マーケティングの究極目的は、自社の売上を上げることです。
今回は改めて、私たちがクライアントのマーケティング支援をする際に立ち返る、売上アップのための基本原則をご紹介します。
1. 売上 = 客数×客単価
ただ「売上アップ」といっても、何をすればいいか全く想像つかない方もいるかもしれません。
例えば「売上を2倍にする!」と目標を立てた場合、その計画が「今より2倍売る」では何をどうすればいいのかよくわかりませんよね。
「売上」と漠然と考えるのではなく、「売上」を「客数」と「客単価」に要素を分解すると考えやすくなります。
もちろん製造業などでは数量×単価でも計算することもありますが、CRM領域の課題解決という視点では、「客数」「客単価」の考え方が非常に重要です。
さらに、「客数」「客単価」はそれぞれ
客数:新規顧客+既存顧客-離反顧客
※離反顧客とは、以前に自社の商品・サービスを購入したことがあるが、一定期間利用/購入がない顧客のことです。
客単価:来店回数×1回当たり購入点数×1点当たり単価
に分けることができます。
<売上構造の要素分解>
※離反顧客とは、以前に自社の商品・サービスを購入したことがあるが、一定期間利用/購入がない顧客のことです。
この数字を増やす、もしくは減らすことができれば「売上」の数字が変わるということになります。
その方法は以下の6通りに集約されます。
1. 新規顧客を増やす
2. 既存顧客を増やし維持する
3. 離反顧客を減らす
4. 来店回数を増やす
5. 1回当たり購入点数を増やす
6. 1点当たり単価を上げる
これが「売上アップ の6つの方法」です。
単価や客数という言葉を使っていますが、この考え方はBtoBではもちろん、あらゆるビジネスに置き換えることができます。
まずは自社の売上を要素分解してみましょう。
2. 分解した要素から課題を設定する
自社の数字を要素分解し、売上構造のどの部分が課題なのかを分析します。
「先月と比べて」「昨年と比べて」というように、比較対象があれば各要素が上がっているのか下がっているのかを判断することができます。
例えば、
・初回購入は多いが、2回目リピート購入につながっていない
⇒②の「既存顧客を維持する」が課題
・1回当たり購入点数が昨年より下がっている
⇒⑤の「1回当たり購入点数を増やす」が課題
分析の際にその原因について「なぜそうなったのか」を書き出しておくと、対策を検討する際に考えやすくなります。もし理由がわからなくても、仮説を設定しておくとその後が動きやすいです。
具体的な課題が明確でない場合は、RFM分析で顧客を購買回数と最新購買日でグループ化して考えることもできます。
※RFM分析...Recency(最新購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標で顧客をグループ分けする分析手法
下記の図のように、自社の顧客をグループ化して、どのグループの顧客にテコ入れすべきか検討します。
3. 課題解決のための施策を考える
自社の課題が明確になったら、それぞれの課題に対してどんな施策を打つかを検討します。
この施策が課題にフィットしていなければ効果(売上アップ)を出すことはできません。
売上要素の各項目を自社の施策に置き換えた内容であらかじめ作っておくと、課題別にどんな施策を実施すべきか悩んだ時にスピーディーに施策展開を進める、ということができるようになります。
施策を検討する際はプロダクト(サービス)ライフサイクルに合わせて考えることが重要です。
導入期には既存顧客がいない(少ない)状態ですので、
1.新規顧客を増やす
4.来店回数を増やす
を重視すべきですし
成熟期には逆に新規の獲得が頭打ちになりますので、
2.既存顧客を増やし維持する
3.離反顧客を減らす
5.1回当たり購入点数を増やす
6.1点当たり単価を上げる
の項目の重要度があがります。
自社プロダクト(サービス)の状況に合わせて施策を設計しましょう。
【事例】顧客の購買行動に合わせたダイレクトメール施策で売上アップに貢献(株式会社ケイシイシイ様(小樽洋菓子舗 ルタオ))
4、利益の構造から施策を考える
ここまで「売上の構造」を分解し、そこから課題設定と解決策の策定までのプロセスをご紹介しました。
施策検討の別の切り口として、「利益の構造」の側面からから売上を伸ばす施策を考えてみましょう。
事例:スポーツジム運営企業の利益構造
架空のスポーツジム運営企業を例として考えてみましょう。
今期の損益計算書は下記の通りです。
この企業が仮に来期、売上を10%伸ばすことが出来た場合、利益は何%伸びるでしょうか。
もしかすると売上と同じく10%伸びると考えた方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの質問、どのような方法で売上を伸ばすかによって答えが変わってきます。
その理由は「費用」にあります。
売上をどのような方法で伸ばすかによって、これらの費用の増え方、つまり利益の伸び方が変わってくるのです。
費用(=売上原価や販管費)には、固定費と変動費があります。
これらは分けて考えなくてはいけません。
・固定費...家賃、インストラクターの人件費など
・変動費...電気代や水道代などの光熱費
では、このスポーツジムが売上を伸ばすためにはどのような方法があるでしょうか。
ここでは「会員数が増える=月額会費の収入が上がる=売上が伸びる」とシンプルに考え、会員数を増やすための方法を2通り考えてみます。
【Case1】新規出店を行い、新しいエリアで会員数を増やす
【Case2】既存店の会員数を増やす
それでは、それぞれのケースについて、売上増加に対し、利益がどのように増加するのか見てみましょう。
※【Case1】は新規出店費用、【Case2】は会員数を増やすための施策費用が一過性の費用として発生しますが、ここでは割愛します。
【Case1】新規出店を行い、新しいエリアで会員数を増やす
売上〔A〕は新規出店による会員数の増加に伴い10%増の6,600とします。
売上原価〔B〕は新規出店に伴い、家賃や光熱費が発生します。
また、インストラクターを雇う必要があるため、同様に10%増の4,400となります。
これを差し引いて売上総利益〔C〕は2,200となります。
6,600-4,400=2,200
売上総利益〔C〕は10%増となりました。
販管費〔D〕は、この事例では本社管理部門の人件費を主としていますので、変わらず200となります。これらを差し引いて営業利益〔E〕は2,000となります。
2,200-200=2,000
営業利益〔E〕は新規出店前の1,800から約11%増となりました。
【Case2】既存店の会員数を増やす
売上〔A〕は既存店の会員数増加に伴い10%増の6,600とします。
売上原価〔B〕は家賃、インストラクターの人件費、光熱費でしたが、店舗数を増やしていないため家賃は増えませんし、インストラクターも新たに雇う必要はないでしょう。
多少光熱費は増えると思われますが、人件費に比べると小さな額であることが想像できますので、ここでは4,100とします。
ここから売上総利益〔C〕は2,500となります。
6,600-4,100=2,500
売上総利益〔C〕は25%増となりました。
販管費〔D〕は、この事例では本社管理部門の人件費を主としていますので、変わらず200となります。これらを差し引いて営業利益〔E〕は2,300となります。
2,500-200=2,300
営業利益〔E〕は新規出店前の1,800から約28%増となりました。
売上を上げる方法の鉄則については、下記の記事でも解説しているので、あわせてご一読ください。
【鉄則】売上を上げるための6つの方法
売上構造と利益構造をセットで施策を考える
今回の内容はビジネスをしている方にとっては基本的な内容かもしれませんが、 当社にご相談いただく内容として、下記のようなパターンは少なくありません。
・DMで売上を上げたい...(手段先行)
・リピーターが少ないのは課題だが、新規顧客も増やしたい...(課題の絞り込み不足)
・予算が○円と決まっている中で何かできないか?(予算ありき)
また、売上の伸び率が同じ10%でも、売上の伸ばし方によって利益は変わってきます。
このように「売上の構造」を理解することで、利益計画を立てたり、なぜ利益が出ているのかを理解したりすることができます。
「売上アップの6つの方法」をどのように具体の施策に展開するかは「手段」であり、最後に考えるべきことなのですが、マーケティング施策が先行して結論を急ぐあまり、目先の課題は解決できても継続的な売上アップにつながらないことがあります。長期的に売上アップを考えるなら、一つ一つの課題を解決し続けていく積み重ねが大切とわたしたちは考えています。
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CRMの定義やゴールと役割、マーケティングとの違いなど、CRM領域での課題解決の流れについて解説したコラムは下記をご覧ください。
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