報道発表資料
来年1月から2月に開催予定の第4回会合で報告書がとりまとめられ、国連持続可能な開発委員会(CSD)の第8回会合に提出される予定。
1.今回の会合の概要
(1)参加国等
約60のメンバー国、約20のオブザーバー国、ITTO、FAO等関係国際機関、NGO等の参加を得て、5月3日(月)から5月14日(金)までスイス(ジュネーブ)で開催された。我が国からは、外務省、環境庁、林野庁が参加した。
(2)検討項目
IFFでは、第1回会合(97年10月にニューヨークで開催)で決定された以下の検討項目について討議することとなっている。
[1].a | IPF行動提案(参考を参照。)の実施促進方策 |
[1].b | 持続可能な森林経営の進捗状況のモニター |
[2].a | 新たな国際基金の創設、その他の資金調達方法 |
[2].b | 貿易と持続可能な森林経営の調和方策 |
[2].c | 持続可能な森林経営のための環境保全上適正な技術移転の方策 |
[2].d | その他のIPF検討項目で更なる検討が必要な事項の検討 |
[2].e | 国際機関、森林関連諸条約の役割、活動等の分析 |
[3]. | 国際的な取決め及びメカニズムの検討 |
第3回会合では、このうち、[1].b(モニタリング)、[2].a(資金問題)、[2].b(貿易)、[2].c(技術移転)、[2].d(その他の検討項目)、[3].(国際的な取決め・メカニズム)が主な議題となった。
(3)検討結果
今回議論が行われた項目については、「結論」と「行動の提案」からなる報告書の案がとりまとめられたが、各国の意見が調整できなかった箇所には括弧が付され、第4回会合で引き続き議論が行われることとなった。
(4)森林条約等の国際的な取決め・メカニズムについて
今回の会合では、将来の「国際的な取決め・メカニズム」の内容、機能等が議題となり、全体会合で各国が自らの意見を表明したが、実質的な討論は行われず、共同議長がとりまとめた報告書の案では、各国の主張がそのまま括弧付きで盛り込まれた。
今後、カナダやコスタリカなどが開催する専門家会合などで検討が行われ、それらの結果を踏まえ、第4回会合で最終的な議論が行われる予定。
(5)今後の動向
来年1月31日から2月11日にニューヨークで第4回会合(最終会合)が開催され(予定)、同年の第8回CSDに提出する報告書がとりまとめられる予定。
2.検討項目ごとの結果
(1)持続可能な森林経営のモニタリング([1].b)
「行動の提案」として、各国は、森林の経営、保全及び持続可能な開発に関する情報を整備し、関係者が広く利用できるようにすること、国際的に検討が進められてきた持続可能な森林経営に関する「基準・指標」をさらに改良し、それらに基づきモニタリングを行うことなどが合意された。
途上国は、自国の森林のモニタリングを行うためには、新たな追加的な資金が必要であると主張したが、先進国と調整がつかず、検討項目[2].a(資金問題)とあわせて、引き続き議論することとなった。
(2)資金問題([2].a)
前回の会合に引き続き、途上国は「新規かつ追加的な資金」の必要性を指摘し、新たな国際的な森林基金の設立などを求めたが、先進国は既存の資金メカニズムの活用等を求め、報告書には多くの括弧が残ったままとなった。
(3)貿易と環境([2].b)
前回の会合で貿易自由化と持続可能な森林経営との関係について議論が紛糾し、報告書全体が括弧付きとなっていたが、今回の会合では、各国が、持続可能な経営が行われた森林から生産された木材製品等を貿易の対象とすることに貢献すること、違法貿易を減らすための国家レベルの行動を検討し国際協力を推進すること等が「行動の提案」として合意された。
しかし、貿易自由化等の議論では調整がつかず、いくつかの括弧が残った。
(4)技術移転([2].c)
前回の会合に引き続き、途上は、持続可能な森林経営のためには有利な条件での技術移転が不可欠であるとし、技術移転を促進する新たなメカニズムの設立などを求めるとともに、先進国が途上国の森林の生物資源から得た研究の成果や利益を途上国に還元することなどを求めたが、先進国と意見が対立し、調整がつかなかった。
このため、報告書のいくつかのパラグラフで括弧が残ったままとなった。
(5)その他の検討項目([2].d)
その他の検討項目では、森林減少の根本原因、森林に関する伝統的知識(TFRK)、森林保全と保護地域、森林研究、脆弱な地域の森林のモニタリング及び復旧等について、各国等のイニシアチブによる検討(コスタリカとNGOのイニシアチブによる森林減少の根本原因に関する検討、ブラジルと米国のイニシアチブによる森林の保護地域に関する検討など)の結果をもとに議論が行われ、それぞれの項目ごとに報告書の案が検討された。
森林減少の根本原因については、貧困、安定した土地所有パターンの欠如、森林に依存する先住民や地域社会の権利・ニーズに対する法制上の不適切な認知などが例として挙げられ、森林減少に関する主要な取組は、IPF行動提案の実施であるとされた。また、「行動の提案」として、各国が、森林減少の根本原因に取り組むための実際的な手段を検討し講じること等が合意された。
森林に関する伝統的知識(TFRK)については、持続可能な森林経営に向けた政策の立案、実施などを支援するものとして評価されているが、途上国は、その利用による利益を途上国に公正かつ衡平に分配すること等を求め、先進国との意見の一致をみなかった。
森林の保全と保護地域については、保護措置と生物資源の持続的な利用を統合する「エコシステム・アプローチ」の考え方を基本として、保護地域の設定・管理等を進めていくこととされた。
(6)国際的な取決め及びメカニズムの検討([3])
今回の会合では、将来の「国際的な取決め・メカニズム」の内容、機能等が議題となった。
森林条約等の国際的な取決め・メカニズムについては、カナダ、EUなどが作成に積極的または前向きな立場をとっているが、米、ブラジル等は引き続き慎重な姿勢をとっている。
我が国は、92年の地球サミット(UNCED)以降も森林の減少・劣化の問題は収まっておらず、「何らかの国際的な取決め・メカニズム」づくりに向けた国際的なコンセンサスの形成が重要であることを指摘し、各国の取組に関し、
-
各国の政策の中で「持続可能な森林経営」に高い優先度を与えること、
-
国際的に共有できる概念や手法の下で効率的・効果的に各国が「国家森林プログラム」の整備・充実を推進すること、
-
「持続可能な森林経営」の「基準・指標」の策定・適用を推進すること、
-
「持続可能な森林経営」が行われている森林から生産された木材を貿易の対象とするよう取り組むこと
が重要であると主張した。
しかし、今回の会合では、他の検討項目の議論に多くの時間が費やされたことなどから実質的な討議は行われず、共同議長がとりまとめた報告書案には、各国の主張がそのまま括弧付きで盛り込まれた。
今後、「国際的な取決め・メカニズム」の機能や内容について、IFF事務局がさらに検討することとなっており、カナダ・コスタリカイニシアチブ(注)等の成果も踏まえ、第4回会合で最終的な報告書のとりまとめに向けた議論が行われる予定。
(注)カナダとコスタリカが主催して一連の専門家会合を開催し、森林問題に関する「国際的な取決め及びメカニズム」の具体的な要素などを検討するもの。
(参考)
IPF(森林に関する政府間パネル)とIFF(森林に関する政府間フォーラム)について
-
1995年4月に開催された第3回国連持続可能な開発委員会(CSD)では、森林分野の広範な課題について検討を行い、第5回CSD会合にその結果を報告することを目的として、CSDの下に「森林に関する政府間パネル(IPF)」を設置することが決定された。
-
IPFでは、95年9月の第1回会合以降計4回の会合において森林問題に関する各種の課題についての検討が行われた。
-
97年2月の第4回会合では、国家森林プログラムの策定、世界的な森林資源の評価 等に関して約150の「行動提案」を盛り込んだ報告書がとりまとめられた。
-
IPFの報告書は、97年4月の第5回CSD及び同年6月の国連環境開発特別総会 (UNGASS)に提出された。
-
UNGASSでは、さらに、「行動提案」の実施促進、資金問題や技術移転問題等の 検討、森林条約などの国際的な取り決め等の検討・コンセンサスづくり等を行い、99年 及び2000年のCSD会合にその結果を報告することを目的として、CSDの下に新た に「森林に関する政府間フォーラム(IFF)」を設置することが決定された。
-
IFFは、97年10月にニューヨークで第1回会合を開催して検討を開始した。
第2回会合は、98年8月から9月にジュネーブで開催された。
- 連絡先
- 環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課 長 竹内 恒夫 (内線6740)
調整官 三好 信俊 (内線6284)
補 佐 藤田 賢二 (内線6286)