環境学研究科棟岡本拓己 [数理・情報科学講座 角大輝研究室 修士1回生]
研究分野: エルゴード理論 フラクタル
総合人間学部時代から角研究室に所属しています。専門は解析学で、特にフラクタル図形とその背景にある反復関数系に興味があります。フラクタル図形とは、簡単に言うと「拡大すると全体と似た形が現れる図形」のことです。「フラクタル日除け」という、フラクタルの概念を応用した人工構造物もあります(写真参照。フラクタル日除けの影にもフラクタル的な構造が現れている)。これは総人・人環が発祥ですが、学部1回生のときに「フラクタル日除け」に関するエピソードを複数分野の先生から聞いたことで、フラクタルに興味を持つようになりました。
研究室では、指導教員や同期とともに専門書や論文を読むセミナーや、学部生と院生で行う微分積分学の復習セミナーに参加しています。特に専門書のセミナーは大変で、数行を理解するのに2週間以上かかることもありますし、しっかり準備をしたつもりでも不備を指摘されることもあります。しかし、こうした経験を通して数学的な思考力や技術力が身につき、一つの問いに対して深く考える力が鍛えられています。
さて、総人・人環には「学術越境」というテーマがあります。修士課程に進んでからは「総人のミカタ」の運営メンバーとして、異なる専門分野に興味を持つ人々が集まる場を提供する側に回るようになりました。自分の専門を持ちながら、他の分野にも気軽に手を出せて、異分野の人々とつながることができる。このような環境が総人・人環の大きな魅力だと思います。
(2024-10-02掲載) -
肖 軼群 [芸術文化講座 小島基洋研究室 博士3回生]
研究分野: 現代イギリス小説 (カズオ・イシグロを中心に)
学部時代を中国・湖南省で過ごし、太宰治の短編小説『トカトントン』を研究対象に卒業論文を執筆しました。2020年に人間・環境学研究科に進学し、英文学研究の道を歩むようになりました。修士課程に進学してからは、「抑圧」と「他者性」をキーワードに、日系イギリス人作家カズオ・イシグロをはじめとする現代イギリス文学の研究に取り組んできました。イシグロの作品は現代性を色濃く反映しているため、その研究には歴史学や人工知能の知識も必要とされます。英文学の知識がほとんどない状態からのスタートでしたが、人間・環境学研究科と文学研究科の授業を通じて、基本的な研究能力を身に付け、2021年に出版されたイシグロの最新作『クララとお日さま』を対象に修士論文を完成させました。2022年に博士後期課程に進学して以降、研究発表と論文執筆に積極的に取り組み、『Texas Studies in Literature and Language』誌に論文が掲載されました。また、「終わらない読書会―22世紀の人文学に向けて」からの招待を受け、イシグロ作品の紹介を行うなどして英文学研究の裾野を広げる努力を続けています。さらに、他大学の院生や学部生を招き、研究対象であるイシグロ作品を題材に読書会を主催し、多様な視点から作品を読み解くことを目指しています。
(2024-10-02掲載) -
深田 明 [共生世界講座 齋藤嘉臣研究室 博士2回生]
研究分野: 福祉国家研究
私は、総合人間学部時代から、現代における北欧諸国の福祉国家のあり方に興味を持っていましたが、大学院進学に際してその対象をスウェーデンに絞り、齋藤先生にご指導をいただいています。
齋藤研には、「国際」「政治」をキーワードとした研究を行っている学生が集まっており、その内容は多岐にわたっています。国内での研究活動に尽力するのみならず、アメリカ・イギリス・フランスなど各々の研究対象国に赴いて資料調査や共同研究を行う先生方・先輩方の背中を見て育った私は、「面白いと思ったら、手だけでなく体を動かしてみる」ことを学び、実践しています。
研究科のいいところの一つとして、研究分野の違う学生や先生方との交流が易しいことが挙げられます。一人では解釈が不安な理論書があれば、研究室を横断して読書会をすることで、幅広い分野からの視点を得られます。読書会の後にカフェ・コレクションや進々堂に行ってみんなと雑談をするのも、また楽しい京都の学生生活の一片です。研究を続けるためには、金銭的な不安も付きまといますが、京都にはいい古本屋があるので娯楽には困りません。また、齋藤研のみならず、研究科には経験豊かな学生が多いので、アドバイスと勇気をもらうことはできると思います。
最後に、自由な風吹く人間・環境学研究科ですが、その分、自分自身は何がしたいのかという錨がないと、飛ばされてしまいます。なので、知的好奇心が尽きない人、自分の興味のために動き続けたい人には、いい環境だと思います。
(2024-10-02掲載) -
川元康生 [数理・情報科学講座 日置尋久研究室 学部4回生]
研究分野:金融情報学 機械学習
私は入学前は学びたい分野が明確に決まってはおらず、なんとなく神経科学などには興味があったため、神経科学の研究室があり、他にも様々な研究室がある総合人間学部を選びました。しかし、実際に入学して授業を受けることで、プログラミングや機械学習に興味が湧き、情報系の研究室に入りました。入学後の選択肢が多いところが総合人間学部の魅力だと思います。
私が所属している研究室では、メンバーは週1回のゼミで研究の進捗について報告しつつ、各自の興味関心に基づいて、それぞれ独自のテーマで研究を進めています。私はもともと金融にも興味があったため、株価データに基づいた適切なポートフォリオの構築(資産構成の決定)を研究テーマとしています。自主的に学習や研究に取り組む必要がありますが、幅広く自由に学べる良い環境で大学生活を送ることができています。
(2024-10-02掲載) -
山田祐真 [芸術文化講座 上田泰史研究室 学部4回生]
研究分野:音楽解析
まさか自分がいかにも「総合人間学部らしい」学生生活を送ることになるとは、入学当初は思ってもいませんでした。中高と続けてきたサクソフォンを大学でも続け、将来は楽器を趣味にしつつ、一般企業に就職するかと漠然と考えていました。3回生時の研究室選択でも、以前より興味があり講義を沢山受けていた、認知情報学系の神経心理学分野の研究室に入り、卒業論文の準備を進めていました。
しかし転機が訪れたのは4回生の夏。音楽活動にも脂が乗り、このまま半年で卒業して楽器と距離ができるのはやるせないと思い、急遽休学を決断しました。休学期間中に音楽をライフワークにしたいという思いが固まったために、復学後は音楽活動に繋がる研究がしたいという思いから、4回生にして転学系をし、現在の上田先生の研究室に落ち着きました。
研究室では、サクソフォンの代表的な無伴奏曲を一曲取り上げ、そのテンポの揺らぎを解析することで、奏者の流派や時系列によって演奏録音を類型化しようとする、演奏様式研究を行っています。研究を進めるにあたり、今までの音楽経験や、休学前まで専門だった神経心理学分野での知見が思わぬ形で現在の研究に活きており、遠回りのように思えた今までの選択が、実は現在に至る伏線だったことに気づき驚いています。
自身の興味の赴くままにいろんなものに手を出し、興味が薄れたら離れる、そんな「美味しいところのつまみ食い」が許されるのが総合人間学部の魅力だと思っています。他学部からすれば不真面目極まりない態度だと思いますが、それだからこそ、蓄えた種々雑多な知識や経験が思わぬシナジーを生む感動体験ができるかもしれません。ぜひ総合人間学部では、自由奔放に発想を展開して遊び心満載な「総合人間学部らしい」学生生活を送っていただければと思います。
(2024-11-20掲載) -
田中朱花 [共生世界講座 森口由香研究室 学部4回生]
研究分野:アメリカ史 ジェンダー論
私は現在20世紀アメリカ史を専攻しています。また、副専攻の制度を利用してジェンダー論についても学んでいます。アメリカ史のゼミでは、アメリカ外交史やトランスナショナルなアメリカ史の展開について論文講読を通して専門的な知識を学びつつ、歴史哲学、すなわち「歴史とは何か」についても学びます。総合人間学部のゼミでは必ずしも受講生の専攻領域が一致しているわけではありませんが、だからこそ他の学生から自分にはなかった考え方を学ぶことができ、分野の垣根にとらわれずに自分の関心を追究できる環境が用意されていると感じます。ゼミで勉強を進める中で、更にアメリカ史やジェンダー論について学びたいと思い、三回生の後期から一学期間アメリカへ交換留学にも行きました。留学先大学の授業では日本では学ぶ機会が少なかった分野をカバーすることができ、そこで得た新しい知見は帰国後の卒業論文執筆の際にも役に立っています。
今ではアメリカ史研究を大変興味深く学んでいますが、入学前はこの分野を研究することになるとは全く考えていませんでした。様々な分野の授業を受ける中で、思いもよらぬ研究分野と偶然出会って、予想外の方向に学生生活が進んでいった面白さは総合人間学部だったからこそ味わえたものだと思っています。
(2024-10-02掲載) -
前田菜々香 [文化・地域環境講座 山村亜希研究室 学部4回生]
研究分野: 人文地理学
私は現在、邦楽サークルに所属しています。江戸・明治時代につくられた古典曲から現代曲まで幅広く演奏しており、毎日お箏・地歌の練習に通う生活を送っています。日本の伝統音楽である地歌箏曲の格調高さと奥ゆかしさに惹かれ、その魅力を仲間と共有しながら日々理想の音を追求する生活は本当に贅沢であると感じています。
そのため卒業研究においても、自身が関わってきた邦楽文化について地理学的に研究することを計画しています。和楽器の製作・販売の流通と歴史や邦楽愛好者・演奏家の分布、和楽器(箏、三絃、尺八等)の教室の立地などについて調査し、アンケートやインタビューも行いながら、邦楽文化が産業としてどのような地域的繋がりや基盤をもって成り立っているのか分析していこうと考えています。自分の好きを研究しているため、文献を調べるだけでもとても楽しく、いつも新たな知識との出会いに心を躍らせています。
学生生活ではほかにも、高校地歴公民科・中学社会科の教員免許取得に励んできました。免許取得のために多くの授業を受けるのは大変でしたが、教育実習も経験したことで、これまで学んできた地理学の考え方や地域の立体感・あたたかみを伝えられるような教師になりたいと強く思うようになり、そのためにも研究・勉強により励んでいこうと考えています。
(2024-10-02掲載)