火星と木星の間の小惑星帯でいま何が?
ハッブル宇宙望遠鏡が今年1月25日~29日、時速17702kmでその界隈を飛ぶ謎のX字の物体を観測しました。
こやつは先月6日に初めて発見されたもので、NASAは「P/2010-A2」という仮符号をつけ、小惑星2つの衝突で生まれた極めて珍しい彗星だと話してます。
でもこんな妙なカタチの彗星、見たことないですよねー。さてはクリンゴンのバード・オブ・プレイ(Klingon Bird of Prey)!?
ハワイ大在職当時に海王星以遠の天体を発見した業績で知られるデイビッド・ジューイット(David Jewitt)現UCLA天文学教授も大興奮で、こう語ってます。
普通の彗星に見られる、ダストを含む外層とはかなり違うね。フィラメントはダストと小石で構成されており、おそらく最近、核から放り出されたものではないかと思う。その一部が太陽光からの輻射圧(放射圧)で後ろになでつけられ、真っ直ぐなダストの縞を成している。フィラメントに埋め込まれているのは、共動するダストの塊で、これは小さな目に見えない母天体から生まれた可能性が高い。
なるほど。「彗星」だと思ってたら突然止まってクルリと踵を返し地球の我々のパンツ目がけて反物質光線発射してきたりして。あー、いかにもジェリー・ブラッカイマー監督が映画にしそうな話ですよね。
それにしても、デブリが描くキレイなX字の紋様もさることながら、一番妙なのは幅460フィート(140m)にも及ぶ核が、ダストのハロー(暈)の外にあって、軌道から外れていること。これはこれまで確認された彗星とか、太陽系をビューンと翔ける他のどんな物体でも一度も見られなかった動きです。
もう1枚、クローズアップの写真もどうぞ。解説続きます!
以上2枚の写真からNASAは、2つの小惑星衝突の結果うまれたものであり、核は「超高速衝突の残骸で残ったのではないか」と説明してます。
もしこの解釈が正しければ、2つの小さな未確認の小惑星が最近衝突し、その結果デブリが雨あられと発生して太陽光からの圧力で衝突現場から後方に尾を引いてほうき星を形成している、という話になる。P/2010 A2のフィラメントの外観は、ハッブルの画像でこれまで見たどんな普通の彗星とも違い、別のプロセスで生まれる動きとして矛盾なく説明できるものとも違う。
うむ。要するに全然ワカリマセンということじゃ...。発生を巡っては諸説入り乱れている「P/2010-A2」。そろそろZarkov博士の出番かな?
(訳注) 日本でも国立天文台・石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡が先月15日同じ彗星を観測してます。写真と一緒に「コマや核がなく尾だけが伸びている奇妙な姿」のどこがどう謎なのかをとても分かりやすく伝えててて、おすすめ!
英語の詳しい解説はDiscover Magazineにあります。これだけの超高速衝突となると、核爆弾を何個も爆発させたぐらいのエネルギーが出るそうな。「でも、現場は地球から1億4000万km離れてるので心配ない」そうです。ふ~。
[NASA]
Jesus Diaz(原文/satomi)