2015 民主党国会レポート

強くしなやかな社会をつくり再び政権交代を

第3章 焦点となった法案への対応

2 財政健全化推進法案

持続可能な経済財政構造を創る

危機的な財政状況

 国及び地方の長期債務残高が2015年度(平成27年度)末で対GDP比205%となる見込みであり、日本の財政は、世界に例のない危機的状況にある。少子高齢化・人口減少が進行する中、このまま毎年財政赤字を積み重ねる状況が続けば、将来世代の負担はいっそう過大なものとなる。金利急上昇やハイパーインフレなど国民生活に甚大な影響が及ぶ事態が発生する可能性も否定できない。財政健全化の道筋をつけ、持続可能な経済財政構造を創ることは、急務である。

甘い政府の「計画」

 にもかかわらず、安倍内閣は、目先の経済成長のために、異次元金融緩和と大規模財政出動による事実上の財政ファイナンスを行い、財政問題を深刻化させてきた。
 そうした安倍内閣の姿勢に対し、民主党は、2013年6月には183回通常国会に「国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るための財政の健全化の推進に関する法律案」(財政健全化推進法案)を提出し、2014年6月には「民主党の財政健全化ロードマップ」を策定するなど、財政健全化への取り組みを強く促してきた。
 安倍内閣は、2015年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2015」の中でようやく「経済・財政再生計画」と銘打った財政健全化計画を示したものの、甘い経済見通しと、それに基づく歳入増を当てにした内容になっていた。歳出についても、安倍政権における過去3年間の伸びと同程度の1.6兆円の増加を許容するなど、歳出削減に向けた改革を聖域なく行う姿勢が全く見られず、「計画」の名に値しないものとなっていた。

「財政健全化推進法案」のバージョンアップ

 そこで民主党は、2015年7月に、「民主党の財政健全化ロードマップ」に基づいてバージョンアップした新たな「財政健全化推進法案」を作成した。その主な内容は以下の通り。
 (1)財政健全化推進に関する基本原則、財政健全化目標達成に資する当面の基本方針を定める、(2)2020年度国・地方の基礎的財政収支黒字化、2021年度以降長期債務残高対GDP比逓減という財政健全化目標を法定化する、(3)財政健全化目標達成に資するよう、基本原則、基本方針に従って10年(中長期)の財政運営戦略を策定する、(4)財政運営戦略にのっとり3年の中期フレームを策定し、そのフレームに従い、国の予算を作成する、(5)国の財務情報開示の法定化、行政事業レビューによる事務・事業見直しの法定化、行政監視院の国会の下への設置、歳入庁設置の検討など、歳出・歳入構造改革のための体制を強化する、(6)2050年度(長期・超長期)を見通した検討条項等を附則に設ける。
 民主党は、持続可能な経済財政構造を創るため、今後、本法案の提出に向け、党派を超えた合意形成を目指す。