美、とは。
人工知能(AI)が活躍する場は、日に日に増えてきています。なんせ、人事まで担当するって時代です。なので、審査員がAIのビューティーコンテストがあったとしても、そんなに驚くことではありません。ただ、問題はあるわけで…。
ロシアと香港を拠点とする研究所Youth Laboratoriesが開発、運営した、AI審査員によるビューティーコンテスト「Beauty.ai」。Microsoft(マイクロソフト)はスポンサーとしてGPUの開発などで知られる半導体メーカーNVIDIAを向え、応募者約60万人のなかから、最も魅力的な人をアルゴリズムで割り出しました。
AI審査の基準となるのは、顔の作りの左右対称さ、シワ、実年齢と比較して若く見えるか年老いて見えるか。その結果、最終選考に残った44人のほとんどが白人でした。アジア系は6人、濃い肌の色を持つ人(何人か詳細は不明)は、たったの1人。
なぜ、AIが白人をより美しいと判断したのか、その理由はアルゴリズムの作られ方にありました。
それぞれの基準を審査したアルゴリズムは、ディープラーニングという機械学習方法で作られたもの。事前に大量のデータを取り込み学習し、それをもとに新たに目にするモノが何であるかを判断していくという仕組みです。今回、最終選考で白人が多く残ったのは、学習の基礎となった「教材」に問題がありました。
ネタ元Motherboardのインタビューで、Youth LaboratoriesのKonstantin Kiselev氏は「シワを担当するアルゴリズムが学習のため取り込んだデータ画像は、白人の画像が多かった」と原因を語っています。アルゴリズムは、人種で美を審査したわけではありません。人物画像をピクセルまで落とし込んだ色データで判断したのです。つまり、アルゴリズムにとっては、肌の色ではなくピクセルの色が判断材料だったと。
AIは感情に左右されず、冷静に判断できるモノだと考えるのは少々安易です。学習教材を提供し、それを教える教師が、子どもの成長に影響するのと同じく、大量のデータを提供する研究者はAIの形成に大きな影響を与えます。研究者の考えに偏りがあれば、そこから生まれるAIにバイアスがかかってしまうのも然り。これは、AIの脅威の1つでもあります。
今回のBeauty.aiは、人種差別を助長するものではなく、意図せずそうなってしまったパターン。まぁ、それもそれで怖いのだけれど。今後、改良を目指しており、10月に再びコンテストを開催する予定だといいます。
source: Motherboard via QUARTZ
(そうこ)