130年近く世界の質量標準としてドッカリ構えてきたフランスの国際キログラム原器「Le Grand K」が、いよいよおかしくなってきて昨秋廃止が決まりましたね。
国際キログラム原器は1879年にできた白金イリジウム合金製の円柱の分銅で、1889年にこの重さが「1kg」の国際標準と定められ、パリ郊外の国際度量衡局(BIPM)に3重に鍵かけて保管されてきました。
40年に1回、外に取り出してアルコールで洗って磨き、世界中に配った80個の複製と比べて測ります。科学者が1kgを正確に測りたい時はこの複製で質量を確認するんですが、その頂点に君臨するご本山の「Le Grand K」が年々軽くなってきているのです!
公式のキログラムが軽くなるとどうなるのか?
その辺のことをMental Flossが解説してるのですが、これが結構面白くて、例えば「キログラムとは何なのか?」という、そもそもの定義から考え直さなければならないんですね(現在その作業中)。
人工物を標準にしているのは今はキログラムぐらいですが、似たことはメートルの定義でも起こりました。かつては「Le Grand K」の隣に保管されていた合金の棒「メートル原器」に刻まれた目盛りの長さが1メートルだったのですが、やはり経年変化が起こり、「光が真空で299,792,458分の1秒の間に進む距離を1メートル」ということに再定義して現在に至っています。
なぜ国際キログラム原器が軽くなると問題なのか? まあ、標準は標準ですからね。標準が揺らぐと、どんな小さな変化でも積もり積もって大きな問題になってしまいます。例えばMental Flossが紹介しているのは、こんなお話。
キログラムは他の測量のブロックを作るのにも使われている。例えばジュールは「1kgの物を1m動かすときのエネルギー量」だし、カンデラ(光度の単位)は「ジュール毎秒」で測る。
このように相互に関連しているのでキログラムに欠陥があると、ジュール、カンデラにも欠陥が及び、ひいては様々な産業(特にテクノロジー産業)に問題を引き起こしてしまうのだ。マイクロチップはより多くの情報をより高速で処理するので、ほんの些細な偏差でも破滅的状況に繋がり兼ねない。Le Grand Kの信頼性が揺らいでいることの影響は「電子産業で次の10年、20年のうちに目に見えるかたちとなって現れるだろう」と、NISTの物理学者リチャード・スタイナー(Richard Steiner)氏は警鐘を鳴らしている。
ジュールもカンデラもそうならアンペアもモルも...。詳しくは以下リンク先(英語)でぜひ読んでみてね。日本語の「キログラム原器に替わる新標準は?」もおすすめですよ。
[Mental Floss]関連:キログラム - Wikipedia、キログラム原器なぜ廃止する?-朝日、
Image Credit: International Bureau of Weights and Measures
Casey Chan(原文/satomi)