茶色の卵と白い卵は何が違うの?

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  • author satomi
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茶色の卵と白い卵は何が違うの?

「茶色の卵の方が栄養値が高くて体にいい」

「茶色の卵の方がおいしい」

「茶色の卵はキッシュに合う、白い卵はケーキに合う(人よっては逆)」

いろんな俗説ありますけど、実際のところどうなのか? 調べてみたら意外な事実がわかりましたよ。

茶色の卵は殻が茶色くて、白い卵は殻が白い。以上おわり。

中身に違いはなかったんです。言い切ってしまうのには若干語弊もありますが(それは後ほど詳しく)、基本的に茶色でも白でも栄養価は同じ味も同じ、どっちを使ってもキッシュもケーキも同じように美味しく仕上がるんです。

殻の厚みも同じです。厚みの違いは鶏の年齢によって出る差で、若鶏の卵は年寄りの鶏の卵より一般に殻が固いんですけど、これは白い卵を産む鶏でも茶色の卵を産む鶏でも同じことが言えます。

じゃあ何故みんな茶色の卵の方が「いい」と思ってるの?

これはひとえに値段差からくる思い込み、です。スーパーに行くと茶色の卵の方が高いので当然クオリティーも高いって思ってしまいますよね? でも違うんです(売れない製品を大幅値上げして売るのはよくあるマーケティングのトリック。「安物より高価なものの方が質はいい」というイメージを逆手にとってる。実際には値段に中身が比例することもあればしないこともある)。

茶色の卵が高いのは、ひとつには茶色の卵を産む鶏の方が白い卵を生む鶏より大食いだからであって、餌代が嵩むぶん値段も高くなってんです。一般に白い卵を産むのは羽が白・淡色で耳たぶも白い鶏、茶色の卵を産むのは羽が赤茶・黒で耳たぶが赤い鶏(世界共通ではないけれど)。羽と耳たぶの色は大体連動しています。殻の色を決めるのはもちろん遺伝子だけど、鶏の耳たぶや羽の色を見れば卵の殻の色は大体見分けがつきます。

耳たぶが赤い鶏は耳たぶが白い鶏より体のサイズ大きめなので、そのぶんよく食べる。その餌代が値段に跳ね返ってきているのです。

というわけで、スーパーで白い卵の方が多い理由が少しわかった気がしますね。農家にとっては白い卵の鶏の方が飼育コストもかからないので値段も下げられるし、スーパーも沢山買い取ってお客様に安く提供できる。白い卵の方がコスト効率が良いってだけの話だったんです。

「茶色の卵の方が美味しい」という迷信も根強く残っているので、それで高いっていう面もあります。が、茶色の卵と白い卵の味覚の差は何度も言うように、幻想なんでございますよ。

無論、卵の味には個体差がありますから、先程触れたように全部そうだと言い切ると語弊があるんですけどね。この個体差にしても卵の殻の色には関係なくて、餌が原因なんです。家庭で飼う鶏は茶色の卵を産む鶏が多く、市販用の鶏は白い卵を産む鶏が多いんです。食肉と同じで、餌が違えば卵の味、黄身の色も違ってきます。つまり家庭の鶏は良いもの食べさせてるから美味しい卵が産まれてるだけなのに、茶色の卵の方がおいしい、って脳内変換されてしまってるんですねーはい。

茶色の卵の鶏と白い卵の鶏を全く同じ餌で育てると、茶色も白も割ってしまえば味は同じで、殻の色以外の差はなくなります。餌が同じだと、黄身の色まで見分けがつかなくなるんです。

現在、市販用の鶏は白も茶色も全部おんなじ餌で育ててます。会社ごとに若干の差はあるにせよ、会社内部では同じなんですね。だから家で飼ってる鶏の茶色の卵、近所の人にもらった茶色の卵が、店で飼う卵より美味しかったら、それは鶏の餌が違うから。卵の色とは関係ありません。

じゃあ何故農家は茶色の卵の鶏、飼ってるの?

茶色の卵の鶏は餌代も飼育代も嵩むのに…どうして? って思っちゃいますけど、これだけ沢山の人が未だに「茶色の卵の方がいい」って思い込んでるのでビジネスとして充分成り立ってしまうんですね。餌代の元とって余るぐらい高い値段つけてもみんな喜んで払ってくれるので、農家としてもやめるわけにはいかないのです。

最近は茶vs.白の論争より、オーガニックvs.ノンオーガニック、ケージvs.ケージフリー(地飼育)の論争の方が白熱してますよね。餌の差で味に差は、出ます。が、卵のクオリティーと栄養価の差が気になる方は、D.R. Jones氏らが農業研究局の依頼で調べて『Poultry Science』 に発表した2010年の論文が参考になりますよ。この論文では結局、以上のどの飼育方法をとっても卵のクオリティーにほとんど差は見られなかった、とあります。検知されたわずかの差も個体差で、「ある種の卵がコンスタントに最高値・最低値をキープする、ということはなかった」そうです。

というわけで、鶏卵の栄養価と味に違いを出す方法はありますが、殻の色で違いは出ない、ということで。

[おまけ]

・鶏はもともと食用ではなく闘鶏用に飼われた。詳細ここ

・鶏卵は白・茶色以外にもある。アローカナ(Araucana)、アメローカナ(Ameraucana)は水色の「イースターエッグ」を生む数少ない品種。ともに南米原産で、他の青色卵の品種と交配した可能性が高い。

・脳がなくても生きる鶏もいる。鶏のマイク(Mike)は頭部がないまま18ヶ月生きた!

・米農務省によると米国内だけで卵は年産65億ダース、売上高は約70億ドル(7160億円)

・鶏は世界に250億羽いて、他のどんな鳥類よりも多い。人間ひとり約3羽の計算

・ピークの鶏は1日1個卵を生む。が、産卵能力は餌、季節、天候に左右される。

・餌は諸説あるが、一般によく言われるのは「とうもろこしを食べる鶏の卵が一番美味しい」という説。

*本稿は人気サイト「TodayIFoundOut.com」初出記事を許可を得て再掲しました。同サイトの日刊ダイジェスト購読はこちら、Facebookはこちら

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EMILY UPTON - TODAYIFOUNDOUT.COM原文/satomi)