~37.5型液晶「FlexScan EV3895」開発者インタビュー&レビュー
【PC Watch 25周年特別企画】
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下記の記事は2021年9月17日に「PC Watch」(Impress)に掲載されたものです。著者:平澤 寿康、写真: 若林 直樹
開発者は苦労を楽しみつつ日々開発に取り組む
金融機関などビジネス分野での可能性を見い出し「FlexScan EV3895」が誕生
あらゆる人に“選んで良かった”と思ってもらえる製品を開発していく
FlexScan EV3895をレビュー
EIZOの若手開発者達。左からファームウェア開発課の宮本賢悟氏、プロフェッショナルモニター開発課の朝日啓太氏、造形設計課の八木宏介氏。EIZOのディスプレイ製品は主にファームウェア、ハードウェア、筐体デザイン設計の3つの部署が力を合わせて開発されている |
EIZOと言えば、ビジネスユーザーはもちろん、優れた表示品質にこだわるプロのクリエイターからも絶大な支持を集めるディスプレイブランドとしてお馴染みだ。そんなEIZOの製品のイメージは、ひとことで言うと”質実剛健”。国産メーカーらしく、品質にこだわりつつ、利便性を追求したユーザー目線の製品が中心となっている。
そういった中、EIZOからこれまでにない特徴を備える製品が登場した。それが、EIZO初となるウルトラワイド曲面液晶パネルを採用した「FlexScan EV3895」だ。解像度は3,840×1,600ドットで、フルHD(1,920×1,080ドット)ディスプレイの約3台分という広大な領域を確保している。
37.5型液晶ディスプレイ「FlexScan EV3895」。解像度は3,840×1,600ドットで、アスペクト比は24:10というウルトラワイド設計 |
ウルトラワイド曲面液晶ディスプレイは、どちらかというとゲームなどエンターテイメント向けの製品というイメージが強いが、今回EIZOは、FlexScan EV3895をオフィスワークを中心としたビジネス向けとして位置付けており、非常に意欲的な製品となっている。
なぜ、EIZOはウルトラワイド曲面液晶ディスプレイのFlexScan EV3895を開発することになったのか。実際に本製品の開発を担当したEIZOの開発者に、様々な質問をぶつけてみた。
今回話を聞いたのは、商品開発およびハードウェア開発を担当している朝日啓太氏、機構部材と呼ばれる筐体や内部の部品などの設計を担当している八木宏介氏、ディスプレイの機能や色再現性といった部分を司るファームウェアの開発を担当している宮本賢悟氏の3名だ。3名ともまだ三十代と新進気鋭のエンジニアで、FlexScan EV3895の開発においても中心的な役割を担ったという。
※インタビューは新型コロナウイルス対策のためオンラインで行なわれ、ソーシャルディスタンスを確保した上で、マスクを着用して実施されました。写真撮影時のみマスクを外しています。
伝統を受け継ぎつつアグレッシブな開発を行なえるのがEIZOの強み
EIZOは、1968年に創業したディスプレイ専業メーカーだ。当初は「株式会社ナナオ」という商号で、欧州向けに「EIZO」ブランド、北米および国内向けに「NANAO」ブランドでディスプレイを製造販売。
その後、1996年よりブランドを「EIZO」に統一するとともに、商号も2013年に「EIZO株式会社」へと変更し、現在に至っている。本社や開発、製造拠点のほとんどは現在も創業の地である石川県に位置しており、石川県から日本のみならず世界に向けて品質や信頼性に優れるディスプレイを提供。国内はもちろん、国際的にもディスプレイのトップブランドとして広く認知されている。
このようにEIZOは歴史のある企業なので、製品開発を行なう上で、特に若いエンジニアにとって息苦しい部分があっても不思議ではない。しかしEIZOの開発拠点について造形設計課の八木氏は、「 垣根が全く感じられず、開発が非常にやりやすい 」と感じているという。
造形設計課の八木宏介氏
通常の製品開発では、開発工程が細かく分けられ、それぞれを異なる部署が担当することが基本となるため、1つの製品を作り上げるのにそれぞれの部署の細かな連携が不可欠となる。
それぞれの部署が離れた場所にあると、意思疎通に時間がかかり、スピーディな意志決定も難しくなる。また、歴史のある企業では、それぞれの部署がプライドを持っていたり、伝統的なしきたりなどがあり、それらが壁となって上手く連携が取れないことも悪しき慣例としてよく見られる。
しかし、EIZOではそういったことはないようだ。朝日氏、宮本氏がインタビュー中に「 部署間の垣根がないため意志決定が速く、スピード感を持って開発ができている 」と声を揃えていたように、EIZOではエンジニアにとって仕事のしやすい環境が整っている。
本社の建屋には、企画、開発、品質保証、製造など製品開発の要となる部署に加え、販売を担う営業やアフターサポートまで、全ての部署が集まっており、歩いて5分以内に行き来できる。その上で、それぞれのスタッフが比較的仲が良く、垣根なく行き来してディスカッションできる環境も整っているそうだ。
加えて、「 スタッフ全員が、EIZOブランドの責任の重さや品質を守る意味を認識して、製品開発でも“EIZOブランドはどうあるべきか”という部分に重きを置いて物事を考えるという意識を長年持ち続けている 」(朝日氏)そうで、それには先輩エンジニアからの助言や指導が役立っている。
プロフェッショナルモニター開発課の朝日啓太氏
朝日氏自身、入社直後は甘く考える部分もあったそうだが、先輩エンジニアから、甘い考えがブランドの信頼を失うことに繋がるんだと指導され、責任を強く感じるようになったという。
八木氏も「 EIZO品質とはこういうものだ、というのが明文化されているわけではないが、先輩エンジニアからフェイストゥフェイスで日々学んでいる 」とコメント。先輩エンジニアから、EIZOのこだわりについてしっかり叩き込まれた部分もあるそうで、そういった長年の助言や指導が、EIZO品質を保つための文化となり、高い基準を保てている理由となっているのは間違いないだろう。
とは言え、開発に関して保守的ということはないという。むしろ「 アグレッシブな新しいことへのチャレンジに価値を認めて、後押ししてくれる土壌がある 」(八木氏)とともに、「 若いエンジニアにも新しい技術などにどんどんチャレンジさせてくれる 」(宮本氏)そうだ。
ファームウェア開発課の宮本賢悟氏
伝統は重要だが、発展するためには新しいことへのチャレンジも不可欠。EIZOが創業以来、常にディスプレイのトップブランドとして活躍できているのは、スタッフやエンジニアがEIZOブランドへの確固たる意識を持ち続けているだけでなく、新しいことにも積極的にチャレンジするアグレッシブさがあるからで、エンジニアの声からもそれがしっかりと伝わってきた。
開発者は苦労を楽しみつつ日々開発に取り組む
工場で検査待ちのFlexScan EV3895
このように、EIZOのエンジニアにはEIZOブランドの製品開発に対する強い意識が培われているものの、実際の製品開発には当然苦労する部分もある。EIZOのエンジニアは、そういった課題にどのように取り組んで解決しているのか。
EIZOの製品は欧州市場のシェアが高い。欧州は環境基準が厳格なため、さまざまな環境規格に適合する必要がある。朝日氏が担当しているハードウェア開発では、例えば消費電力や待機電力の基準をクリアしつつ品質を保つという部分が非常に難しいという。
組み込みを行なっているプロフェッショナルモニター開発課の朝日氏
その課題については、最適解を見付けていくべく、ひたすら地道で泥臭い作業を行なったり、先輩エンジニアや他部署にも協力を得つつ解決するそうだ。
八木氏が担当している機構開発では、複数のデザイン案を平行で検討しつつベストを探っていくことになるため、正解のない状態で様々なことを試す必要のある点が難しいことでもあり楽しい部分でもあるという。
造形設計課で業務中の八木氏
例えば、デザインについては明確な基準が定義されているわけではないそうで、デザイナーがチャレンジングな形状を提案してくることもあるという。そのため、デザイナーが実現したい形状と、最終的にでき上がる形状が異なる場合もよくあり、レビューを細かく繰り返しつつ可能性を探る、ということを大事にしているそうだ。
EIZOのディスプレイはオフィス環境に合わせ、ボディカラーに他社の製品にはない白を採用しているが、これは塗装ではなく素材そのものの色なのである。素材のみでボディ全体に均一で綺麗な白の発色を実現するのは非常に難しいそうだが、EIZOの技術力があってこそ実現できている。揮発性有機化合物(VOC)が含まれる塗料を使っていないため環境にも優しく、こだわりの部分という。
宮本氏担当のファームウェア開発では、世の中の技術の進化、特にディスプレイに接続するPCの進化は非常に速く、その進化をどう先取りすればいいのかといった部分での技術の調査や検討、互換性の確保などが難しいそうだ。
動作テスト中のファームウェア開発課の宮本氏
さらに、GPUが同じでも製品によって出力される信号に違いがあることも多いそうで、そういった部分をファームウェアが吸収するといったことを考えるとともに、機能として盛り込んでいたりする。
そのために、実際にPCを購入し、規格などと照らし合わせつつ徹底的に調査して解決する。手間のかかる手順を踏むことが基本になるそうで、そこに苦労するという。
ただ3名とも、そういった開発作業は大変だと語りつつも、笑顔を交えつつ活き活きとした表情で語ってくれた。それは、いかにその作業が大変ではあっても、やりがいがあり、充実して開発に取り組めていることの証と言えるだろう。
インタビュー時の朝日氏、八木氏、宮本氏
金融機関などビジネス分野での可能性を見い出し「FlexScan EV3895」が誕生
今回話を聞いた3名のエンジニアは、「FlexScan EV3895」の開発を担当している。朝日氏は製品コンセプトの立ち上げや、ディスプレイ正面のOSDスイッチなどを担当。八木氏は機構開発のほぼ全てを担当。宮本氏はファームウェア開発の担当だ。
もともとEIZOは、ウルトラワイドディスプレイには消極的だったという。ウルトラワイドディスプレイが登場し始めた頃は、パネル全体の発色の均一性が低かったり、消費電力が高いということもあって、EIZO製品への採用は見送られていた。
国内工場で熟練したスタッフにより一台一台を目視チェック
そういった中、欧州含め、主要各国でオフィス向けディスプレイへの大型化(一画面化)へのニーズが高まっていることを確認し、実際に現地視察した中でも特にウルトラワイドモデルの採用が少なくないことを確認できた。
そこで、金融機関などのビジネス分野で、多画面ディスプレイからの置き換えとしてウルトラワイドディスプレイのニーズがあると判断。併せて、パネルの進化から品質の面でもクリアできるようになったことから、ビジネス向けのウルトラワイドディスプレイとして「FlexScan EV3895」の開発がスタートした。
EIZOとしてウルトラワイドディスプレイはこれが初。しかも、パネルは平面ではなく曲面だ。初のウルトラワイドで曲面を選ぶというのも非常にチャレンジングに思えるが、これも「 平面では画面の大きさによっては両端方向への視認性が落ちるが、曲面であれば平面ではカバーできない視認性を確保できると判断し採用した 」(朝日氏)と、はっきりとした理由があってのことだった。
だが、曲面という部分での開発の苦労もあった。
例えば正面下部のOSDスイッチをパネルに合わせて曲面に配置する必要があるため、内部基板に平面の基板が使えない。そこで、フレキシブルに曲げられつつ十分な強度を確保できる特殊な基板を、基板開発メーカーとも協力しつつ実装。
湾曲した形状
また、曲がったボディも初だったため、曲面の樹脂成形でどういった問題が生じるのかを樹脂メーカーの専門知識を取り入れながら確認し調整している。
さらにFlexScan EV3895では、コネクタ類を背面中央部に内側に向かって配置している。これはほかのモデルにはないFlexScan EV3895オリジナルの特徴だが、たくさんのケーブルを接続する場合でも、ケーブルをまとめるといったことが煩雑にならないように配慮してのものだという。
背面でケーブルをまとめられる
このほかにも、曲面による重心の位置を工夫するなどしており、EIZOが定める安全基準をクリアしつつ、円形の小さなスタンドを採用し、デスク上のスペースを広く使えるよう配慮している。その上で、重量のあるパネルをしっかり保持できるよう、FlexScan EV3895に合わせて強度を高めるなどの工夫が施されている。
画面の大きさのわりに台座部分はコンパクト
ファームウェアでは、ウルトラワイド曲面ディスプレイを活かす機能をどう実現するか、という点に尽力したという。そういった中、FlexScan EV3895では、3系統入力画面の同時表示(Picture-by-Picture)機能に対応させようということになり、表示領域をワンタッチで切り替えられる機能を開発。
また、3台のPCで、同じマウス・キーボードを共用し、簡単に切り替えて使える機能も初搭載となっているが、これも3画面同時表示を実現するという、初期のコンセプトが決まった段階から搭載を決定したそうだ。
FlexScan EV3895によるKVM機能の切り替えイメージ
あらゆる人に“選んで良かった”と思ってもらえる製品を開発していく
今回EIZOは、FlexScan EV3895で初のウルトラワイド曲面ディスプレイを実現したが、将来はどういった製品の投入を考えているのだろうか。
これについては「 ウルトラワイド曲面ディスプレイは好評をいただいているので、市場のニーズを見きわめながら、より大型、あるいは小型など、サイズバリエーションを増やすことは考えています 」(朝日氏)とのことだった。
また、ディスプレイの今後の進化については、欧州基準の改定に合わせて、より厳しい基準をクリアしつつも、従来と同等以上の表示品質を確保するように開発を進めたいという。併せて、本体の小型軽量化はまだまだ可能性があると考えているそうで、そういった部分の改良は積極的に進めていくそうだ。
EV3895の品質チェックの様子
最後に、3名それぞれに、今後どういった製品を開発していきたいのかを聞いてみた。
宮本氏「 ディスプレイの調整機能は豊富に用意していても、今は使う人が手動で調整しなければなりません。それを今後はAIなどを活用してその人の使い方を学習し、その人にマッチした画が自動的に出るようになる、そういった機能を実現できればと思っています 」。
八木氏「 高額なディスプレイを作っていますので、所有感をしっかり持っていただける製品に仕上げていきたいです。品質や信頼性はもちろんですが、そこにプラスして先進的なデザインというところに訴求して、“かっこいいよね”と言ってもらえればいいな、と思っています 」。
朝日氏「 あらゆる人がEIZO製品を使って、EIZOを使って良かったと思ってもらえるように性能を高めていきたいと思っています。ノートPCを使う人、デスクトップPCを使う人、家で仕事をする人、オフィスで仕事をする人、様々な人がいますが、その誰もがEIZO製品を選ぶことで最適な解を得られて、仕事の効率が高まる、そういった部分を目指して開発を行なっていきたいです 」。
真ん中には3名が開発したFlexScan EV3895
ところで、エンジニア目線でのディスプレイの選び方のコツも聞いてみたが、やはりカタログスペックだけを見て選ぶのは難しいので、可能な限り実際に触って確認してもらいたいとのこと。
特にOSDでの明るさや色合いなどの調整幅は製品によって大きく変わるものの、カタログでは分かりづらいため、そこは可能なら家電量販店などで触って確認した方がいいという。
その上で、EIZOの製品であれば、そういった調整も可能な限り豊富に用意するとともに、買ってきて接続しただけで100%の性能を発揮できるように調整されてもいるので、ぜひEIZO製品を選んでほしいそうだ。
合わせて、ビジネス用途の一般的なサイズのディスプレイとしてお勧めしたいのが、24.1型で解像度がWUXGAの製品とのこと。1,920×1,200ドットとフルHDの1,920×1,080ドットより縦長となっているため、A4を等倍表示したときでも欠けることなく全体を出せるので、特にお勧めとのことだ。ちなみに同社は最近24.1型でWUXGAの「FlexScan EV2485」を発表している。
FlexScan EV3895をレビュー
FlexScan EV3895
ここからは、今回取り上げたEIZO初のウルトラワイド曲面ディスプレイ「FlexScan EV3895」を実際に試用できたので、簡単に特徴などを紹介していく。
FlexScan EV3895では、アスペクト比24:10、表示解像度3,840×1,600ドットの37.5型ウルトラワイド曲面液晶パネルを採用。これは、FlexScanシリーズとして最大サイズとなる。パネルの種類はIPSで、視野角も申し分ない広さを確保。表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みもほとんど感じられない。
発色性能は、sRGBカバー率100%、DCI-P3カバー率94%。FlexScanシリーズはビジネス向け製品ということもあり、カラーマネージメントモデルのColorEdgeシリーズに比べるとやや控えめではあるが、ビジネスモデルとしては十分な発色性能を備えている。
37.5型ウルトラワイドということもあり、本体サイズは893.9×240×411~603.7mm(幅×奥行き×高さ)、特に横幅は90cm弱とかなりの大きさとなっている。とは言え、上部および左右のベゼル幅は5mmほどと極限まで狭められているため、ディスプレイサイズを考えると特別大きいわけではない。
また、一般的な24型クラスのフルHDディスプレイを2台横に並べるよりも幅は15cm以上短く、複数台のディスプレイを並べて使うよりもコンパクトとなる。重量はディスプレイ部のみで約9.5kg、スタンド込みで約13.2kg。
スタンドは、アーム部が3段式スライド形状となっている点はシリーズ同様だが、強度などはFlexScan EV3895に合わせて強化されている。高さ調節は192.7mmの範囲、チルト角度は上35度~下5度、スイベルは左右それぞれ35度(計70度)の範囲でそれぞれ調節可能と、機能面は申し分ない。
また、ディスプレイ部のサイズは大きいが、高さやチルト角度、スイベルなどは適度な力で調節できるとともに、ぐらつきも少なく安定してディスプレイ部を保持できている。
スタンドの面積の小ささも大きな特徴で、デスク上に置く場合でもスタンドが広大なスペースを占有することがなく、デスクを広く使える点も嬉しい部分と感じる。合わせて、100×100mmのVESAマウントの利用にも対応しているため、設置自由度の高さも申し分ない。
デザインは、FlexScanシリーズ同様の、無駄をそぎ落としたシンプルなものとなっている。カラーはFlexScanシリーズ伝統のホワイトとブラックを用意。
ポート類は、背面中央部に内側に向かって配置されている。映像入力端子はUSB Type-C×1(DisplayPort Alt Mode対応)、DisplayPort ×1、HDMI×2の4系統を用意。
また、USB 3.0準拠USB Type-Bアップストリームポートを2系統用意し、USB Type-Cと合わせて3系統のUSB入力を備え、3系統のキーボード切り替え機能も搭載。キーボード切り替え機能では、USB 3.0準拠のType-A×4のUSB HubをPCごとに切り替えて利用可能だ。さらに、USB Type-C接続のPCで利用できる1000BASE-T準拠の有線LANも装備している。
このほか、USB Type-CはUSB PD準拠、最大85Wの電力供給が可能となっており、USB PD準拠のノートPCなどをUSB Type-Cケーブル1本で接続するだけで、映像表示と電力供給、USB Hub、有線LANの各機能を利用できる。
付属品は、USB Type-Cケーブル、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USB Type-A - Type-Bケーブルが2本、電源ケーブルが同梱となる。
最大3画面のPbyP表示とキーボード切り替え機能が便利
ディスプレイの表示品質は十分で、写真や動画の鑑賞にも十分応えられるだろう。加えて、横長の広大な表示領域全体に渡って輝度ムラや発色ムラは一切感じられない。これは、画面の湾曲によって平面パネルよりも周辺部の視野角が浅くならないという点も大きく貢献していると思うが、さすがFlexScanシリーズといった印象だ。
ただ、湾曲ディスプレイということで、使い始めはやや表示が曲がっているように感じた。特にExcelなどスプレッドシートを表示すると曲面がやや強調されて曲がっているように見える。とは言え、それもしばらく使えば慣れて気にならなくなるため、使い始めれば全く支障なく利用できるだろう。
そして、使っていて特に便利に感じたのが、PbyP((Picture-by-Picture)表示とキーボード切り替え機能だ。今回は2台のPCで試したが、キーボード切り替えはディスプレイ中央下部のボタンで簡単に切り替えられるとともに、切り替えの待ち時間も1~2秒ほどとスムーズだ。これなら本格的なキーボード切り替え機同等の利便性で活用できそうだ。
Windows PCとMacの2台でPbyP(Picture-by-Picture)を使い、画面を分割表示している様子 |
また、2台のPCを接続した場合には双方に1,920×1,600ドットと、それぞれに申し分ない表示環境を確保できる。これもウルトラワイドディスプレイの魅力の1つではあるが、実際に使ってみるとその利便性の高さを実感できる。
キーボード切り替えやOSD操作用のボタンが画面下部中央のベゼル正面に配置されている点も、地味ながら扱いやすいと感じた点だ。
製品によっては操作ボタンがベゼル下部側面や背面に配置され、ボタンを手探りで操作しなければならないものもあるが、ボタンが正面にあるとしっかりボタンを視認して操作できるため、大きく操作性が高まる。こういった細かな部分の使い勝手が優れている点も、シリーズ同様の魅力と感じた。
FlexScan EV3895は、ビジネス用途をターゲットとしたウルトラワイド曲面ディスプレイという、EIZOとして初のチャレンジとなる製品だが、EIZOが長年培ったノウハウを注ぎ込み、表示性能から機能面までEIZOらしさが随所に実現された、非常に完成度の高い製品に仕上がっている。
ウルトラワイド曲面ディスプレイというと、どちらかというとニッチな製品という印象もあったが、FlexScan EV3895にはそういったイメージは全くなく、EIZOの本気度がひしひしと感じ取れる。
実売価格は20万円前後と、かなり高価な製品なのは事実だ。それでも、表示性能や機能面が優れていることを考えると、その価格にも十分納得できる。そもそもディスプレイは長年利用するものだから、費用対効果は高いはず。広大な表示領域で快適な作業環境を確保したい場合や、マルチディスプレイ環境の置き換えを考えているなら、高い満足度が得られる製品となるはずだ。
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