世界三大ブルーチーズのひとつとして有名なゴルゴンゾーラ。匂いのキツさやその外見から敬遠する人も多いが、クセの強さが人気の理由でもある。
最近はスーパーでもわりと手頃な値段で手に入るし、デザートに使われたりもするので身近になった感がある。
ゴルゴンゾーラはイタリアでも人気が高く、そのままはもちろんパスタやリゾット、ピッツァなどさまざまな料理にも使われる。このゴルゴンゾーラを堪能できる祭りがミラノの近くで開催されたので、ちょっと出かけてみた。
ゴルゴンゾーラを食べに、ゴルゴンゾーラに行ってきた
その祭りが開催されたのはミラノから北東へ20kmほど離れたとある町、その名もゴルゴンゾーラという。ご想像の通り、ブルーチーズのゴルゴンゾーラはこの町の名前に由来している。ミラノからは地下鉄に乗って約30分の距離だ。
駅の名前はもちろん「ゴルゴンゾーラ」
近代化や工業化の流れもあり、現在この町ではゴルゴンゾーラチーズは生産されていない。ただ、起源の地ということで毎年この時期になると祭りが開催され、近郊からゴルゴンゾーラ好きが集まってくる。
祭りの会場は駅から10分ほど歩いた場所。イベント会場ではなく、近辺の道路を封鎖して開催される。入口にはカウンターがあって「ゴルゴパス」なるものが売られているが、入場券ではなくオフィシャルの露店でゴルゴンゾーラ料理と交換できるチケットという扱い。実際はパスを持ってなくて自由に出入りできる。
ここが受付カウンター、ゴルゴンゾーラ料理2品付きの「ゴルゴパス」は9ユーロ(約1170円)
ちなみにパスを買おうとすると、受付のおばちゃんにこんなことを言われた。
「小さい子供がいるんでしょ? 料理を受け取るカウンターはすごく並んでるからやめといたら? オフィシャル以外にも露店はいっぱいあるから、行列の少ないところ探したほうがいいよ」
ということで、パスを購入しないことを勧められた。こんなゆるさも魅力だろうか。お言葉に甘え、パンフレットだけいただいて入場することにした。
こちらがパンフレット、といっても会場の地図が記載されているだけだが
会場に入ると、道端にはびっしりと露店が並ぶ。メインのゴルゴンゾーラはもちろん、白カビ系やハードタイプ、羊乳チーズなどが山積みで売られている。チーズが好きな人ならこれだけで垂涎の光景のはず。
ゴルゴンゾーラはその場でカットして好きな大きさで購入できる
こちらは熟成の進んだセミハード系のチーズ
また、生ハムやポルチーニ茸、プロセッコ(スパークリングワイン)など他のイタリア食材の露店も出ていて、ここだけでイタリアグルメは一通り楽しめそうな感じだ。
チーズよりこっちがいいという人も多いのでは?
ニョッキ、ポレンタなど、ゴルゴンゾーラ料理が並ぶ
もちろん、露店をぐるぐると回るだけではもったいない。ここに来た目的はゴルゴンゾーラを使った料理だ。しばらく歩くとニョッキの露店を見つけたので、まずはそれを購入してみた。
ゴルゴンゾーラのニョッキ、しっかり盛って5ユーロ(約650円)
ゴルゴンゾーラとニョッキはイタリアでは定番の組み合わせ。じゃがいもの粉を練り込んだもちもちパスタに、クセの強い濃厚なチーズのソースが絡んでおいしい。
ボリュームのある組み合わせなので、少食な人ならこれだけでも十分かも。
ちなみにこのソースはフライパンの上にゴルゴンゾーラと生クリーム(もしくは牛乳)を入れて弱火で温めながら溶かすだけでできる。興味がある人はぜひ試してみてほしい。
次に見つけた露店はこちら。これ、なんの料理かおわかりになるだろうか。
まさに男の料理といった感じ
これはポレンタと呼ばれる料理で、とうもろこしの粉を弱火にかけながら練って作られる。お湯で練るだけとはいえ、1時間ちかくかき混ぜる必要があるのでとにかく体力勝負の料理だ。
かつてイタリアが貧しかった頃によく食べられていた粗食だが、ヘルシーで素朴な味を好むイタリア人からの人気はいまだに高い。通常はこれにソースをかけてパスタの代わりにしたり、パンの代わりとして肉料理などとあわせて食べられる。
という前知識があったので、てっきりゴルゴンゾーラのソースがかかったものが出てくると思ったら、カウンターで出されたものはこちら。
ポレンタの下にゴルゴンゾーラが埋まっている……
写真で見ると分かる通り、ポレンタの下にこぶしくらいのゴルゴンゾーラの塊が埋まっている。ポレンタの熱でチーズがほんのりと溶けてこれもおいしい。
塊が大きいのでボリュームはかなりのものだが、ゴルゴンゾーラを堪能するという意味ではこれ以上ない料理かもしれない。
チーズ売り場には常に人だかりができていた
ちなみにゴルゴンゾーラは青カビ多めの「ピカンテ」、少なめの「ドルチェ」の2つが定番だが、ほかにも生クリームを加えてクリーミーにしたものや、牛乳ではなく羊乳で作ったもの(さらにクセが強い)、くるみを混ぜたものなどさまざまな種類がある。
こちらはクリーミーなゴルゴンゾーラ、口の中でどろりと溶ける
いずれもチーズ好きにはたまらない味わいだが、少し風変わりなチーズは専門店か生産地に行かないとなかなか手に入らない。これらのマニアックなチーズに出会えるのも祭りの魅力と言えるだろう。こうした食に関する祭りはイタリアの各地で頻繁に行われている。旅行を計画中の人は選択肢に入れてみてもいいかもしれない。
(鈴木圭)
編集部おすすめ