第2章『次の内閣』の活動
8 財務・金融
財務・金融部門は、税制調査会と連携して税制改正について議論を行うとともに、不透明さの増す経済財政状況の実態把握に努めた。
平成27年度税制改正法案
民主党は、消費税の10%への引上げまで1年を切った2014年11月14日、「社会保障の充実・安定化を図り、将来世代に過度な借金の押しつけをしないことが基本ではあるが、安倍政権の議員定数削減にかかる約束破り及び経済失政により、多くの国民はさらなる負担増を納得して受け入れるような状況になく、消費税は引上げられない環境に至った」と表明した。
一方、11月18日、安倍首相は、「アベノミクスの成功を確かなものとするため」消費税の引上げを1年半延期し、解散総選挙を行うことを表明した。
12月26日、民主党は、平成27年度税制改正に向け、(1)逆進性対策の継続的な実施、消費税の還付措置(給付付き税額控除)の検討、(2)自動車取得税廃止・自動車重量税の当分の間税率廃止を含む車体課税の抜本見直し、(3)所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当への所得税改革、(4)法人実効税率引き下げに際して、成長戦略に反する外形標準課税の拡大等を代替財源としないこと、等を政府に対して要請した。
12月30日、自民党・公明党は、与党の「平成27年度税制改正大綱」を取りまとめ、(1)消費税率10%への引き上げ時期の1年半延期及び景気判断条項の削除、(2)法人実効税率引き下げ(2015年度-2.51%、2016年度-3.29%)、(3)外形標準課税拡大等の課税ベース拡大、(4)自動車関連諸税の見直しの先送り、等を決定した。政府は、与党大綱に基づいて、2015年の189回通常国会に「所得税法等の一部を改正する法律案」を提出した。
一方、民主党は、(1)消費税の社会保障目的税化をより明確化し、景気判断条項を維持、議員定数削減・行政改革条項を追加する、(2)成長戦略に反する形での法人実効税率引き下げを中止する、(3)格差是正等のために逆進性対策を導入する、(4)軽自動車税増税を中止し、自動車取得税、自動車重量税の特例税率を廃止する、等を内容とする「格差是正及び経済成長のために講ずべき税制上の措置等に関する法律案」を対案として3月3日に提出した。
民主党案は、衆議院財務金融委員会で審議が行われ、政府案の問題点をより浮き彫りにしたが、与党等の反対により否決された。
政府案については、(1)アベノミクスの危うさを踏まえれば景気判断条項は必須である、(2)外形標準課税の付加価値割の大半は賃金であり、雇用を抱えた企業への増税を意味し、成長戦略に反する法人実効税率引き下げである、(3)逆進性対策の方向性すら示されていない、(4)車体課税の抜本見直しを先送りする一方で、軽自動車は平成26年度税制改正の際に講じた措置のまま増税する、(5)格差是正の視点に欠ける、(6)医療・介護等の控除対象外消費税の問題の解決案が未だ示されない、等から民主党は反対したが、3月31日に与党等の賛成により成立した。
政投銀法改正案への対応
危機対応時などにおける万全な資金供給の確保や、国内企業へのリスクマネー供給強化のため、日本政策投資銀行に対して、危機対応業務を義務付け、企業の競争力の強化に資する出資等について努力義務を規定する「株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律案」が政府より提出された。危機対応業務については民間では十分行うことができない可能性が高く、必要性が認められること等の理由から、民主党は賛成を決定し、成立した。
金商法改正案への対応
プロ投資家向けファンドへの信頼性を確保し、投資者被害を防止するため、届出者の欠格事由の導入、リスク等の説明義務、問題を起こした業者に対する罰則強化を含む「金融商品取引法の一部を改正する法律案」が政府より提出され、全会一致により成立した。
財政健全化への取り組み
民主党は、将来世代の負担を軽減し、持続可能な経済財政構造へと転換するため、「国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るための財政の健全化の推進に関する法律案」を、2013年6月7日、183回通常国会において、衆議院へ提出した。その後、行財政改革総合調査会及び財務・金融部門会議で引き続き財政健全化の具体策について検討を重ね、2014年6月17日に「民主党の財政健全化ロードマップ」を策定した。このような取り組みを踏まえ、(1)2015年7月、財政健全化推進に関する基本原則や財政健全化目標達成に資する当面の基本方針の策定、(2)中長期(10年)の財政運営戦略の策定、(3)財政健全化目標の法定化(2020年度国・地方の基礎的財政収支黒字化、2021年度以降長期債務残高対GDP比逓減)など、183回通常国会提出法案をバージョンアップした(詳細)。
租特透明化法案等の議員立法を提出
民主党は政権担当時、租税特別措置の適用実態を明らかにする租特透明化法を成立させた。
同法に従い公表される報告書では、情報の性質上、個々の企業名は非公開とされ、法人毎に付されたコードによって租特の適用実態が記載されている。しかし、現状ではコードが毎年変更されるため、経年での分析ができないことから、高額適用法人の報告書用法人コードの固定を内容とする「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律の一部を改正する法律案」を、189回通常国会において、生活・改革と共同で参議院へ提出したが審議に至らず、廃案となった。
資本金100億円超の企業等について、税負担の実態を明らかにするため、その所得金額及び法人税額等を公示することを内容とする「法人税法の一部を改正する法律案」を、維新、共産、生活、改革および無所属クラブと共同で参議院へ提出したが、審議未了、廃案となった。
また、国の財務状況を国民に十分に明らかにし、適正な予算編成、効率的な行政を推進するため、企業会計の慣行を参考にした国の財務書類等の作成、開示等を法定化するとともに、決算情報を充実する「国の財務書類等の作成及び財務情報の開示等に関する法律案」を、民主党単独で参議院へ提出したが審議に至らず、廃案となった。
2015.4.2
公会計法案を参議院に提出