SDGsへの取り組み
SDGsへの取り組み
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。富士通のパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGs達成への貢献を社内外に約束するものです。富士通は、長年にわたりテクノロジーを通じて社会に価値を提供してきたグローバル企業として、社会の変革に主体的に貢献する責任があります。世界をより持続可能にするために、社会に対して、より良い、かつスケールの大きなインパクトを与え、自社も持続的に成長していくことを目指しています。富士通は、2023年5月に発表した中期経営計画において2030年に向けたVisionを「デジタルサービスによってネットポジティブ(注1)を実現するテクノロジーカンパニーになる」と定めています。このVisionを実現するために必要不可欠な貢献分野(マテリアリティ)である「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイングの向上」への取り組みを通じて、SDGsへの貢献を目指します。
富士通は、SDGsの本質を、2050年に90億人を超えると言われる人類が、地球の限界内で良い生活を営めるよう、2030年までに成し遂げるべきシステムトランスフォーメーションであると捉えています。SDGsに掲げられる課題は、環境・社会・経済の要素が複雑に連鎖して構成されており、その解決には、社会全体を捉えたデジタルトランスフォーメーション(DX)が鍵となります。富士通は、デジタルテクノロジーを駆使して、業種の壁を越えたエコシステムを形成し、自社やお客様の経営、社会の在り方を変革し、社会課題の解決に貢献していきます。
SDGsは、グローバルな社会ニーズを包括的に示したものであり、ステークホルダーとの共通言語です。富士通は、SDGs達成への取り組みを、国際機関や各国・地域政府、民間企業、NGO、NPOといった幅広いステークホルダーとの共創の機会とし、社会課題に多面的にアプローチすることで、より大きなインパクト創出とその最大化を図ります。
- (注1)富士通にとってのネットポジティブとは「社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにする」と定義しています
社内における実践
富士通では、商品企画・商談の検討やプレスリリース発行時に、サービスやソリューションがSDGsの169ターゲットのうちどのターゲットと関連するか社員に考えてもらう仕組みを構築しています。社員がSDGsの目標達成への貢献を日頃から意識し、社会課題起点でビジネスへ取り組むようにしていくことを目的としています。
デジタルテクノロジーとサービスを活用したSDGs貢献例
スーパーコンピュータ「富岳」テクノロジーで支える「気象災害の精緻な予測」と「レジリエントな社会の実現」
近年、気象災害の増加に伴い、被害軽減のための高精度な予測がますます重要となっています。気象庁は、大雨、地震、津波などの観測データを国内外から収集・解析し、防災気象情報を毎日作成、防災機関や国民に提供することで、災害対策や交通安全の確保に貢献しています。しかし、2018年8月や2023年3月の交通政策審議会気象分科会において、さらなる高精度な予測の実現と、民間事業者や研究機関とのデータ共有・利活用推進が課題として挙げられています。
富士通は、約20年にわたり気象庁のアデス(注2)、アメダスセンターシステム(注3)等の社会システムを運用してきた実績を持ちます。2023年にはスーパーコンピュータ「富岳」(注4)の技術を用いた「PRIMEHPC FX1000」(注5)を「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」として導入することにより、「線状降水帯の予測精度の向上の加速化」に貢献しました。さらに2024年3月、「PRIMERGY CX400 M7」(注6)を導入した新スーパーコンピュータを「第11世代スーパーコンピュータシステム」として構築し運用を開始。「第11世代スーパーコンピュータシステム」と「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」を一体として運用することにより、従来比約4倍の計算能力となり、「線状降水帯の解明に向けた研究と予測精度の向上」や「大容量の気象データの共有」を可能としました。
気象庁は「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」(注7)の中で、豪雨防災、台風防災、社会経済活動への貢献、温暖化への適応策 の4項目で、数値予報の技術開発を進めています。富士通は、24時間365日、安定稼働が必須である気象庁の業務を支えるSustainability Transformation(SX)パートナーとして、ともに「気象災害の精緻な予測」と「レジリエントな社会の実現」を目指していきます。


- (注2)アデス:気象庁の気象情報伝送処理システム
- (注3)アメダスセンターシステム:気象庁の地域気象観測システムのデータを扱うアメダスデータ等統合処理システム
- (注4)富岳:理化学研究所と富士通が共同開発
- (注5)FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000:Armv8-A命令セットアーキテクチャーをスーパーコンピュータ向けに拡張した 「SVE(Scalable Vector Extension)」を採用したCPU「A64FX」を 搭載。高い電力あたり性能とともに、高性能積層メモリであるHBM2の高いメモリバンド幅による高い計算効率を実現
- (注6)PRIMERGY CX400 M7:第 4 世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載。2Uサイズに最大4台のサーバノードを搭載可能なマルチノードサーバ
- (注7)気象庁サイト「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画
」
- (注8)筐体デザインのNAPSについて:本体パネルのNAPSは、本システムを含むNumerical Analysis and Prediction System(数値解析予報システム)の略で気象庁の呼称であり、富士通の商標ではありません
本件に関連する主なSDGs




脱炭素社会を目指す光ネットワークビジネスの取り組み
5Gサービスの全国展開に伴い、動画などデータ量が多いサービスの利用者が増加し、さらなる電力使用量の増加が想定され、通信事業者やデータセンター事業者の脱炭素化への取り組みも課題となっています。
富士通はこれらの課題解決に向け、最先端光伝送技術を用いた伝送量の大容量化とともに、低消費電力化への取り組みにも力をいれており、国内大手通信キャリアに採用されています。NTTグループにおいては水冷技術を採用した光伝送システムを用いた次期ネットワークの構築を進めています。また、KDDIおよびソフトバンクにおいても富士通のソリューションを新規採用、お客様が目指すネットワークインフラの大容量化に寄与しつつ、消費電力を大幅削減し、光ネットワーク全体の脱炭素化に貢献しました。
- 「1FINITY」
オープンインターフェースで他社製品と接続が可能な富士通製Open Line System「1FINITY」シリーズを利用することで、IPレイヤーと光伝送レイヤーを融合した構成(注9)を実現しました。ルーターおよびコア光ネットワーク間も含め光接続が可能となります。また、従来と比較し、容量拡張が容易なため通信トラフィックの増大に迅速に対応可能です。さらに、世界で初となる光伝送装置への水冷技術を採用した1FINITY Ultra Optical Systemにより世界最高クラスの大容量、低消費電力化を可能としカーボンニュートラルの実現に貢献します。
富士通は今後も最先端技術を活用して社会や人々が抱える課題を解決し、SDGs(持続可能な開発目標)が目指す社会の実現に貢献していきます。
従来構成とIPレイヤー・光伝送レイヤー融合構成との違い(KDDIの事例)
- (注9)ルーターから直接WDM用光信号を送信し、OLSやWDMによって伝送する構成を指す
- NTT様が次期全国コアネットワークの構築に向けて光伝送プラットフォーム「1FINITY Ultra Optical System」を採用
- KDDI、シスコ、富士通、電力使用量を約40%削減した通信網の本運用を開始
- ソフトバンク、富士通のディスアグリゲーション型光伝送装置を採用したAll optical networkを、全国伝送網のコア領域へ展開完了
本件に関連する主なSDGs



膵臓がんを非造影CT画像から検出するAI技術~健康社会実現への貢献~
膵臓がんは早期発見が難しい病気であり、初期段階で発見できるように検査機会を増やし、微小な疑いもくまなく指摘できる技術の確立が課題となっています。
この課題解決に向け、富士通は、2022年4月から一般財団法人 脳神経疾患研究所附属 総合南東北病院(注10)ほかと共同で、人間ドックなどで広く実施されている非造影CT画像からでも膵臓がんを検出するAI技術の開発を進めてきました。
非造影CT画像はコントラストが低いため、膵臓の位置特定やがんの検出が困難でした。そこで、富士通はAI技術を用いて、解剖学的な組織のつながりを考慮し、前後の断面画像同士の連続性を推定する技術を開発しました。これにより、画像内で連続性の強い領域には立体的な解析、弱い領域には平面的な解析を自動的に行います。総合南東北病院のCT画像に対して評価した結果、9割の精度で膵臓の領域内でがんの疑いがある部位を検出することに成功しました。
このAI技術は、富士通の画像解析技術と総合南東北病院の医学的知見を融合したコンバージングテクノロジー(注11)を活用した成果であり、膵臓がんの早期発見率の向上に貢献することが期待できます。2023年には、医師等2万人以上が参加するJDDW2023(注12)で本技術を発表し、その社会ニーズと技術の先進性を示しました。
富士通は、今後も研究成果を医療や健康増進サービスなどに広く応用し、健康な社会づくりに貢献していきます。
開発する技術による膵臓がんの疑いがある部位の検出イメージ
- (注10)一般財団法人 脳神経疾患研究所附属 総合南東北病院:所在地 福島県郡山市、理事長 渡邉一夫
- (注11)コンバージングテクノロジー:富士通が研究開発に注力する、特定の目的を達成するために2つ以上の異なる分野の科学や技術を融合した技術
- (注12)JDDW2023:2023年度日本消化器関連学会
本件に関連する主なSDGs

消防や救急の現場活動を支援するスマートフォンを活用した情報統合共有システムを提供開始
消防士や救急救命士は、現場活動において、車両に設置したAVM(Automatic Vehicle Monitoring)と呼ばれる車載器で通報内容や指令内容などを確認していましたが、固定式のため車両から持ち運べないこと、さらに設置費用が高額なため全車両への設置が難しいなどの課題がありました。また、消防力の強化や救急出動の増加に対応するため、スマートデバイスを活用し、業務負荷の軽減と情報共有の実現を通じて、職員の疲労軽減や労働力不足を解消することが求められています。
富士通はこれらの課題解決に向けて、消防指令システムの構築ノウハウをもとに、災害現場で活動する消防士や救急救命士向けにスマートフォンを活用した情報統合共有システムを開発しました。
本システムでは、無線の聞き漏らしや重要情報の通知の見逃しを防止するバイブレーションなどのプッシュ通知機能、車両からの降車後も各隊の活動状況をチャットでリアルタイムに情報共有できるタイムライン機能、現場活動後の救急報告書作成に向けた、傷病者のバイタルや処置内容などの情報登録機能など、消防士や救急救命士の初動対応から報告まで現場活動を幅広く支援します。
また、消火栓の予約状況を他の消防車と共有するための水利予約(注13)や搬送先の医療機関の選定を支援する名称検索、内科や小児科などの診療科の絞り込み検索機能も備えています。大規模災害が発生した緊急時には、一般的にAVMが設置されない広報車や搬送車などで本システムをAVMとして利用できるなど、柔軟な車両運用が可能です。
富士通は今後も消防や救急の現場活動を支援し、住民が豊かに安心して暮らせるレジリエントなまちづくりに貢献していきます。


- (注13)消火活動では、1つの消火栓を1台の車両が使用するため、どの消防車がどの消火栓を使うかをあらかじめ共有するため消火栓を予約すること
本件に関連する主なSDGs





AIの世界的な需要増加に伴う電力問題とGPU不足の解決を目指す
昨今、AIへの需要が世界中で爆発的に高まっていますが、高度なAIの実現には膨大な計算能力と電力が必要となるため、AIの開発・運用による環境負荷が懸念されています。同時に、AI処理に不可欠なGPUの世界的な供給不足も重要な課題となってきています。
富士通は、これらの課題解決に貢献するために、少ないGPUでもAI計算を効率よく実行できるミドルウェア技術「AI Computing Broker」を開発し、提供(注14)しています。本技術は、同時に複数実行する処理のうち、GPUを割り当てることで最も効率が向上する処理を判断し、リアルタイムかつ優先的に割り当てる世界初の技術です。
これにより、従来の半分以下のGPUでAI処理が可能になります。最新のGPUの消費電力は1台あたり700ワットにもなりますが、AI計算の消費電力の大部分を占めるGPUの使用台数の削減により、AIの開発・運用における消費電力が大幅に削減されます。例えば、大規模AI開発で必要なGPU1万台規模のシステムの場合、年間で30,660MWh(メガワットアワー)もの電力量を削減(注15)することが可能となります。
富士通は今後も持続可能な社会を実現するイノベーションの創出につながるコンピューティング基盤の実現を目指していきます。
性能評価デモ(3Dタンパク質構造推定)
2台のGPUを利用した場合(左図)と、1台のGPUでAI Computing Brokerを適用した場合(右図)では、1分間でほぼ同数のタンパク質構造を推定。
また、両画面の左側はGPUの利用率でAI Computing Brokerを適用した場合では、高い利用率を維持している(グラフの横軸は経過時間)
- (注14)「AI Computing Broker」を開発し、提供:現在は、先行ユーザーに提供
- (注15)年間で30,660MWhもの電力量を削減:日本の4人家族 約5400世帯分の年間消費電力量削減に相当<4人家族の年間消費電力量 約5,700kWh(キロワットアワー):「環境省 令和4年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査」より算出>
本件に関連する主なSDGs

