報道発表資料
今回の白書では、20世紀における環境行政の歩みを振り返ることを通じ、21世紀 の持続的発展に向けた環境政策の在り方について考察することをねらいとしてお り、経済社会のあらゆる主体が明確な目的意識をもって環境保全を自らの活動に組 み込んでいくことにより、新たな可能性を秘めた「環境の世紀」が実現するという 考えに立ち、産業活動、国民生活、国際社会のそれぞれについて、環境保全上の重 要課題とそのための対策の方向性を示す内容となっている。
< 全 体 構 成 > ○平成10年度環境の状況に関する年次報告 第1部 総説 序 章 20世紀の環境問題から得た教訓は何か 第1章 経済社会の中に環境保全をどう組み込んでいくのか 第2章 環境に配慮した生活行動をどう進めていくのか 第3章 途上国のかかえる環境問題にどう関わるべきか 第4章 環境の現状 むすび 第2部 環境の状況及び環境の保全に関して講じた施策 ○平成11年度において講じようとする環境の保全に関する施策 序章 20世紀の環境問題から得た教訓は何か 第1節 環境問題の変遷と対策の系譜
明治期以降、局地的な鉱害問題、積極的な工業化に伴う健康等への被害が見られたものの、十分な対策は講じられなかった。戦後、経済復興が最優先される中、高度成長期に激甚な公害問題が生じた。このため、政府は、昭和45年の公害国会での公害関係14法の制定・改正、昭和46年の環境庁設置等各種の環境保全施策を講じていくこととなった。
1 戦前の環境問題の変遷と対策の系譜 2 高度成長期の環境問題の変遷と対策の系譜 3 環境行政の体系化 4 多様化する環境問題と対策の模索 第2節 地球化時代の環境問題と対策の進展
昭和末から平成の頃になると、地球温暖化やオゾン層破壊の問題など地球規模化した環境問題の重要性が国際的にも認識されるようになり、「環境基本法」(平成5年)、「環境基本計画」(平成6年)、「環境影響評価法」(平成9年)、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年)などが次々と制定された。
1 昭和60年代以降の社会経済の動向と環境問題 2 国土利用の変貌に伴う環境問題への対応 3 自然保護施策の進展 4 国民の環境保全活動に対する支援・育成 5 地球環境問題に対する我が国の取組 6 新たな環境政策の枠組み 第3節 20世紀の教訓~新たな世紀の持続的発展に向けた環境メッセージ
20世紀の貴重な教訓を得て、人々の価値観や経済社会の在り方は、利便性の飽くなき追求から持続性の確保へと変わりつつある。「環境の世紀」に向けた様々なメッセージを真摯に受け止めるとともに、人々の行動原理の中に環境の価値をより重要な要素として位置付ける「環境合理性」という考え方を広めていくことが求められている。
(激甚な公害問題への対策から学んだこと) (都市・生活型公害への対策から学んだこと) (地球的規模の環境問題から学んだこと) (自然保護対策に関して学んだこと) (経済社会の変遷を通して学んだこと) (計画的な環境対策に関して学んだこと) 第1章 経済社会の中に環境保全をどう組み込んでいくのか 第1節 環境面から考察する産業構造の変化
我が国の産業構造は、現在、第1次産業のウエイトが低下、第2次産業がほぼ横ばい、第3次産業は一貫してウエイトを高めている状況である。一方、依然として大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済構造が維持されている。
1 我が国の産業構造の変化と環境問題との関わり 2 我が国の産業構造と物質収支に関する考察 第2節 産業活動における環境保全の内在化の動き
持続可能な経済社会の具体化のため、産業活動においては、生産単位当たりの資源・エネルギー投入量を削減しつつ発生する環境負荷を抑えていくことにより、環境効率性を高めていくことが必要である。
1 持続可能な経済社会を構築する産業活動の方向性 2 「モノ」づくりを中心とした産業における取組 3 「食」を支える産業における取組 4 「マネー」の流れを調整する産業における取組 5 産業活動における環境保全の内在化に向けて 第3節 環境保全と地域経済の融合に向けて
地域資源の地域内での利用・循環といった「モノ」の循環を進めること、そしてそれを支える「人・情報」の交流や地域の経済循環を促進する取組により、環境保全と地域経済の活性化を促すことが必要である。そしてこのような地域経済がグローバル経済を補完しながら環境保全上望ましい形で展開されることが必要である。
1 経済活動のグローバル化と地域経済 2 地域経済を形成する産業活動の在り方~地域内資源活用の取組 3 地域の環境保全を支える「人、情報等」の活性化を促進する取組 4 環境保全と地域経済の融合に向けて 第4節 環境保全を内在化した経済社会の実現に向けて
環境保全型の経済社会を目指す環境政策としては、(1)企業の環境効率性を高めるための「環境情報の社会インフラ」の整備、(2)環境合理性の考え方の定着、(3)地域主導による環境保全と地域経済の融合、(4)積極的な環境投資の促進、(5)規制的手法、経済的手法等により経済社会全般に及ぶグリーン化の推進を図ること、が必要である。
1 環境保全型の経済社会についての将来像 2 環境保全の内在化を進めるために 第2章 環境に配慮した生活行動をどう進めていくのか 第1節 利便性を追求する生活行動と環境への負荷
利便性・快適性の追求、消費のサービス化、生活時間の利用の多様化等が進む中、生活者は大量の資源・エネルギーを消費することとなったが、その一方で、国民生活に起因する二酸化炭素、廃棄物の排出量の増加、海や河川等の水質汚濁が進んでいる。
1 20世紀の利便性向上の歴史と環境問題 2 利便性を追求する生活様式と環境負荷との関わり 第2節 化学物質による環境問題
これまで我々の生活を便利にしてきた多様な化学物質について、近年、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題やダイオキシン問題に関心が高まっている。
こうした中、内分泌かく乱化学物質に関する調査研究体制の充実、平成11年3月に決定した「ダイオキシン対策推進基本指針」に基づく総合的なダイオキシン対策が必要となっている。また、化学物質による環境保全上の支障を総合的・効果的に低減、管理するために、政府は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案」を平成11年3月に、国会に提出したところである。
1 化学物質に依存する現代社会と環境問題 2 内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題の台頭 3 ダイオキシン問題について 4 化学物質による環境汚染の未然防止のための新たな手段について 第3節 環境に配慮した生活行動に向けて
環境に配慮した生活行動を進めるため、生活者、事業者、行政等の間の適切なリスク・コミュニケーションを通じ、生活者が冷静な行動をとるよう促すことや、法制度等の整備による生活者の社会的条件の変更、環境教育・環境学習等を通じた生活者の認識の深化、環境重視の価値観や行動規準(環境合理性)の生活者への定着を図るなど生活行動の基礎となる社会システムを変革することが必要である。
1 生活行動における環境配慮の分類 2 リスク・コミュニケーションを通じた回避行動の必要性 3 環境保全における意識と行動のギャップの解決 4 環境に配慮した生活行動に向けて 第3章 途上国のかかえる環境問題にどう関わるべきか 第1節 地球的視野から見た途上国の環境問題
開発が環境汚染等を引き起こすことを主張する先進国と、未開発・貧困などが最も重要な人間環境の問題であると主張する途上国が、1972年の国連人間環境会議以降激しく対立してきた。その後、「持続可能な開発」という概念の下、1992年の国連環境開発会議を経て、南北間の議論は前進しつつあるものの、具体的な環境問題への取組に関しては、依然障害が大きい。
1 環境問題をめぐる国際的議論の推移 2 アジア太平洋地域における環境に関する将来予測 第2節 途上国における環境問題等の現状とその対策
アジア太平洋地域は、極めて多様な自然環境を有するが、近年、人口増大や工業化の進展が急速であるため、発展段階に応じて発生する様々な環境問題が短期集中的に発生し、同時並行的に対処することが迫られている。
こうした中、各国では、環境基準や排出基準に基づく規制的手法とそれを支える組織の整備が図られている。しかし、依然解決が困難な環境問題を抱えているため、環境対策の実効性を一層高めることが必要である。
1 アジア太平洋地域における環境問題の多様性 2 アジア太平洋地域における環境問題の現状 3 日本とアジア地域の関わり 4 アジア地域の環境対策の現状 5 アフリカ、中南米地域の環境問題の現状とその対応 第3節 途上国の持続的な発展に果たす我が国の役割
我が国の途上国に対する環境協力について、政府は、政策対話、政府開発援助等を活用した環境協力に取り組んでいる。また、地方公共団体、事業者、NGO等も途上国に対して様々な環境協力に取り組んでいる。こうした途上国への働きかけや先進国内での取組として、今後もこれらの各主体がそれぞれの特徴と役割を発揮し、相互に連携するという、複線的なパートナーシップを構築していくことが必要である。
1 我が国の環境協力等の現状 2 今後の効果的な環境協力の実現に向けて 第4章 環境の現状 第1節 大気環境の現状 1 大気の組成等の変化による地球規模の大気環境の現状 2 移流・反応等により生ずる広域的な問題 3 大都市圏等における集積による問題 4 多様な有害物質による健康影響の防止 5 地域における生活環境に係る問題 第2節 水環境の現状 1 環境保全上健全な水環境の確保 2 水利用における負荷の低減 3 閉鎖性水域等における水環境の保全 4 海洋環境の保全 5 化学物質の水環境中の残留状況 第3節 土壌環境・地盤環境の現状 1 土壌環境の現状 2 地盤環境の現状 第4節 廃棄物の現状 第5節 自然環境の現状 1 陸域 2 陸水域 3 海域 4 国内自然環境の保護 5 海外自然環境の現状 第6節 野生生物種の多様性等の現状 1 野生生物種の現状 2 野生生物資源の現状 3 生物の汚染 4 生物多様性の保全 第7節 自然とのふれあいの現状 むすび
- 連絡先
- 環境庁企画調整局調査企画室
室長:小木津 敏也 (6250)
補佐:川上 毅 (6251)
主査:井上 和也 (6252)