やがてくる大増税時代に豊かに生活するために準備すべきこと

現在の日本の置かれた状況をよく考えてみると、数年〜十数年後に大増税を行わざるを得なくなる可能性がけっこう高い。
大増税時代になっても豊かに暮らせるようにするには、今のうちから準備しておかないと、あとで後悔することになることがある。
この記事では、それについてまとめてみた。

トピックハイライト

  • 大増税を回避する政策はあるが、それが実行される可能性が低い理由。
  • 中所得者と高所得者のどちらに大増税されるかは不透明。
  • 高所得者を搾取して遊んで暮らす戦略。
  • 具体的にどの税金を、どのように回避するために、今からどのような準備が必要か。
  • 重い所得税を払わずに逃げ切る合法的な方法
  • 重い消費税を合法的に回避する方法
  • 高収入で贅沢をしても消費税も所得税もかからないようにする方法
  • 税金を全く取られずに生産、流通、消費を行うさまざまなテクニック。
  • 「高所得者に重税をかけると海外へ出て行く」というのは金持ちのポジショントークに過ぎない側面がある。
  • 今は消費したら負けの時代。自分の未来を捨ててまで社会に貢献したい人だけ消費すればよい。
  • これからやってくる大増税時代は働いたら負けの時代。
  • 重税国家が持続可能かどうかはまだ不透明。重税国家スウェーデンでは国民の稼ぎの7割を国家が徴収しているのに税収が不足してきている。福祉に寄生する人が増え、若手の優秀な人材が流出し、財源不足で福祉サービスはどんどん劣化してきている。
  • 日本は条件が違うので、スウェーデンなみに重税にしても、スウェーデンほどの福祉にはならない可能性がある。
  • 共産主義体制ですら破綻までに数十年かかった。日本の富が寄生者に食いつぶされ、人材が流出し、やがて破綻するとしても、破綻までには数十年の歳月がかかる。重税高福祉体制が破綻するとしても、それが自分が死んだ後なら、あとは野となれ山となれと考える人も多いだろう。
  • インフレから貯金を守る方法。

はじめに

「この先、大増税が行われる可能性が高い理由」については、話が長くなるので、後述する。
ここではまず、「この先、大増税が行われる可能性が高い」ということを前提として話を進める。


大増税時代には、外食するとバカみたいに税金をむしられまくる


レストランで出される料理の値段には、そのレストランを運営している役員や従業員が受け取る給与にかかる所得税の一部が転嫁されている。*1
それに加えて消費税までかかるので、レストランで食べる料理の値段にはかなり税金がかかってしまうことになる。


それだけではない。レストランで支払いをするお金は、自分で働いて稼いで、所得税をむしられた後のお金だ。


今は税率が低いのでこれらの問題が顕在化していないが、税率がぐんぐん上がって大増税時代になると、外食するのは税務署のカモにされにいくようなものになる。


これはお総菜でもコンビニ弁当でも同じだ。
それらは会社組織によって組織的に作られるのでその会社組織で働く人にかかる所得税の一部がが商品価格に転嫁され、さらに消費税もかかる。



重税国家でサバイブするコツは、貨幣システムが介在しない生産と消費を心がけること


一方で、自炊をすると材料費と光熱費にしか税金はかからないから、むしられる税金はずっと低くなる。


要するに、重税社会というのは貨幣システムの利用料がバカみたいに高くなる社会だ。
だから、大増税時代には、貨幣システムを使わずに生産と消費をするのが基本戦略の一つになる。*2


自炊というのは、ようは、自分で商品を生産し、自分で商品を消費するということだ。
自分で生産したものを自分で消費するのだから、そこに貨幣取引は介在せず、所得税も消費税も一切かからないわけだ。


もっと正確な言い方をすると、「出来上がった料理の価値」と「原材料の価値」の差分が付加価値で、自炊するということは、この付加価値を生産し、消費するということになる。外食をすると、この付加価値の生産と消費の両方にさまざまな形で課税されるが、自炊の場合は付加価値の生産にも消費にも課税されない。




より美味しいモノを食べるのに取るべき戦略が変化する


いままでは、より美味しいモノを食べるには、「より多くお金を稼ぎ、高いレストランに行く」のが正しい戦略だった。
しかし、大増税時代においては、この戦略では、税負担が重すぎて疲弊してしまう。


大増税時代においては、より美味しいモノを食べるには、自分で自炊の腕を磨き、自分で美味しい料理を作れるようにすることに時間とエネルギーを注ぎ込むことが正しい戦略となる。



大増税時代に適した自己完結型の生産と消費の方法にはどんなものがあるか

  • 家庭菜園を借りて自分で育てたものを食べる。
  • 自分で食事を作る。自分の好みの料理を、好みの味付けにできるので外食よりも美味しいことが多い。
  • 作り置きのお総菜も、自分で作って冷蔵庫や冷凍庫に保存しておく。
  • 服は自分で作る。体型が変わったときのサイズ調整もできるし。
  • 子供は塾へ通わせるより、極力自分で教える。
  • 部屋にぴったりサイズの本棚を自分で作る。
  • 飲み会は居酒屋ではなく、誰かの自宅で行う。


これらは、どれも自分で生産し、消費しているため、所得税も消費税もほとんどかからない。



稼げば稼ぐほどむしられるだけ。稼ぐことではなく、生産消費スキルの獲得に時間とエネルギーを使う


所得税の税率が高くなると、働いても働いても、国家にむしり取られるだけだ。
だから、仕事時間を減らし、自己完結型の生産消費に必要な知識とスキルを身につけることに、時間とエネルギーをより多く割り当てるのが正しい戦略となる。
具体的には、たとえば以下のようなことをする。

  • ためしてガッテンの料理系の番組のような料理スキルをアップさせる番組を録画して見る。
  • 料理の本をよく読んで、勉強する。
  • クックパッドを使いこなす。
  • SNSã‚„twitterで、料理の得意な人と友達になって、いろいろ教えてもらう。
  • 時間があれば、料理教室に通う
  • シャトルシェフ、ビタクラフト、チタンの中華鍋、マーブル加工のフライパンなどを使いこなす技術をいろいろ研究する。
  • 冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジの使いこなしスキルをアップさせる。
  • おいしい珈琲や紅茶の入れ方も、本やネットで勉強する。
  • 家賃の高い快適な部屋に住むよりも、安い部屋をいろいろ工夫して広く快適に使うスキルを磨く(つっぱり棚を上手に使うとか、収納を工夫するとか、ものを捨てる技術を磨くとか)
  • 家庭菜園で、手間なく美味しい野菜を育てる方法を学ぶ。
  • 子供に効率よく学習させるための教え方のコツを、本、ネット、ビデオ教材などで学習する。
  • 服に興味があるなら、自分で作れるように、その手の学校に通う。

重い所得税を払わずに逃げ切る方法


日本は中所得者の所得税が異様に低いので、
中所得者と高所得者の両方に大増税されるシナリオや、
主に中所得者に大増税されるシナリオもありうる。


高所得者や中所得者に重税がかけられるようになったら、
中高所得者は、単に働く量を減らして低所得者になれば所得税はあまり取られない。
低所得者でも貯金がたくさんあれば十分に豊かに暮らせる。
だから所得税の低い今のうちにできるだけ貯金し、所得税が高くなったら、たとえば1年のうち4ヶ月だけ働くようにすればいい。
そうすれば、大増税時代においても、あまり所得税を払わず、短い労働時間で、貯金を取り崩しながら豊かに暮らせる。
今後税制と福祉がどうなっていくかは不透明だが、たとえば民主党の唱える「負の所得税」が実現すれば、低所得者は所得税を支払うどころか、逆に給付を受け取ることになる。
すると、たとえば、年に4ヶ月だけ働いて年収200万円稼ぎ、負の所得税を20万円受取り、資産運用や貯金取り崩しから年180万円補填すれば、手取りで年400万円の生活費になる。
金のかかる趣味があるとかでない限り、年4ヶ月労働で生活費400万円なら、かなりのんびり快適に暮らせるのではないだろうか。


大増税時代にそなえて貯金しても、インフレで貯金が目減りしては元も子もない


せっかく貯金しても、インフレが起きたら貯金が目減りしてしまう。
なので、インフレが問題になり始めたら、日本円の現金以外の形(貴金属、土地、株式、外国の通貨や株式)で資産を保有するようにする。そうすれば、たとえば日本円の価値がインフレで1/10になったら、相対的に保有している貴金属の価値が10倍になるだけなので、資産は増えも減りもしない。
手持ちの日本円の現金は最小限にしておき、日本円の現金が少なくなったら、外貨建てor貴金属建ての貯金を少しずつ日本円に換えて使うようにする。
また、インフレが問題になりはじめたら、そもそも銀行の金利はインフレ率よりも高くなるだろうし、インフレヘッジ用の金融商品や金融サービスも多く出回るだろう。


それらのインフレヘッジ対策にまで税金がかかるようになったら、インフレの懸念の少ない外国の通貨を現金で所持するか、金、銀、プラチナなどの貴金属の小片の現物で資産を保有するようにする。それらを日本円に現金化するときに税金がかかるのが問題なら、直接外国通貨や貴金属の小片で個人間取引を済ませるようにする。
たとえば、銀1g片は50円、金1g片は3000円と数える。冷凍ミニトマト200gを銀1g片と交換する、など。



重い消費税を払わない方法


重税高福祉国家において、重い消費税がかけられるとしても、全ての品物に一律にかけられるとは限らない。
高福祉国家においては、貧困層には重税がかからないように、生活必需品などには消費税がかからなくなる可能性が高い。


そして、贅沢な生活必需品にだけ重税をかけることは、現実には困難だ。
畑で完熟した1個300円の贅沢トマトには重税をかけて、効率重視で未熟なまま収穫された1個50円の大量生産トマトには税金をかけないようにするのは、現実的ではない。季節による値段の違いもあるだろうし、大きさの違いもあるだろう。


だから、生活必需品というカテゴリの範囲内なら、それなりに質の良い商品を買っていても、それほど重税はかからない。
ルイヴィトンやシャネルやベンツや100インチの大型テレビや非常識に家賃の高い部屋に住むなど、昭和の金持ちのような「分かりやすい」贅沢をすれば、贅沢品税がかけられる可能性はあるが。


なので、年400万円程度の生活においては、実質的な消費税はそれほど重くならないようなライフスタイルが送れる可能性が高いと思われる。




高収入で贅沢をしても消費税も所得税もかからないようにする方法


さらに、実質的には年500万円の所得があっても、300万円を経費として落とし、税務署からは年200万円の所得にしか見えないようにすることは、それほど難しくない。
だから、年500万円の所得を得ても、あまり税金を払わず、実質的に年500〜700万円の生活費のそこそこ贅沢な暮らしをすることもできる。
重税高福祉国家になって、徴税体制がどんなに厳しくなっても、これは原理的に十分可能だ。


基本は、自分で法人を設立し、仕事場と自宅を一体化してしまうことだ。
本棚、パソコン、プリンタ、ドキュメントスキャナ、デジカメ、電話、FAX、データ通信カード、携帯電話、ソファー、家賃の一部、光熱費通信費の一部など、実にたくさんの支出項目が、生活と仕事の両用にできる。
それらにかなり贅沢なものを買ったとしても、それらには所得税も消費税もかからない。(払った消費税は還付される)


なぜなら、税務署は、徴税のコストパフォーマンスが高いところだけ厳しく審査し、税金を取り立てるしかないからだ。
年商5000万円の法人の財務諸表の中の、額の大きな支出項目を吟味して、経費として認めるかどうかを厳しく審査すれば、場合によっては税金を追加的に取ることができるかもしれない。
しかし、いちいち年商500万円しかない超零細法人の経費で落とされている10万円のやや贅沢なドキュメントスキャナの使用状況を隠密調査してなんとか見つけ出し、「半分以上はマンガ本をPDF化するのに使っていますね。仕事の書類は半分しかない。だから、半分しか経費で落ちません。」「いえ。そのマンガ本のスキャンは、ある個人の顧客から仕事を受注するための営業活動として行ったのであって、仕事の一環です。」などという押し問答をやっていたら、徴税の手間の方が大きくなってしまい、採算割れしてしまうのだ。


ようするに、各項目が経費でないことを証明する義務が税務署にあるため、その証明コストが大きく、額の小さいものは、プライベートで使われる割合が大きかったとしても、実際には課税することが難しいことが多いのだ。



現在は「消費したら負け」の時代


時間リッチな人と、時間プアな人では、お金の価値がまるで違う。


たとえば、予算20万円を使った旅行でも、
半年の休みをとれる時間リッチな人は、
あらかじめじっくりと時間をかけて旅行先の国の地理や歴史や文化の本を読み、
片言ぐらいには言語を話せるようにし、
ネットで十分な情報を集め、シーズンオフに格安の航空券を使い、
現地の味のある安宿をぶらぶらと泊まり歩いたり、
現地の露店マーケットの売り子さんや宿の人と片言で交流したりしながら、
気に入った小都市に長期滞在したり、現地で友達を作ったりしながら、
ゆったりとバカンスを楽しむことが出来る。


一方で、時間プアな人は、予算20万円の旅行でも、
連続して休みが取れるのはたった7日間で、実質現地で過ごせるのは5日間に過ぎず、
仕事の疲れもあまりとれないうちに、
都市や遺跡の歴史的背景も、現地の人々の文化や置かれた政治的立場もろくにわからぬまま
現地の人との交流もろくにないまま、観光名所をあわただしくまわり、
高級ホテルにとまって贅沢気分を味わうのが関の山だったりする。
いかにも貧しい旅行だ。


また、美味しい料理を作るのでも、
時間リッチな人は、本やネットでじっくりと時間をかけて、
最高にオイシイ調理方法を試行錯誤を重ねて研究しながら料理を作れるので、
同じ材料費でも格段に美味しく食べられる。


時間プアな人は、忙しいのでたいして調査もできず、
加熱時間を絶妙にコントロールして最高にオイシイ野菜炒めを作る方法などを
極めている余裕などないから、
せっかく高いお金で高級食材を買ってきても、
味も香りも飛んでしまって、台無しにしてしまったりする。


さらに、仕事が忙しくて、食事中まで仕事のことが頭から離れない人は、
美味しいものを食べても、その価値は半減だ。
ゲームを買っても、それをじっくり楽しむ時間もない。


要するに、仕事で忙しいときにはお金を使うのは損なのだ。


一方で、いくら時間リッチでも、お金がないと海外旅行もできないし、
美味しい食材も買えないので、美味しい料理を作るのにも不自由してしまう。


だから、仕事でバリバリ稼いでいるときには消費を控えて貯金をし、
あとで時間的な余裕ができてから、貯金を取り崩してじっくりと消費を楽しむのが、
トータルでは、もっとも豊かな生活を楽しむことができる。


そして、集中して働いて貯金を積み上げるなら、
所得税の低いいまのうちであり、
大増税時代が到来して所得税がバカ高くなったら、仕事をぐっと減らして時間リッチにして、
貯め込んだお金をじっくり味わって使うのが、
とられる税金を最小化し、得られる楽しみを最大化する方法となる。


そうしてみると、いまは、
「稼ぐが勝ち、消費したら負け」の時代と言える。

個人間の物々交換は徴税が困難


法人を介在した取引と異なり、個人間の取引は徴税が難しい。

個人が年末のお掃除の手伝いとお米10kgを交換したことや、お米1kgとキャベツ5個を交換したことを、税務署が把握するのはとても困難だ。
インターネットで取引相手を探すならともかく、普段からつきあいのあるご近所や、クローズドなSNSで付き合いのある人達と仲間内だけで、現物手渡しで物々交換する分には、税務署がそれを把握するのは、たいてい徴税コスト割れしてしまうので、現実的ではない。

この手の個人間取引には、以下のようなものが考えられる。

  • 作り置きのお料理を3日分まとめて作り、キッチンとトイレの掃除もやります。
  • ワードとエクセルの使い方を家庭教師します。
  • 犬小屋を造ってあげます。
  • ベビーシッターします。
  • 写真の撮り方を家庭教師します。
  • 庭でとれたジャガイモを一箱。
  • 庭でとれたでっかいカボチャ4つ。
  • 冷凍ミニトマトと冷凍モロヘイヤおひたしのセット

重税国家における負け組は、高所得サラリーマン


高所得サラリーマンは、会社勤めのため、実際に仕事で使っているものであっても経費で落とせず、本来なら課税されるべきでない必要経費にまで重税をかけられまくることも多く、税負担は実際の税率以上に過酷なものになる。


また、高所得サラリーマンは、部署の責任者であることも多く、年に4ヶ月だけ働くような働き方が許されず、労働時間を減らすことで低所得者になって税額を減らすこともできないケースも多いだろう。


高所得サラリーマンは、その高所得と引き替えに、プロジェクト全体の責任を負うなど、ストレスも大きいことを考えると、どんどん割に合わない労働になっていく可能性がある。
そして、割に合わないとしても、多くの中高年の高所得サラリーマンは逃げ場がないので、搾取され続けるしかないだろう。


もちろん、将来ビッグになろうという野心あふれる若い学生は、重税国家になったら海外留学→海外就職が増えていくだろうが、それによって日本の人材市場が空洞化して国力が衰退するのは何十年も先の話になると思われる。



大増税が行われる可能性がけっこう高い理由


「税金の無駄遣いを無くせば増税しなくて済む」というのはウソだ。
無駄な公共工事や天下り法人を無くして捻出できる額はそれなりに大きいけど、それだけで増税を回避できるほど大きくはない。


今後高齢化が進むと、高齢者の医療、介護、年金の費用がどんどん増大していく一方、税金を払う労働人口は減っていく。
税金を使う人が増えて税金を払う人が減るのだから、財政が厳しくなるのも不思議はない。


「経済成長すれば、それほど酷い増税にはならない」というのは、理屈の上では正しいかもしれない。
「国の抱える借金も、経済成長が続くなら、それほど大きな問題ではない」というのも正しいし、
「経済成長を促す政策はある」というのも、理屈の上では正しいだろう。
しかし、それらの政策が実行される可能性は低い。
なぜなら、20年続いた長期経済停滞で国民が経済成長を信じなくなったからだ。


「努力すれば成功する」が、概ね本当か概ねウソかは、状況による。
景気のいい時代が長く続くと、努力が報われない経験が多い人よりも努力が報われる経験が多い人の方が多くなる。
だから、「努力して成功しよう」を正当化しようとする人が多数派になる。
一方で、不況が長く続くと努力が報われない経験が多い人のほうが、努力が報われる経験が多い人よりも多くなる。
だから、「努力しても成功しない」ことを正当化しようとする人が多数派になる。
なので、20年にわたって経済が低迷した日本では、
「努力しても成功しない」ことを正当化したくてたまらない人が多数派になった。
そして、
経済成長を信じない人は、不況で困窮したら、経済成長よりも福祉の充実による解決を望む。
自分以外の人間から重税をとりたて、福祉で自分の実質所得を増やすことを望む。


それに加え、日本の不幸な人間には、幸福な人間が転落して苦しむのがメシウマだという人が多い。
高所得者が重税に苦しむようになるのは、まさに他人の不幸は蜜の味だろう。


「セイフティネットを充実すれば、起業が増え、経済成長が起きる」というのもウソだ。
セイフティネットは必要だが、それを整備したからといって起業が増えたりはしない。
そもそも起業してビジネスを創り出せるような人達の多くは、起業に失敗しても転職先を自力で見つけられる人達だ。
「セイフティネットがないと、起業に失敗したら路頭に迷うから怖くて起業できない」なんてウソっぱちもいいところだ。


「セイフティネットを充実すれば、消費が増え、景気が良くなる」というのも根拠の怪しい議論だ。
いくらセイフティネットができても、政治が流動的な間は、そのセイフティネットがいつまで続くか分からない不安がある。
後期高齢者医療制度ではないが、政治に振り回されてセイフティネットがぐらついているようでは、安心してセイフティネットによりかかって、手持ちの金を景気よく使ってしまう気にならないだろう。
「低所得者は消費性向が高いから、低所得者に所得を再分配すれば消費が増えて景気が良くなる」というのもウソだ。
所得の再分配は必要だが、それは経済成長とは別の話だ。地域振興券の例が示すように、いくら低所得者にお金を配っても、将来に不安があるかぎり、彼らはたいして消費を増やさない。そして、充実したセイフティネットが覆されるリスクが全く感じられなくなるほど政治が安定するのは、いったいどれくらい先のことになるか、まるで見通しが立っていない。
また、年金制度が確実に保証されれば、老人達が貯め込んだお金を安心して使うなんてこともない。
年金が保証されているからといって貯金を使ってしまうと、「何年か後に大きな買い物をしたくなったとき、まとまったお金がないのでそれを買えない悔しい思いをしながら墓の中に入らなければならない」というリスクを抱える。若い人は、どうしても別荘が欲しくなったら、一生懸命働いてお金を稼ぎまくって貯金して夢を実現できるが、老人達は、手持ちの貯金を使ってしまうと、後から欲しいモノができても、若者のように激しく働いて新たに貯金を創り出すことができない。
だから、老人達にとっては、貯金は希望そのものであり、貯金を使ってしまうことは今後生まれる全ての夢を諦めることであり、年金が確実に保証されているかどうかに関係なく、希望=貯金のない余生を送るのはいやなのだ。
だから、
「セイフティネットが充実すれば、
老人達が貯め込んだお金を使うようになって、
景気が良くなる」というのは大嘘なのだ。


また、「まともな金融政策を行えば、そこまで酷い増税は必要ない」というのも、理屈の上では正しいかも知れない。
しかし、国民の大多数はまともな金融政策を実行する政治家や政党に投票してこなかったし、これからもそれは変わりそうにない。


なので、経済学上の正しい理屈はどうあれ、現実的には近い将来大増税が避けられなくなる可能性は十分にあると思われる。
そういう状況では、国民としてどう政治に参加するか、という話とは別に、個人としてこの状況にどう適応するかを考え、来るべき状況変化への準備を今からしておいてもいいだろう。



高所得者を搾取して遊んで暮らす戦略


「高所得者に重税をかけると、海外に逃げられてしまう」というのは、
一部の金持ちのポジショントークに過ぎない側面がある。
「日本から出る出る詐欺」だ。


実際には、日本の高所得者の多くは、本人の能力も仕事場も日本語経済圏に依存しており、重税をかけられても日本からは逃げられない。
高所得者に重税をかけると海外に逃げ出すのは、将来高所得者になる見込みの大きい才気あふれる若者達でしかない。
才気あふれる若者達はこれから海外に適応していける柔軟性を持っているが、中高年はそうはいかない。


それに加え、
優秀な若者達が国外に流出しても、すぐには経済には影響しない。
そもそも優秀な人材が海外流出すればすぐにでも経済が衰退するという論調自体、
金持ちのポジショントークに過ぎないところが多い。


そもそも、日本の科学技術を支える技術職や研究職におけるエリートはそれほど高所得を得ているわけでもないし、
上位5%の優秀人材が海外に流出すると、次の5%が二軍から一軍に昇格して穴を埋めるという効果もあるだろうし、
少ない手取りでもばりばり働くエリートだってそれなりにいる。
だから、優秀人材がかなり流出してしまっても、しばらくの間はけっこう社会はまわってしまうものだ。


もちろん、若手の優秀な人材が海外に流出し続ければ、
世界経済を牽引するようなすごい産業はますます日本語経済圏では生まれにくくなるし、
世界経済の知識化が進む中で高度人材の流出が続けば、
長期的には、美味しいフロンティアはほとんど英語経済圏に食われてしまうだろう。


しかし、それによって日本の国力が衰退するプロセスは緩慢なものであって、
たとえ最終的に重税高福祉体制が破綻するとしても、それまでには何十年もの長い歳月がかかる。
実際、共産主義体制ですら破綻するまでに数十年かかったのだ。


だから、日本では高所得者に大増税されるというシナリオもありうるし、
そうなったときの個人の適応戦略の一つは、
重税高福祉体制が破綻するまでの数十年間は、
日本から逃げられない高所得者から
可能な限り多くの富を搾取して
その富で豊かに暮らすことだ。


数十年後に重税高福祉体制が破綻するとしても、それは我々の死んだ後かも知れない。
だとしたら、そもそも破綻したときの準備なんてするだけ無駄だ。
万一生きている間に破綻したときは生活に困窮してもかまわないと覚悟を決めて、
破綻までの数十年間を太く短く豊かに暮らすという選択だってある。



一時的に向上した福祉は、じわじわと劣化していく


重税高福祉国家の未来がどうなるかは、ある程度スウェーデンが参考になる。


スウェーデンは国民負担率7割という重税国家にもかかわらず、
税収が不足してきている。


そして財源不足からスウェーデンは福祉がどんどん劣化してきている。
たとえば、医療サービスなどの劣化は深刻だ。しかも、今後ますます酷くなる見込みのようだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1606?page=2

 しかし、財政難は医療現場にも押し寄せている。「国は住民への医療サービスを行う義務がある」と法律上は高らかに謳われているものの、実際に医者に診察してもらうまでは一苦労だ。
 3歳になった直後、長男が高い滑り台からジャンプし、唇の端をザックリ噛み切ってしまった。ボードセントラーレン(Vardcentralen)という、自治体に属する診療所に連れて行ったが、状態がひどいので総合病院に向かった。
 ルンド大学病院へ運んで専門医に診てもらい、切れた唇を縫合するため全身麻酔を行うことになった。長男は飲まず食わずの状態で、痛みに震えながら真夜中まで待たされた。夫が怒りをあらわにして「いつまで待たされるのか」と大声を上げていなければ、もっと時間が掛かっていたはずだ。
 病院内のスタッフは、同じ病棟内でも携帯電話で互いに連絡を取り合い、迅速且つ効率よく仕事しているのだが、それでも医師・看護師の不足はスウェーデン医療の深刻な問題になっている。
 それに追い打ちを掛けるように、削減項目が1000を超える医療サービスコストの見直しが進められている。一部の総合病院では入院病棟のベッド数が3分の1〜2分の1まで削減され、外来救急は救急車搬送の患者以外を受け容れなくなった。


なんでこれほど重い負担にもかかわらず財源不足におちいるかについては、働かずに福祉に寄生して生きる人が多いということと、人材の国外流出が原因ではないかと言われている。


日本の場合、高齢化はスウェーデンよりも酷く、政府債務もスウェーデンよりもずっと大きいので、スウェーデンよりもさらに条件は悪い。
日本では、大増税されても税収のかなりの部分が増え続ける高齢者の医療費や介護費に吸い取られてしまったり、借金の返済に当てられてしまい、福祉へ回されるお金はそれほど大きくならず、福祉はスウェーデンよりも深刻な財源不足に陥るかもしれない。


日本も、重税福祉国家になった後、働かない人が増え、才気あふれる若者が国外へ流出していくに従って、ジワジワと国力が衰退し、福祉サービスは劣化していくだろうが、着地点はスウェーデンよりも悪い場所になる可能性がある。


日本に居続けるのは貧乏くじの可能性もある


だから、人によっては必ずしも日本に居続ける戦略が最適でないケースも多いだろう。
英語経済圏で自分の居場所を見つけられる才覚と気力のある若者は、いまのうちに英語と専門スキルを磨き、早めに英語圏経済圏に脱出する方が賢い選択である可能性も高い。


もちろん、英語経済圏で居場所を見つける才覚も気概もない若者や、年を取って適応力を失った人は選択の余地はないから、劣化していく福祉のなかで、なんとかサバイブする方法を見つけていくしかない。



貯金の保有には税金はかけられない


せっかくいまのうちから貯金していても、大増税時代になったら、貯金の保有に税金がかかってしまうのではないか、と思う人もいるだろうが、その心配はいらない。
貯金に税金をかけるのは無理だ。実際、貯金の保有に税金をかけている国は、少なくとも先進国では存在しない。
固定資産税はあっても、金融資産税というものは、どこにもない。
なぜなら、固定資産は国外へ逃げられないけど、金融資産は国外へ逃げられるからだ。


たとえば、100億円の不動産を持っている人がいて、その不動産の保有自体には、固定資産税をかけることができる。
その税額をいくら上げられても、その不動産を持って、国外へ移住することはできない。


しかしながら、100億円を現金で持っている人に、その100億円の現金の保有自体に多額の税金をかけたら、その人はその現金と一緒に国外に移住してしまう可能性が高くなる。
国外に移住しても、国籍が日本である限り資産保有税をかけるような法律にしたら、その人は国籍を変えるだろう。
それを防ぐには、その人が国籍を変えるときに、多額の国籍変更税をかけて財産の大部分を没収してしまうようにすればいいが、それはもはや先進国ではなくなってしまう。そんなことをやっている国は、先進国ではどこにもない。


このように、資産の保有そのものには税金をかけるのは困難なので、貯金の保有自体に税金がかかる可能性は低いと思われる。



為替変動リスク


日本語経済圏が衰退すると、円安が進行して、貯金の価値が目減りしてしまうリスクがある。これに対する対策も、インフレ対策と同じだ。外貨立てて貯金をするようにする。そのころには、その手のサービスがたくさん出回っているだろう。
それにまで課税されるようになったら、金や銀などの小片としてタンス預金しておくことになる。そこまできたら、もはや経済は末期的な状態だろうが。



相続税を増税されないのか?


所得税や消費税のようなフローに対する課税を強化しすぎると経済をゆがめてしまうので、ストックに対する課税である相続税を強化するのが、理屈の上では理想だ。
しかし、実際には、高齢者人口が増えていくので、相続税を増税しようとする政党は多くの老人有権者の支持を失うため、相続税増税に実現性がどれだけあるかは疑問なところだ。

*1:これは、ミクロ経済学の教科書に載っている「税の帰着(tax incidence)」と言われる問題だ。税金は、それを直接支払う人が全額負担するわけではない。価格メカニズムを通して、市場の他のプレーヤーに転嫁される。わかりやすい例が消費税と売上税の違いだ。「消費者が消費をしたらその5%を消費者が税金として支払う(ただし徴収は企業がやる)」場合、その税金は「消費者」が「支払って」いる。一方で、「企業が売上を上げたら企業はその5%を税金として支払う」場合、その税金は「企業」が「支払って」いる。しかし、消費税が上がればその分だけ税込み価格が上がって買い控えが起き、売上が落ち込んでしまうので、企業は税抜き価格を下げるという形で税込み価格を元の値段に近づけなければならず、結果として消費税の一部を「企業」が「負担」せざるをえなくなる。一方で、売上税が上がればその分だけ企業のコストが上がるので、商品の値上げという形で売上税の一部を「消費者」が「負担」することになる。このように、価格メカニズムが作用することにより、「税金を誰が支払うか」に関係なく、消費税と売上税は中長期的には同じものであり、どちらも消費者と企業の両方が負担することになるので、「売上税を払うのは、企業なんだから、結局、株主や経営者の負担が増えるだけで、俺には関係ないな。企業からお金をとるのは良いことだよ」と安心していると、知らず知らずのうちに消費者の負担がどんどん増えていくことになる(ちなみに、この説明で使った消費税や売上税は、いわゆる「付加価値税」のことであり、厳密には付加価値に対する課税であって売上そのものにかかる課税のことではない)。もっと単純な例だと、化石燃料税が上がれば、それを石油会社だけが負担するのではなく、価格メカニズムが連鎖的に機能して、風が吹けば桶屋が儲かる式に、結局は各種の商品やサービスに転嫁され、ガソリンを直接買うことがない多くの一般消費者もそれを負担するようになる。つまり、「自分以外の人間や企業が払う税金ならば、値上げされても自分は困らない」と単純に考えてしまうと結果的に「肉屋を支持するブタ」になるはめになる。ついでに、個人所得税の負担転嫁がどのように起こるかの例を挙げると、たとえば、多業態戦略で美味しい飲食店を次々とプロデュースする企業の、高給取りの腕利き売れっ子フードプロデューサーにかかる所得税率が上がり、追加的に100万稼いだときにかかる税金(限界税率)が50万円→70万円に上がったとすると、100人のフードプロデューサのうち10人ぐらいは労働量を減らしたり、引退の時期を早めたりするかもしれない。追加的な労働に見合った追加的な手取りが目減りするので、割に合わないと考える人が10人に1人ぐらいは出てくるからだ。そうすると、企業では腕利きフードプロデューサの労働力が不足することになる。その場合、企業は他社の腕利きプロデューサーをヘッドハンティングしてくることになったりする。こうして引き抜き合戦がおこると、腕利きプロデューサーの年収は上がり、値上げされた所得税を支払ってでも、割に合う手取りになり、労働量を増やしたり引退の時期を少し伸ばしたりするプロデューサーが増えて、プロデューサ不足は解消されることになる。しかし、引き上げられたプロデューサの年収分は、商品価格の値上げという形で消費者から回収されることになったりするので、結局は消費者も負担することになる。もちろん、複雑な価格メカニズムが作用するので、中長期的には、消費者だけでなく、他の従業員、経営者、株主など、そのお店の利害関係者全てに、負担が分散される。ただし、中長期では弾力的な価格も短期で見ると弾力性が低かったり、短期では価格硬直性があったりするので、短期的には利害関係者のうちの特定セクターだけが負担する形もある。この辺の説明は、マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 の解説が丁寧で分かりやすいので、詳しくはそちらに譲る。

*2:厳密に言うと、貨幣を介在しない売買であっても税法上定義される「所得」が発生すれば税金がかかることになっているので、貨幣システムの利用というより売買に対して課税されるわけだが、制度上や運用上の制約もあって、実質的にはそれは「貨幣システムの利用料」という概念で近似できる。さらに言うと、税金にはストックに対する課税とフローに対する課税があり、「貨幣システムの利用料」に相当するのは、フローに対する課税となる。ストックに対する課税の例としては固定資産税や相続税がある。フローに対する課税としては消費税、所得税、法人税などがある。

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